名古屋大学 1970年 理系 第2問 解説

方針・初手
2次方程式の根が実数であるか虚数であるかによってアプローチを変える方法(判別式とグラフを用いた場合分け)と、根を複素数の範囲で捉えて三角不等式を用いる方法がある。特に、根が複素数であっても成り立つ絶対値の性質(三角不等式)や背理法を用いると、実数解と虚数解の場合分けをせずに簡潔に証明できる。
解法1
背理法と絶対値の性質(三角不等式)を利用する。 方程式の2つの根のうち、少なくとも1つの根 $\alpha$ が $|\alpha| \ge 1$ を満たすと仮定する。
根 $\alpha$ は方程式 $x^2 + ax + b = 0$ を満たすので、
$$ \alpha^2 + a\alpha + b = 0 $$
$$ \alpha^2 = -a\alpha - b $$
両辺の絶対値をとる。複素数においても三角不等式 $|A + B| \le |A| + |B|$ が成り立つため、
$$ |\alpha^2| = |-a\alpha - b| \le |-a\alpha| + |-b| = |a||\alpha| + |b| $$
すなわち
$$ |\alpha|^2 \le |a||\alpha| + |b| $$
ここで、仮定より $|\alpha| \ge 1$ であるため、$|\alpha|^2 \ge |\alpha|$ であり、また $|b| \le |b||\alpha|$ が成り立つ。 これらを上の不等式に適用すると、
$$ |\alpha| \le |\alpha|^2 \le |a||\alpha| + |b||\alpha| = (|a| + |b|)|\alpha| $$
$|\alpha| \ge 1 > 0$ であるから、両辺を正の実数 $|\alpha|$ で割ると、
$$ 1 \le |a| + |b| $$
これは、問題の条件である $|a| + |b| < 1$ に矛盾する。 したがって仮定は誤りであり、2次方程式の2根の絶対値はともに1より小さい。
解法2
実数解を持つ場合と虚数解を持つ場合に分けて証明する。 2次方程式 $x^2 + ax + b = 0$ の判別式を $D = a^2 - 4b$ とする。
(i) $D \ge 0$ のとき(実数解をもつ場合)
2次関数 $f(x) = x^2 + ax + b$ を考える。 実数 $x$ について $x \ge -|x|$ が成り立つことを利用して、$f(1)$ および $f(-1)$ の値を評価すると、
$$ f(1) = 1 + a + b \ge 1 - |a| - |b| = 1 - (|a| + |b|) > 0 $$
$$ f(-1) = 1 - a + b \ge 1 - |-a| - |b| = 1 - (|a| + |b|) > 0 $$
また、放物線 $y = f(x)$ の軸の方程式は $x = -\frac{a}{2}$ であり、条件 $|a| + |b| < 1$ において $|b| \ge 0$ であることから $|a| < 1$ なので、
$$ -1 < -\frac{a}{2} < 1 $$
である。 軸が $-1 < x < 1$ の範囲にあり、かつ $f(1) > 0, f(-1) > 0$、そして $D \ge 0$(すなわち $x$ 軸と共有点をもつ)であることから、放物線 $y = f(x)$ と $x$ 軸との交点は区間 $(-1, 1)$ 内に存在する。 よって、2つの実数解の絶対値はともに1より小さい。
(ii) $D < 0$ のとき(虚数解をもつ場合)
実数係数の2次方程式が虚数解をもつとき、2つの根は互いに共役な複素数となる。 これらを $\alpha, \bar{\alpha}$ とおくと、解と係数の関係より
$$ \alpha \bar{\alpha} = b $$
複素数の絶対値の性質から $\alpha \bar{\alpha} = |\alpha|^2$ であるため、
$$ |\alpha|^2 = b $$
ここで、条件 $|a| + |b| < 1$ において $|a| \ge 0$ であるから、$|b| < 1$ となる。 実数 $b$ に対して $b \le |b|$ であるから、
$$ |\alpha|^2 = b \le |b| < 1 $$
$|\alpha| \ge 0$ であるから、$|\alpha| < 1$ を得る。 もう一方の解 $\bar{\alpha}$ についても、絶対値は $|\bar{\alpha}| = |\alpha|$ であるため、$|\bar{\alpha}| < 1$ となる。
(i), (ii) より、いずれの場合も2根の絶対値はともに1より小さいことが示された。
解説
背理法と三角不等式を利用した【解法1】が非常に鮮やかで、実数・虚数の場合分けを回避できるため、計算ミスや論証漏れのリスクを大きく減らすことができる。複素数においても $|A + B| \le |A| + |B|$ が成り立つことを利用する、入試数学における典型的な論法である。
【解法2】は「2次方程式の解の配置」と「解と係数の関係」を組み合わせたオーソドックスな解法である。場合分けの手間はかかるが、視覚的にイメージしやすく確実性が高い。$1+a+b \ge 1-|a|-|b|$ といった絶対値を用いた不等式の評価方法は、他の問題でも応用範囲が広いため確実に習得しておきたい。
答え
題意の通り、2次方程式 $x^2 + ax + b = 0$ の2根の絶対値はともに1より小さいことが証明された。
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