東京大学 1965年 文系 第5問 解説

方針・初手
点 $R$ の位置ベクトルを、点 $P$ と点 $Q$ の位置ベクトルを用いて表し、それぞれの点が独立に動くときの $R$ の存在範囲を考える。
点 $R$ は線分 $PQ$ の中点であるから、基準となる点(例えば円 $O$ の中心)に対する位置ベクトルで考えると、点 $R$ の動きは「$\frac{1}{2}$ に縮小された円」と「$\frac{1}{2}$ に縮小された正三角形の周」のミンコフスキー和(一方が他方の輪郭に沿って動くときの通過領域)として視覚的に捉えることができる。
解法1
円 $O$ の中心を原点とし、各点の位置ベクトルを小文字の矢印で表す。 点 $R$ は線分 $PQ$ の中点であるから、
$$ \vec{r} = \frac{\vec{p} + \vec{q}}{2} = \frac{1}{2}\vec{p} + \frac{1}{2}\vec{q} $$
と表される。 (本解答では、「円内」を円周および内部を含む領域とする)
点 $P$ は半径 $1$ の円 $O$ 内を動くので、$|\vec{p}| \le 1$ である。 したがって、位置ベクトルが $\frac{1}{2}\vec{p}$ で表される点 $P'$ は、原点を中心とする半径 $\frac{1}{2}$ の円板(境界を含む)全体を動く。
一方、点 $Q$ は一辺の長さが $4$ の正三角形 $ABC$ の周上を動く。 正三角形 $ABC$ の各頂点の位置ベクトルを $\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ とし、$\vec{a'} = \frac{1}{2}\vec{a}, \vec{b'} = \frac{1}{2}\vec{b}, \vec{c'} = \frac{1}{2}\vec{c}$ を満たす点をそれぞれ $A', B', C'$ とする。 位置ベクトルが $\frac{1}{2}\vec{q}$ で表される点 $Q'$ は、この $3$ 点 $A', B', C'$ を頂点とする一辺の長さが $2$ の正三角形の周上を動く。
$\vec{r} = \vec{p'} + \vec{q'}$ であることから、点 $R$ の動く範囲は、正三角形 $A'B'C'$ の周上の点 $Q'$ を中心として、半径 $\frac{1}{2}$ の円を動かしたときの通過領域に等しい。
ここで、正三角形 $A'B'C'$ の面積を $S_0$、内接円の半径を $r_{in}$ とする。 一辺の長さが $2$ であるから、
$$ S_0 = \frac{1}{2} \cdot 2 \cdot \sqrt{3} = \sqrt{3} $$
であり、面積を $r_{in}$ を用いて表すと、
$$ S_0 = \frac{1}{2} r_{in} (2 + 2 + 2) = 3 r_{in} $$
となるため、$r_{in} = \frac{\sqrt{3}}{3}$ である。
動かす円の半径は $\frac{1}{2}$ であり、$\sqrt{3} > 1.5$ より $\frac{\sqrt{3}}{3} > \frac{1}{2}$ である。 内接円の半径が動かす円の半径よりも大きいため、通過領域の内側には円が通過しない「穴」ができる。
この通過領域の形状は以下のようになる。 外側の境界は、正三角形 $A'B'C'$ の各辺から外側に距離 $\frac{1}{2}$ だけ離れた平行な線分(長さ $2$)と、各頂点を中心とする半径 $\frac{1}{2}$ の円弧(中心角 $120^\circ$)からなる。 内側の境界(穴)は、正三角形 $A'B'C'$ の各辺から内側に距離 $\frac{1}{2}$ だけ離れた平行な線分で囲まれる正三角形である。
内側の穴の面積 $S_{hole}$ を求める。 穴となる正三角形の内心から各辺までの距離は、元の正三角形 $A'B'C'$ の内心から辺までの距離 $r_{in}$ から $\frac{1}{2}$ を引いた値となる。 したがって、内側の正三角形と正三角形 $A'B'C'$ は相似であり、その相似比 $k$ は、
$$ k = \frac{\frac{\sqrt{3}}{3} - \frac{1}{2}}{\frac{\sqrt{3}}{3}} = 1 - \frac{\sqrt{3}}{2} $$
である。 相似な図形の面積比は相似比の $2$ 乗となるため、
$$ \begin{aligned} S_{hole} &= S_0 \times k^2 \\ &= \sqrt{3} \left( 1 - \frac{\sqrt{3}}{2} \right)^2 \\ &= \sqrt{3} \left( 1 - \sqrt{3} + \frac{3}{4} \right) \\ &= \sqrt{3} \left( \frac{7}{4} - \sqrt{3} \right) \\ &= \frac{7\sqrt{3}}{4} - 3 \end{aligned} $$
となる。
次に、外側の境界に囲まれた図形全体の面積 $S_{out}$ を求める。 これは、正三角形 $A'B'C'$ の面積 $S_0$ と、各辺の外側にできる $3$ つの長方形、および各頂点の外側にできる $3$ つの扇形の面積の和である。 長方形 $1$ つの面積は $2 \times \frac{1}{2} = 1$ である。 扇形は半径 $\frac{1}{2}$、中心角 $120^\circ$(正三角形の内角の補角)であり、$3$ つ合わせるとちょうど半径 $\frac{1}{2}$ の円 $1$ つ分となるため、その面積は $\pi \left( \frac{1}{2} \right)^2 = \frac{\pi}{4}$ である。 よって、
$$ S_{out} = \sqrt{3} + 3 \times 1 + \frac{\pi}{4} = \sqrt{3} + 3 + \frac{\pi}{4} $$
となる。
求める点 $R$ の動く範囲の面積 $S$ は、外側の境界に囲まれた部分から内側の穴を除いたものであるから、
$$ \begin{aligned} S &= S_{out} - S_{hole} \\ &= \left( \sqrt{3} + 3 + \frac{\pi}{4} \right) - \left( \frac{7\sqrt{3}}{4} - 3 \right) \\ &= 6 - \frac{3\sqrt{3}}{4} + \frac{\pi}{4} \end{aligned} $$
となる。
解説
2つの動点から定まる中点の軌跡・領域を求める問題である。ベクトルの和 $\vec{r} = \frac{1}{2}\vec{p} + \frac{1}{2}\vec{q}$ の形から、「点 $Q'$ を固定して点 $P'$ を動かした領域を、さらに点 $Q'$ の存在範囲で動かす」という手順(予選決勝法)を踏むのが定石である。
この手法を用いると、問題は「折れ線(正三角形の周)に沿って円を平行移動させたときの通過領域」を求める図形問題に帰着される。 面積を求める際の最大のポイントは、正三角形の内接円の半径と、動かす円の半径の大小を比較し、領域の中心に「穴」が空くことを正確に論証できるかどうかである。穴の面積は、各辺が一定距離だけ内側に平行移動してできる相似な図形として捉えると計算の見通しが良い。
答え
図示:正三角形 $ABC$ を相似の中心 $O$(任意の点)から $1:2$ の比で縮小した正三角形 $A'B'C'$(一辺の長さ $2$)を基準とする。外側の境界は、$A'B'C'$ の各辺から外側に距離 $\frac{1}{2}$ 離れた平行な線分と、各頂点を中心とする半径 $\frac{1}{2}$ の円弧(中心角 $120^\circ$)からなる。内側の境界は、$A'B'C'$ の各辺から内側に距離 $\frac{1}{2}$ 離れた平行な線分で囲まれる正三角形(一辺の長さ $2-\sqrt{3}$)からなる。求める範囲は、これら外側と内側の境界で囲まれた領域である(境界線をすべて含む)。
面積:$6 - \frac{3\sqrt{3}}{4} + \frac{\pi}{4}$
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