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東京大学 1972年 文系 第2問 解説

数学C/平面ベクトル数学1/図形計量数学A/整数問題テーマ/図形総合
東京大学 1972年 文系 第2問 解説

方針・初手

対称点の条件をベクトルを用いて立式する。 直線 $h$ は辺 $AB$ に垂直なので、その法線ベクトルは $\vec{b}$ である。同様に、直線 $k$ は辺 $AC$ に垂直なので、その法線ベクトルは $\vec{c}$ である。 「線分が直線と垂直に交わる(方向ベクトル)」ことと「線分の中点が直線上にある(内積ゼロ)」の2条件を用いるか、直線に関する対称移動の公式を用いて、与えられたベクトルの関係式から $\vec{b}$ と $\vec{c}$ の内積および $|\vec{c}|$ の条件を導出する。その後、$m$ が正の整数であることと $\cos \angle BAC$ のとり得る値の範囲から $m$ の値を絞り込む。

解法1

$\vec{b} = \overrightarrow{AB}$, $\vec{c} = \overrightarrow{AC}$ とする。

直線 $k$ は頂点 $A$ を通り、$\vec{c}$ に垂直な直線である。 点 $B'$ は点 $B$ の直線 $k$ に関する対称点であるから、直線 $BB'$ は $k$ に垂直、すなわち $\vec{c}$ に平行である。 また、線分 $BB'$ の中点は直線 $k$ 上にあるため、頂点 $A$ を基準としたその位置ベクトルは $\vec{c}$ と直交する。 条件より $\overrightarrow{AB'} = \vec{b}' = \vec{b} + \vec{c}$ であるから、$\overrightarrow{BB'} = \vec{b}' - \vec{b} = \vec{c}$ となり、これは $\vec{c}$ に平行であるという条件を満たしている。 一方、線分 $BB'$ の中点の位置ベクトルは $\frac{\vec{b} + \vec{b}'}{2} = \frac{2\vec{b} + \vec{c}}{2}$ であり、これが $\vec{c}$ と直交するので、

$$ \frac{2\vec{b} + \vec{c}}{2} \cdot \vec{c} = 0 $$

$$ 2\vec{b} \cdot \vec{c} + |\vec{c}|^2 = 0 \quad \cdots \text{(1)} $$

同様に、直線 $h$ は頂点 $A$ を通り、$\vec{b}$ に垂直な直線である。 点 $C'$ は点 $C$ の直線 $h$ に関する対称点であるから、直線 $CC'$ は $h$ に垂直、すなわち $\vec{b}$ に平行である。 また、線分 $CC'$ の中点は直線 $h$ 上にあるため、その位置ベクトルは $\vec{b}$ と直交する。 条件より $\overrightarrow{AC'} = \vec{c}' = m\vec{b} + \vec{c}$ であるから、$\overrightarrow{CC'} = \vec{c}' - \vec{c} = m\vec{b}$ となり、これは $\vec{b}$ に平行であるという条件を満たしている。 一方、線分 $CC'$ の中点の位置ベクトルは $\frac{\vec{c} + \vec{c}'}{2} = \frac{m\vec{b} + 2\vec{c}}{2}$ であり、これが $\vec{b}$ と直交するので、

$$ \frac{m\vec{b} + 2\vec{c}}{2} \cdot \vec{b} = 0 $$

$$ m|\vec{b}|^2 + 2\vec{b} \cdot \vec{c} = 0 $$

条件より $|\vec{b}| = 1$ であるから、

$$ m + 2\vec{b} \cdot \vec{c} = 0 \iff \vec{b} \cdot \vec{c} = -\frac{m}{2} \quad \cdots \text{(2)} $$

(2) を (1) に代入して、

$$ -m + |\vec{c}|^2 = 0 \iff |\vec{c}|^2 = m $$

$|\vec{c}| > 0$ であるから、

$$ |\vec{c}| = \sqrt{m} $$

内積の定義より、

$$ \vec{b} \cdot \vec{c} = |\vec{b}||\vec{c}| \cos \angle BAC $$

これに各値を代入すると、

$$ -\frac{m}{2} = 1 \cdot \sqrt{m} \cdot \cos \angle BAC $$

$$ \cos \angle BAC = -\frac{\sqrt{m}}{2} $$

三角形 $ABC$ において $0 < \angle BAC < \pi$ であるため、

$$ -1 < \cos \angle BAC < 1 $$

$$ -1 < -\frac{\sqrt{m}}{2} < 1 $$

$$ 0 \le \sqrt{m} < 2 $$

よって、$0 \le m < 4$ を得る。 $m$ は正の整数であるから、$m = 1, 2, 3$ である。

(i) $m = 1$ のとき

$$ \cos \angle BAC = -\frac{1}{2} $$

$0 < \angle BAC < \pi$ より $\angle BAC = \frac{2}{3}\pi$ であり、$|\vec{c}| = \sqrt{1} = 1$ となる。

(ii) $m = 2$ のとき

$$ \cos \angle BAC = -\frac{\sqrt{2}}{2} $$

$0 < \angle BAC < \pi$ より $\angle BAC = \frac{3}{4}\pi$ であり、$|\vec{c}| = \sqrt{2}$ となる。

(iii) $m = 3$ のとき

$$ \cos \angle BAC = -\frac{\sqrt{3}}{2} $$

$0 < \angle BAC < \pi$ より $\angle BAC = \frac{5}{6}\pi$ であり、$|\vec{c}| = \sqrt{3}$ となる。

解法2

対称移動の公式を直接用いる。 原点 $A$ を通り、法線ベクトル $\vec{n}$ をもつ直線に関する点 $P(\vec{p})$ の対称点 $P'(\vec{p}')$ は、以下の式で与えられる。

$$ \vec{p}' = \vec{p} - \frac{2\vec{p} \cdot \vec{n}}{|\vec{n}|^2}\vec{n} $$

この公式を本問に適用する。 直線 $k$ は頂点 $A$ を通り、法線ベクトルが $\vec{c}$ の直線である。 点 $B(\vec{b})$ の直線 $k$ に関する対称点が $B'(\vec{b}')$ であるから、

$$ \vec{b}' = \vec{b} - \frac{2\vec{b} \cdot \vec{c}}{|\vec{c}|^2}\vec{c} $$

問題の条件より $\vec{b}' = \vec{b} + \vec{c}$ であるから、係数を比較して、

$$ -\frac{2\vec{b} \cdot \vec{c}}{|\vec{c}|^2} = 1 \iff |\vec{c}|^2 = -2\vec{b} \cdot \vec{c} \quad \cdots \text{(1)} $$

同様に、直線 $h$ は頂点 $A$ を通り、法線ベクトルが $\vec{b}$ の直線である。 点 $C(\vec{c})$ の直線 $h$ に関する対称点が $C'(\vec{c}')$ であるから、

$$ \vec{c}' = \vec{c} - \frac{2\vec{c} \cdot \vec{b}}{|\vec{b}|^2}\vec{b} $$

問題の条件より $\vec{c}' = m\vec{b} + \vec{c}$ であり、かつ $|\vec{b}| = 1$ であるから、係数を比較して、

$$ m = -2\vec{b} \cdot \vec{c} \quad \cdots \text{(2)} $$

(1), (2) より、$|\vec{c}|^2 = m$ すなわち $|\vec{c}| = \sqrt{m}$ を得る。 また、(2) より $\vec{b} \cdot \vec{c} = -\frac{m}{2}$ となる。

以降の議論は解法1と同様である。

$$ \cos \angle BAC = \frac{\vec{b} \cdot \vec{c}}{|\vec{b}||\vec{c}|} = \frac{-\frac{m}{2}}{1 \cdot \sqrt{m}} = -\frac{\sqrt{m}}{2} $$

$0 < \angle BAC < \pi$ より $-1 < \cos \angle BAC < 1$ であるから、

$$ -1 < -\frac{\sqrt{m}}{2} < 1 \iff 0 \le m < 4 $$

$m$ は正の整数であるため、$m = 1, 2, 3$ と求まる。 それぞれの場合について $\angle BAC$ および $|\vec{c}|$ を計算すると、以下の結果を得る。

解説

「直線に関する対称移動」をベクトルでいかに処理するかが問われている。 図形的な意味を考えて「線分の中点が直線上にある(位置ベクトルと法線ベクトルが直交する)」と「線分が直線に垂直である(方向ベクトルが法線ベクトルと平行)」の2条件に帰着させるのが基本的なアプローチである(解法1)。 また、原点を通る直線に対する対称移動の公式を知っていれば、機械的な計算で極めて手早く条件式を導出できる(解法2)。 最後に得られた $\cos \angle BAC$ の値から、$-1 < \cos \theta < 1$ の条件を用いて整数 $m$ の値を絞り込む流れは、記述式試験で頻出の論理展開である。

答え

$m = 1$ のとき $\angle BAC = \frac{2}{3}\pi$, $|\vec{c}| = 1$ $m = 2$ のとき $\angle BAC = \frac{3}{4}\pi$, $|\vec{c}| = \sqrt{2}$ $m = 3$ のとき $\angle BAC = \frac{5}{6}\pi$, $|\vec{c}| = \sqrt{3}$

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