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京都大学 1972年 文系 第3問 解説

数学C/平面ベクトル数学1/図形計量数学1/方程式不等式テーマ/図形総合テーマ/存在証明
京都大学 1972年 文系 第3問 解説

方針・初手

平行四辺形の頂点の位置関係から、対角線に関するベクトルの等式 $\overrightarrow{PR} = \overrightarrow{PQ} + \overrightarrow{PS}$ を立てる。与えられた条件を用いてこれを $\overrightarrow{PQ'}, \overrightarrow{PR'}, \overrightarrow{PS'}$ の式に書き換え、係数の関係を調べる。三角形の「凸性」(内部の2点を結ぶ線分は常にその図形の内部に含まれるという性質)を利用して図形的に不等式を導出するのがポイントとなる。

解法1

四角形 $PQRS$ は平行四辺形であるから、

$$ \overrightarrow{PR} = \overrightarrow{PQ} + \overrightarrow{PS} $$

が成り立つ。問題の条件より $\overrightarrow{PQ} = a\overrightarrow{PQ'}$, $\overrightarrow{PR} = b\overrightarrow{PR'}$, $\overrightarrow{PS} = c\overrightarrow{PS'}$ であるから、これらを代入して

$$ b\overrightarrow{PR'} = a\overrightarrow{PQ'} + c\overrightarrow{PS'} $$

を得る。 ここで、点 $P$ は $\triangle ABC$ の内部にあり、点 $Q', R', S'$ はそれぞれ $P$ から $Q, R, S$ へ向かう半直線と $\triangle ABC$ の周との交点である。よって、$\overrightarrow{PQ}$ と $\overrightarrow{PQ'}$ は同じ向きの $\vec{0}$ でないベクトルであるから、$a > 0$ である。同様にして $b > 0$ かつ $c > 0$ である。

上の式の両辺を $b$ で割ると、

$$ \overrightarrow{PR'} = \frac{a}{b}\overrightarrow{PQ'} + \frac{c}{b}\overrightarrow{PS'} $$

となり、さらに右辺のカッコ内の係数の和が $1$ になる形を作り出すと、

$$ \overrightarrow{PR'} = \frac{a+c}{b} \left( \frac{a}{a+c}\overrightarrow{PQ'} + \frac{c}{a+c}\overrightarrow{PS'} \right) $$

と変形できる。

ここで、線分 $Q'S'$ を $c : a$ に内分する点を $X$ とおく。$a > 0$ かつ $c > 0$ より、点 $X$ は線分 $Q'S'$ 上(両端点を除く)に存在し、その位置ベクトルは

$$ \overrightarrow{PX} = \frac{a}{a+c}\overrightarrow{PQ'} + \frac{c}{a+c}\overrightarrow{PS'} $$

と表される。これを用いると、

$$ \overrightarrow{PR'} = \frac{a+c}{b} \overrightarrow{PX} $$

となる。この等式は、点 $X$ が半直線 $PR'$ 上にあること(すなわち半直線 $PX$ と半直線 $PR'$ が一致すること)を示している。また、四角形 $PQRS$ は平行四辺形であるため $\overrightarrow{PQ'}$ と $\overrightarrow{PS'}$ は平行ではなく、$\overrightarrow{PX} \neq \vec{0}$ である。

次に、点 $X$ と点 $R'$ の位置関係を考える。 点 $Q'$ と点 $S'$ は $\triangle ABC$ の周上にある。三角形の周および内部からなる領域は「凸集合」(図形内の任意の2点を結ぶ線分が、常にその図形内に含まれる性質を持つ図形)であるため、線分 $Q'S'$ 上にある点 $X$ もまた、$\triangle ABC$ の内部または周上に存在する。

一方、点 $R'$ は半直線 $PR'$ (すなわち半直線 $PX$)と $\triangle ABC$ の周との交点である。点 $P$ は $\triangle ABC$ の内部の点であるため、半直線 $PR'$ 上に存在する $\triangle ABC$ の内部および周上の点は、すべて線分 $PR'$ 上(両端点を含む)に含まれる。 点 $X$ は半直線 $PR'$ 上にあり、かつ $\triangle ABC$ の内部または周上にあるため、点 $X$ は線分 $PR'$ 上に存在しなければならない。

したがって、ベクトル $\overrightarrow{PX}$ と $\overrightarrow{PR'}$ の大きさについて

$$ |\overrightarrow{PX}| \leqq |\overrightarrow{PR'}| $$

が成り立つ。 $\overrightarrow{PR'} = \frac{a+c}{b} \overrightarrow{PX}$ であり、$\overrightarrow{PX}$ と $\overrightarrow{PR'}$ は同じ向きで $\overrightarrow{PX} \neq \vec{0}$ であるから、

$$ \frac{a+c}{b} \geqq 1 $$

が得られる。$b > 0$ であるため、両辺に $b$ を掛けて

$$ a + c \geqq b $$

が成立する。

解説

ベクトルの等式から「内分点」をあぶり出し、それが図形的にどのような位置にあるかを考察する論証問題だ。 $\overrightarrow{OR} = s\overrightarrow{OP} + t\overrightarrow{OQ}$ のような式を見たとき、係数の和 $s+t$ でくくって内分点のベクトル $\frac{s}{s+t}\overrightarrow{OP} + \frac{t}{s+t}\overrightarrow{OQ}$ を作り出す式変形は、平面ベクトルにおける重要な定石だ。

本問ではさらに、三角形という図形が「凸図形」であることを背景として、線分と境界(周)との交点の位置関係から不等式を導く力が求められている。厳密な答案を作成するためには、各文字の符号($a,b,c > 0$)や、交点が存在する順序を丁寧に言葉で説明することが不可欠だ。

答え

平行四辺形のベクトルの関係式と、三角形の凸性を利用して、$a+c \geqq b$ が成立することが示された。

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