東京大学 1981年 文系 第2問 解説

方針・初手
反復試行の確率の公式を用いて、A、Bそれぞれが各枚数の表を出す確率を求める。 (1)では、Aの投げる枚数が4枚、Bが3枚と少ないため、すべての場合を書き出して計算することができる。計算量を減らすため、引き分けの確率とBが勝つ確率を先に計算し、Aが勝つ確率は余事象を利用して求めるのが効率的である。 (2)では、ゲームにおける「有利不利」を判断するために、各プレイヤーが得られる金額の期待値を計算して比較する。
解法1
Aが表を $k$ 枚出す確率を $P_A(k)$、Bが表を $l$ 枚出す確率を $P_B(l)$ とする。
Aは100円硬貨を4枚投げるので、$k = 0, 1, 2, 3, 4$ であり、
$$ P_A(k) = {}_{4}\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{2}\right)^4 = \frac{{}_{4}\mathrm{C}_{k}}{16} $$
Bは50円硬貨を3枚投げるので、$l = 0, 1, 2, 3$ であり、
$$ P_B(l) = {}_{3}\mathrm{C}_{l} \left(\frac{1}{2}\right)^3 = \frac{{}_{3}\mathrm{C}_{l}}{8} $$
それぞれの確率を計算すると以下のようになる。 $P_A(0) = \frac{1}{16}$, $P_A(1) = \frac{4}{16}$, $P_A(2) = \frac{6}{16}$, $P_A(3) = \frac{4}{16}$, $P_A(4) = \frac{1}{16}$ $P_B(0) = \frac{1}{8}$, $P_B(1) = \frac{3}{8}$, $P_B(2) = \frac{3}{8}$, $P_B(3) = \frac{1}{8}$
(1)
引き分けとなるのは、AとBの表の枚数が等しいときである。その確率は、
$$ P(A=B) = \sum_{k=0}^{3} P_A(k)P_B(k) $$
$$ = P_A(0)P_B(0) + P_A(1)P_B(1) + P_A(2)P_B(2) + P_A(3)P_B(3) $$
$$ = \frac{1}{16} \cdot \frac{1}{8} + \frac{4}{16} \cdot \frac{3}{8} + \frac{6}{16} \cdot \frac{3}{8} + \frac{4}{16} \cdot \frac{1}{8} $$
$$ = \frac{1 \cdot 1 + 4 \cdot 3 + 6 \cdot 3 + 4 \cdot 1}{128} $$
$$ = \frac{1 + 12 + 18 + 4}{128} = \frac{35}{128} $$
Bが勝つのは、Bの表の枚数がAの表の枚数より多いときである。その確率は、
$$ P(A<B) = P_A(0)\{P_B(1)+P_B(2)+P_B(3)\} + P_A(1)\{P_B(2)+P_B(3)\} + P_A(2)P_B(3) $$
$$ = \frac{1}{16} \left( \frac{3+3+1}{8} \right) + \frac{4}{16} \left( \frac{3+1}{8} \right) + \frac{6}{16} \cdot \frac{1}{8} $$
$$ = \frac{1}{16} \cdot \frac{7}{8} + \frac{4}{16} \cdot \frac{4}{8} + \frac{6}{16} \cdot \frac{1}{8} $$
$$ = \frac{7 + 16 + 6}{128} = \frac{29}{128} $$
Aが勝つ確率は、全事象の確率 $1$ から、引き分けの確率とBが勝つ確率を引けばよい。
$$ P(A>B) = 1 - P(A=B) - P(A<B) $$
$$ = 1 - \frac{35}{128} - \frac{29}{128} $$
$$ = 1 - \frac{64}{128} = \frac{64}{128} = \frac{1}{2} $$
(2)
「有利」であるかどうかの判定は、ゲームを行うことによって得られる金額の期待値によって行う。
Aが勝った場合、AはBの投げた50円硬貨3枚をもらえるため、Aが得る金額は $50 \times 3 = 150$ 円である。 Bが勝った場合、BはAの投げた100円硬貨4枚をもらえるため、Bが得る金額は $100 \times 4 = 400$ 円である。 引き分けの場合はどちらも硬貨をもらえない。
Aが得る金額の期待値を $E_A$、Bが得る金額の期待値を $E_B$ とすると、
$$ E_A = 150 \times P(A>B) = 150 \times \frac{1}{2} = 75 \text{ (円)} $$
$$ E_B = 400 \times P(A<B) = 400 \times \frac{29}{128} = \frac{11600}{128} = \frac{725}{8} = 90.625 \text{ (円)} $$
$E_A < E_B$ であるから、得られる金額の期待値が大きいBの方が有利である。
解法2
(1) について、対称性を利用したAが勝つ確率の求め方
Aが投げる4枚の硬貨のうち、特定の3枚について表が出る枚数を $X$、残りの1枚について表が出る枚数を $Z$ とする。また、Bが投げる3枚の硬貨の表が出る枚数を $Y$ とする。 Aの表の合計枚数は $X+Z$ である。
$X$ と $Y$ はともに「硬貨を3枚投げたときの表の枚数」であるから、確率分布は全く同じであり、対称性より $P(X>Y) = P(X<Y)$ が成り立つ。 ここで、$P(X=Y)$ は、
$$ P(X=Y) = \sum_{k=0}^{3} \left\{ {}_{3}\mathrm{C}_{k} \left(\frac{1}{2}\right)^3 \right\}^2 $$
$$ = \left(\frac{1}{8}\right)^2 + \left(\frac{3}{8}\right)^2 + \left(\frac{3}{8}\right)^2 + \left(\frac{1}{8}\right)^2 $$
$$ = \frac{1+9+9+1}{64} = \frac{20}{64} = \frac{5}{16} $$
となる。よって、
$$ P(X>Y) = P(X<Y) = \frac{1 - P(X=Y)}{2} = \frac{1 - \frac{5}{16}}{2} = \frac{11}{32} $$
Aが勝つ事象 $X+Z > Y$ は、以下の2つの排反な事象の和事象である。
(i)
$X > Y$ のとき このとき $Z$ の値(0または1)に関わらず、$X+Z \ge X > Y$ となりAの勝ちとなる。
(ii)
$X = Y$ のとき このとき $Z=1$ であれば $X+Z > Y$ となりAの勝ちとなる。($Z=0$ ならば引き分け)
なお、$X < Y$ のときは、仮に $Z=1$ であっても $X+Z \le Y$ となるため、Aが勝つことはない。
したがって、Aが勝つ確率 $P(A>B)$ は、
$$ P(A>B) = P(X>Y) + P(X=Y \text{ かつ } Z=1) $$
事象 $X, Y$ と 事象 $Z$ は独立であるから、
$$ P(A>B) = P(X>Y) + P(X=Y)P(Z=1) $$
$$ = \frac{11}{32} + \frac{5}{16} \cdot \frac{1}{2} = \frac{11}{32} + \frac{5}{32} = \frac{16}{32} = \frac{1}{2} $$
解説
- (1)は反復試行の確率の基本問題である。硬貨の枚数が少ないため、解法1のようにすべての事象を列挙して計算しても十分に解答可能である。計算ミスを防ぐため、確率を求める順序(計算が少ないものを先に求める)を工夫することが大切である。
- 解法2のように、同じ枚数(3枚)の硬貨の表の枚数に関する対称性に気づくと、計算を大きく省略できる。これは確率分野における有名なテーマの類題でもあり、知っていると検算にも役立つ。
- (2)は「有利不利」の基準が期待値にあることを理解しているかを問う問題である。本解説では「もらえる金額」の期待値を比較したが、自分が支払う額(負けた場合)も含めた「純利益の期待値」で比較しても(Aの純利益の期待値は $-15.625$ 円、Bの純利益の期待値は $15.625$ 円となり)同じ結論が得られる。
答え
(1)
Aの勝つ確率: $\frac{1}{2}$ Bの勝つ確率: $\frac{29}{128}$ 引き分けの確率: $\frac{35}{128}$
(2)
Bが有利である。
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