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東京大学 1981年 文系 第1問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/三角関数数学B/数列テーマ/場合分け
東京大学 1981年 文系 第1問 解説

方針・初手

行列 $A$ を回転行列と拡大の組み合わせ(極形式)で表すことで、行列の $n$ 乗 $A^n$ を計算し、点 $(x_n, y_n)$ の座標を一般項として求める。

その後、距離の条件 $d_{n+1} > d_n$ を2乗した形 $d_{n+1}^2 - d_n^2 > 0$ に書き換え、$n$ についての不等式を導く。得られた不等式に含まれる三角関数の項は $n$ について周期性を持つため、剰余による場合分けを行ってすべての正の整数 $n$ で不等式が成り立つための $a$ の条件を絞り込む。

解法1

行列 $A$ を変形すると、次のように表すことができる。

$$ A = \begin{pmatrix} -1 & -\sqrt{3} \\ \sqrt{3} & -1 \end{pmatrix} = 2 \begin{pmatrix} -\frac{1}{2} & -\frac{\sqrt{3}}{2} \\ \frac{\sqrt{3}}{2} & -\frac{1}{2} \end{pmatrix} = 2 \begin{pmatrix} \cos\frac{2\pi}{3} & -\sin\frac{2\pi}{3} \\ \sin\frac{2\pi}{3} & \cos\frac{2\pi}{3} \end{pmatrix} $$

したがって、行列 $A^n$ はド・モアブルの定理と同様の回転の性質から以下のようになる。

$$ A^n = 2^n \begin{pmatrix} \cos\frac{2n\pi}{3} & -\sin\frac{2n\pi}{3} \\ \sin\frac{2n\pi}{3} & \cos\frac{2n\pi}{3} \end{pmatrix} $$

これより、点 $(x_n, y_n)$ の座標は次のように計算される。

$$ \begin{pmatrix} x_n \\ y_n \end{pmatrix} = A^n \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2^n \cos\frac{2n\pi}{3} \\ 2^n \sin\frac{2n\pi}{3} \end{pmatrix} $$

次に、点 $(x_n, y_n)$ と点 $(a, 0)$ の距離 $d_n$ の2乗を計算する。$x_n^2 + y_n^2 = (2^n)^2 = 4^n$ であることを用いる。

$$ d_n^2 = (x_n - a)^2 + y_n^2 = x_n^2 + y_n^2 - 2ax_n + a^2 = 4^n - 2a \cdot 2^n \cos\frac{2n\pi}{3} + a^2 $$

距離 $d_n$ は正であるため、条件 $d_{n+1} > d_n$ は $d_{n+1}^2 - d_n^2 > 0$ と同値である。この差を計算する。

$$ d_{n+1}^2 - d_n^2 = \left( 4^{n+1} - 2a \cdot 2^{n+1} \cos\frac{2(n+1)\pi}{3} + a^2 \right) - \left( 4^n - 2a \cdot 2^n \cos\frac{2n\pi}{3} + a^2 \right) $$

$$ d_{n+1}^2 - d_n^2 = 3 \cdot 4^n - 2a \cdot 2^n \left( 2 \cos\frac{2(n+1)\pi}{3} - \cos\frac{2n\pi}{3} \right) $$

これがすべての正の整数 $n$ で正となるため、両辺を $2^n$($>0$)で割り、次のように整理する。

$$ 3 \cdot 2^n - 2a \left( 2 \cos\frac{2(n+1)\pi}{3} - \cos\frac{2n\pi}{3} \right) > 0 $$

ここで、$c_n = 2 \cos\frac{2(n+1)\pi}{3} - \cos\frac{2n\pi}{3}$ とおく。数列 $c_n$ の値を $n=1, 2, 3$ について順に求める。

$n=1$ のとき:

$$ c_1 = 2 \cos\frac{4\pi}{3} - \cos\frac{2\pi}{3} = 2 \left( -\frac{1}{2} \right) - \left( -\frac{1}{2} \right) = -1 + \frac{1}{2} = -\frac{1}{2} $$

$n=2$ のとき:

$$ c_2 = 2 \cos\frac{6\pi}{3} - \cos\frac{4\pi}{3} = 2 \cdot 1 - \left( -\frac{1}{2} \right) = 2 + \frac{1}{2} = \frac{5}{2} $$

$n=3$ のとき:

$$ c_3 = 2 \cos\frac{8\pi}{3} - \cos\frac{6\pi}{3} = 2 \left( -\frac{1}{2} \right) - 1 = -1 - 1 = -2 $$

三角関数の周期性から $c_{n+3} = c_n$ であるため、$n$ を $3$ で割った余りによって場合分けを行う。($k$ は正の整数とする)

(i)

$n=3k-2$ のとき

$c_n = -\frac{1}{2}$ であるから、不等式は次のようになる。

$$ 3 \cdot 2^{3k-2} - 2a \left( -\frac{1}{2} \right) > 0 $$

$$ a > -3 \cdot 2^{3k-2} $$

これがすべての正の整数 $k$ で成り立つ必要がある。右辺は $k=1$ のときに最大値 $-6$ をとるため、$a > -6$ が条件となる。

(ii)

$n=3k-1$ のとき

$c_n = \frac{5}{2}$ であるから、不等式は次のようになる。

$$ 3 \cdot 2^{3k-1} - 2a \left( \frac{5}{2} \right) > 0 $$

$$ 5a < 3 \cdot 2^{3k-1} $$

$$ a < \frac{3 \cdot 2^{3k-1}}{5} $$

これがすべての正の整数 $k$ で成り立つ必要がある。右辺は $k=1$ のときに最小値 $\frac{12}{5}$ をとるため、$a < \frac{12}{5}$ が条件となる。

(iii)

$n=3k$ のとき

$c_n = -2$ であるから、不等式は次のようになる。

$$ 3 \cdot 2^{3k} - 2a \left( -2 \right) > 0 $$

$$ 4a > -3 \cdot 2^{3k} $$

$$ a > -3 \cdot 2^{3k-2} $$

これがすべての正の整数 $k$ で成り立つ必要がある。右辺は $k=1$ のときに最大値 $-6$ をとるため、$a > -6$ が条件となる。

(i)、(ii)、(iii) の条件を同時に満たす必要があるため、求める $a$ の範囲は共通部分をとる。

$$ -6 < a < \frac{12}{5} $$

解説

行列の $n$ 乗を計算するにあたって、行列を $r \begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix}$ の形(回転行列の定数倍)に直すのが定石である。これにより、点 $(x_n, y_n)$ が原点を中心に拡大しながら回転移動していく様子を式で正確に表すことができる。

また、後半の「すべての正の整数 $n$ について成り立つ」という条件の処理において、得られた不等式を $n$ の偶奇や剰余によって分類し、それぞれの部分列における「最も厳しい条件(最大値・最小値)」を見つけ出して共通部分をとる論法は頻出である。ここでは周期が3であることに気付き、$k=1$ のときが実質的な境界条件となることを見抜く力が必要になる。

答え

$$ -6 < a < \frac{12}{5} $$

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