東京大学 1967年 理系 第1問 解説

方針・初手
不等式 $A > B$ の証明であるから、$f(x) = A - B$ とおいて、$x \ge 0$ における $f(x)$ の最小値が正であることを示すのが最も標準的な方針である。導関数を用いて増減を調べる。 また、式に $n$ 乗根や $n+1$ 乗が含まれていること、変数が正であることなどに着目すると、相加平均と相乗平均の大小関係をうまく用いて証明することも可能である。
解法1
$$ f(x) = ax^{n+1} - x + \frac{1}{\sqrt[n]{a}} $$
とおく。$a > 0$ である。$f(x)$ を $x$ について微分すると、
$$ f'(x) = a(n+1)x^n - 1 $$
となる。$x \ge 0$ において $f'(x) = 0$ となるのは、
$$ x^n = \frac{1}{a(n+1)} $$
のときであり、これを満たす $x$ は
$$ x = \frac{1}{\sqrt[n]{a(n+1)}} = a^{-\frac{1}{n}}(n+1)^{-\frac{1}{n}} $$
である。この値を $\alpha$ とおく。
$x \ge 0$ における $f(x)$ の増減を調べる。 $0 \le x < \alpha$ のとき $f'(x) < 0$ であり、$x > \alpha$ のとき $f'(x) > 0$ となるから、$f(x)$ は $x = \alpha$ で最小値をとる。
最小値 $f(\alpha)$ を計算する。$\alpha$ の定義より $a\alpha^n = \frac{1}{n+1}$ であることを用いると、
$$ \begin{aligned} f(\alpha) &= a\alpha^{n+1} - \alpha + a^{-\frac{1}{n}} \\ &= (a\alpha^n)\alpha - \alpha + a^{-\frac{1}{n}} \\ &= \frac{1}{n+1}\alpha - \alpha + a^{-\frac{1}{n}} \\ &= -\frac{n}{n+1}\alpha + a^{-\frac{1}{n}} \\ &= -\frac{n}{n+1} a^{-\frac{1}{n}}(n+1)^{-\frac{1}{n}} + a^{-\frac{1}{n}} \\ &= a^{-\frac{1}{n}} \left\{ 1 - \frac{n}{(n+1)(n+1)^{\frac{1}{n}}} \right\} \end{aligned} $$
となる。
ここで、$n$ は正の整数であるから $n \ge 1$ であり、$n+1 \ge 2$ である。 したがって、$(n+1)^{\frac{1}{n}} > 1$ が成り立つ。 よって、分母について $(n+1)(n+1)^{\frac{1}{n}} > n+1 > n$ であるから、
$$ \frac{n}{(n+1)(n+1)^{\frac{1}{n}}} < \frac{n}{n+1} < 1 $$
となる。 また、$a > 0$ より $a^{-\frac{1}{n}} > 0$ である。 したがって、カッコ内の値は正となるため、$f(\alpha) > 0$ である。
以上より、$x \ge 0$ において常に $f(x) \ge f(\alpha) > 0$ が成り立つため、
$$ ax^{n+1} + \frac{1}{\sqrt[n]{a}} > x $$
が示された。
解法2
$a > 0$, $x \ge 0$ であり、$n$ は正の整数である。 不等式の左辺にある定数項 $\frac{1}{\sqrt[n]{a}}$ を $n$ 個の $\frac{1}{n\sqrt[n]{a}}$ に分割し、$ax^{n+1}$ と合わせた $n+1$ 個の項について、相加平均と相乗平均の大小関係を用いる。 各項は非負であるから、
$$ \begin{aligned} ax^{n+1} + \frac{1}{\sqrt[n]{a}} &= ax^{n+1} + \underbrace{\frac{1}{n\sqrt[n]{a}} + \frac{1}{n\sqrt[n]{a}} + \dots + \frac{1}{n\sqrt[n]{a}}}_{n \text{個}} \\ &\ge (n+1) \sqrt[n+1]{ax^{n+1} \cdot \left( \frac{1}{n\sqrt[n]{a}} \right)^n} \\ &= (n+1) \sqrt[n+1]{a x^{n+1} \cdot \frac{1}{n^n a}} \\ &= (n+1) \sqrt[n+1]{\frac{x^{n+1}}{n^n}} \\ &= \frac{n+1}{n^{\frac{n}{n+1}}} x \end{aligned} $$
が成り立つ。
ここで、右辺の係数 $\frac{n+1}{n^{\frac{n}{n+1}}}$ と $1$ の大小を比較する。 $n$ は正の整数($n \ge 1$)であるから、$n+1 \ge 2$ であり、
$$ (n+1)^{n+1} = (n+1)^n \cdot (n+1) > n^n \cdot 1 = n^n $$
が成り立つ。両辺の正の $(n+1)$ 乗根をとると、
$$ n+1 > n^{\frac{n}{n+1}} $$
となる。両辺を正の数 $n^{\frac{n}{n+1}}$ で割ると、
$$ \frac{n+1}{n^{\frac{n}{n+1}}} > 1 $$
となる。
(i)
$x > 0$ のとき
上記の係数の評価より $\frac{n+1}{n^{\frac{n}{n+1}}} x > x$ であるから、
$$ ax^{n+1} + \frac{1}{\sqrt[n]{a}} \ge \frac{n+1}{n^{\frac{n}{n+1}}} x > x $$
となり、不等式は成り立つ。
(ii)
$x = 0$ のとき
与えられた不等式の左辺は $\frac{1}{\sqrt[n]{a}} > 0$ となり、右辺は $0$ となるから、不等式は成り立つ。
以上から、$x \ge 0$ において与えられた不等式が成り立つことが示された。
解説
解法1は、不等式証明の基本である「差をとって微分し、最小値を調べる」という王道のアプローチである。最小値の式がやや複雑になるが、指数法則を用いて丁寧に整理すれば、確実に正であることを評価できる。 解法2は、相加平均と相乗平均の大小関係を利用した技巧的な解法である。相乗平均をとったときに $a$ が消去され、$x$ の次数が $n+1$ 乗根によって $1$ 次になるように、定数項をあえて $n$ 個に等分割する発想が鍵となる。
答え
略(解法1の証明を参照)
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