東京大学 1997年 理系 第3問 解説

方針・初手
点 $P$ の座標を $(x, y, z)$ とおき、与えられたベクトルの大きさに関する条件を座標を用いて立式する。 条件式から $y$ を消去し、$x$ と $z$ の関係式を導く。実数 $(x, y, z)$ が存在するための $r$ の条件を、2次方程式の判別式や変域から求める。 (2)では、内積を座標を用いて表し、(1)で求めた関係式を用いて1変数の関数に帰着させる。変数の変域における最大値と最小値の差を計算して極限をとる。
解法1
(1)
点 $P$ の座標を $(x, y, z)$ とおく。 条件より $|\overrightarrow{PA}|^2 = |\overrightarrow{PB}|^2 = r^2|\overrightarrow{PO}|^2$ である。 各ベクトルの成分より、大きさの2乗はそれぞれ以下のようになる。
$$ |\overrightarrow{PO}|^2 = x^2 + y^2 + z^2 $$
$$ |\overrightarrow{PA}|^2 = (x-1)^2 + y^2 + z^2 = x^2 - 2x + 1 + y^2 + z^2 $$
$$ |\overrightarrow{PB}|^2 = x^2 + (y-1)^2 + z^2 = x^2 + y^2 - 2y + 1 + z^2 $$
まず、$|\overrightarrow{PA}|^2 = |\overrightarrow{PB}|^2$ より、
$$ x^2 - 2x + 1 + y^2 + z^2 = x^2 + y^2 - 2y + 1 + z^2 $$
$$ -2x = -2y $$
$$ y = x $$
これを $|\overrightarrow{PA}|^2 = r^2|\overrightarrow{PO}|^2$ に代入する。
$$ (x-1)^2 + x^2 + z^2 = r^2(x^2 + x^2 + z^2) $$
$$ 2x^2 - 2x + 1 + z^2 = 2r^2x^2 + r^2z^2 $$
式を整理すると、
$$ 2(1-r^2)x^2 - 2x + 1 + (1-r^2)z^2 = 0 $$
ここで、$0 < r < 1$ であるから $1-r^2 > 0$ であり、$z^2 \ge 0$ であるため、
$$ (1-r^2)z^2 = -2(1-r^2)x^2 + 2x - 1 \ge 0 $$
すなわち、$x$ は次の不等式を満たさなければならない。
$$ 2(1-r^2)x^2 - 2x + 1 \le 0 $$
この $x$ についての2次不等式を満たす実数 $x$ が存在することが、条件を満たす点 $P$ が存在するための必要十分条件である。 したがって、2次方程式 $2(1-r^2)x^2 - 2x + 1 = 0$ の判別式を $D$ とすると、$D \ge 0$ であればよい。
$$ \frac{D}{4} = (-1)^2 - 2(1-r^2) \cdot 1 = 2r^2 - 1 \ge 0 $$
$$ r^2 \ge \frac{1}{2} $$
$0 < r < 1$ の条件とあわせて、求める $r$ の範囲は
$$ \frac{1}{\sqrt{2}} \le r < 1 $$
(2)
内積 $\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB}$ を計算する。$P(x, x, z)$ であることを用いると、
$$ \overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} = (1-x)(-x) + (-x)(1-x) + (-z)(-z) = 2x^2 - 2x + z^2 $$
(1)で求めた等式 $2(1-r^2)x^2 - 2x + 1 + (1-r^2)z^2 = 0$ より、
$$ z^2 = -2x^2 + \frac{2}{1-r^2}x - \frac{1}{1-r^2} $$
これを内積の式に代入し、$x$ の関数 $f(x)$ とする。
$$ f(x) = 2x^2 - 2x - 2x^2 + \frac{2}{1-r^2}x - \frac{1}{1-r^2} $$
$$ f(x) = \left( \frac{2}{1-r^2} - 2 \right) x - \frac{1}{1-r^2} = \frac{2r^2}{1-r^2}x - \frac{1}{1-r^2} $$
$0 < r < 1$ より $\frac{2r^2}{1-r^2} > 0$ であるため、$f(x)$ は $x$ について単調増加な1次関数である。 したがって、$f(x)$ の最大値と最小値の差は、$x$ の最大値と最小値の差から求められる。 (1)の不等式 $2(1-r^2)x^2 - 2x + 1 \le 0$ より、$x$ の取りうる範囲は
$$ \frac{1 - \sqrt{2r^2-1}}{2(1-r^2)} \le x \le \frac{1 + \sqrt{2r^2-1}}{2(1-r^2)} $$
よって、$x$ の最大値を $x_{max}$、最小値を $x_{min}$ とすると、
$$ x_{max} - x_{min} = \frac{1 + \sqrt{2r^2-1}}{2(1-r^2)} - \frac{1 - \sqrt{2r^2-1}}{2(1-r^2)} = \frac{\sqrt{2r^2-1}}{1-r^2} $$
これより、$M(r) - m(r)$ は以下のようになる。
$$ M(r) - m(r) = \frac{2r^2}{1-r^2} (x_{max} - x_{min}) = \frac{2r^2 \sqrt{2r^2-1}}{(1-r^2)^2} $$
求める極限は、
$$ \lim_{r \to 1-0} (1-r)^2 \{ M(r) - m(r) \} = \lim_{r \to 1-0} (1-r)^2 \frac{2r^2 \sqrt{2r^2-1}}{(1-r)^2 (1+r)^2} $$
$$ = \lim_{r \to 1-0} \frac{2r^2 \sqrt{2r^2-1}}{(1+r)^2} $$
$r \to 1-0$ のとき、分母は $(1+1)^2 = 4$ に、分子は $2 \cdot 1^2 \sqrt{2 \cdot 1^2 - 1} = 2$ に収束する。
$$ \lim_{r \to 1-0} (1-r)^2 \{ M(r) - m(r) \} = \frac{2}{4} = \frac{1}{2} $$
解説
(1) は座標を設定し、素直に条件式を連立させる方針が確実である。空間上の点 $P$ の軌跡は、平面 $y=x$ と球面(アポロニウスの球)が交わってできる円周となるが、方程式として処理し「 $z^2 \ge 0$ となるような実数 $x$ が存在する条件」に帰着させることで見通し良く解くことができる。
(2) も同様に、内積を $x, z$ の式で表したのちに、関係式を用いて $z$ を消去し $x$ のみの関数とすることがポイントである。結果として内積は $x$ の1次関数となるため、最大値・最小値を個別に複雑な計算で求める必要はなく、差の計算 $M(r) - m(r)$ を一括して行うと計算量が減る。極限の計算では、分母の $(1-r^2)^2$ を因数分解して $(1-r)^2$ を約分する典型的な処理である。
答え
(1)
$$ \frac{1}{\sqrt{2}} \le r < 1 $$
(2)
$$ \frac{1}{2} $$
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