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東京大学 1998年 理系 第2問 解説

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東京大学 1998年 理系 第2問 解説

方針・初手

与えられた連立不等式を扱いやすい形に整理し、$x, y$ を固定したときの $z$ の取り得る範囲を絞り込むのが自然なアプローチである。格子点の総数 $f(n)$ を直接 $n$ の式で表してから極限をとる方法と、極限の式が意味する「領域の体積」を直接求める方法の2つが考えられる。

解法1

与えられた連立不等式を $z$ について解くと、以下のようになる。

$$ \begin{cases} z \leqq n - x - y \\ z \geqq -n - x + y \\ z \geqq -n + x - y \\ z \leqq n + x + y \end{cases} $$

これを $z$ の範囲として一つにまとめると、次のように表せる。

$$ \max(-n - x + y, -n + x - y) \leqq z \leqq \min(n - x - y, n + x + y) $$

$$ -n + |x - y| \leqq z \leqq n - |x + y| $$

このような整数 $z$ が存在するためには、左辺が右辺以下である必要がある。

$$ -n + |x - y| \leqq n - |x + y| $$

$$ |x + y| + |x - y| \leqq 2n $$

ここで、任意の実数 $X, Y$ について $|X + Y| + |X - Y| = 2 \max(|X|, |Y|)$ が成り立つことを利用すると、上の条件は次のように同値変形できる。

$$ 2 \max(|x|, |y|) \leqq 2n $$

$$ \max(|x|, |y|) \leqq n $$

すなわち、整数 $x, y$ の動く範囲は $-n \leqq x \leqq n$ かつ $-n \leqq y \leqq n$ である。このとき、条件を満たす $z$ の取り得る整数の個数は次のようになる。

$$ (n - |x + y|) - (-n + |x - y|) + 1 = 2n - (|x + y| + |x - y|) + 1 = 2n - 2 \max(|x|, |y|) + 1 $$

格子点の総数 $f(n)$ を求めるため、$k = \max(|x|, |y|)$ とおき、$k$ の値ごとに分類して足し合わせる。$x, y$ は整数なので、$k$ は $0 \leqq k \leqq n$ の整数をとる。

(i)

$k = 0$ のとき $(x, y) = (0, 0)$ の $1$ 個のみである。このとき $z$ の個数は $2n + 1$ 個。

(ii)

$1 \leqq k \leqq n$ のとき $\max(|x|, |y|) = k$ となる整数 $(x, y)$ の組の個数は、$-k \leqq x, y \leqq k$ の正方形領域に含まれる格子点から、$-(k-1) \leqq x, y \leqq k-1$ に含まれる格子点を除いたものであるから、次のようになる。

$$ (2k+1)^2 - (2k-1)^2 = 8k $$

このとき $z$ の個数は $2n - 2k + 1$ 個である。

以上より、$f(n)$ は次のように計算できる。

$$ f(n) = (2n + 1) \cdot 1 + \sum_{k=1}^{n} (2n - 2k + 1) \cdot 8k $$

$$ = 2n + 1 + 8(2n+1)\sum_{k=1}^{n} k - 16 \sum_{k=1}^{n} k^2 $$

$$ = 2n + 1 + 8(2n+1) \frac{n(n+1)}{2} - 16 \frac{n(n+1)(2n+1)}{6} $$

$$ = 2n + 1 + 4n(n+1)(2n+1) - \frac{8}{3}n(n+1)(2n+1) $$

$$ = 2n + 1 + \frac{4}{3}n(n+1)(2n+1) $$

したがって、求める極限は次のようになる。

$$ \lim_{n \to \infty} \frac{f(n)}{n^3} = \lim_{n \to \infty} \left\{ \frac{2n+1}{n^3} + \frac{4}{3} \cdot \frac{n}{n} \cdot \frac{n+1}{n} \cdot \frac{2n+1}{n} \right\} $$

$$ = 0 + \frac{4}{3} \cdot 1 \cdot 1 \cdot 2 = \frac{8}{3} $$

解法2

$\frac{f(n)}{n^3}$ の $n \to \infty$ における極限は、リーマン和の考え方(区分求積法の3次元への拡張)により、与えられた連立不等式の両辺を $n$ で割ったものを $n \to \infty$ とした領域、すなわち $XYZ$ 空間における次の連立不等式が表す領域 $D$ の体積 $V$ に一致する。(ただし $X = \frac{x}{n}, Y = \frac{y}{n}, Z = \frac{z}{n}$ とする)

$$ \begin{cases} X + Y + Z \leqq 1 \\ -X + Y - Z \leqq 1 \\ X - Y - Z \leqq 1 \\ -X - Y + Z \leqq 1 \end{cases} $$

領域 $D$ は、4つの平面 $X+Y+Z=1$、$-X+Y-Z=1$、$X-Y-Z=1$、$-X-Y+Z=1$ で囲まれる四面体である。 これらの平面の交点として、四面体の4つの頂点を求める。例えば3つの平面の方程式を連立して解くと、頂点は次の4点になる。

$$ A(-1, -1, -1), B(1, -1, 1), C(-1, 1, 1), D(1, 1, -1) $$

これらの点は、原点を中心とし各座標軸に平行な辺を持つ、1辺の長さが $2$ の立方体(頂点の座標が $\pm 1$ となる立方体)の頂点の一部となっている。

この四面体 $ABCD$ は、体積 $2^3 = 8$ の立方体から、4つの角にある直角三角錐を切り落とした立体(正四面体)である。 切り落とす直角三角錐の1つ(例えば、点 $(1, -1, -1)$ を頂点とし、$\triangle ABD$ を含むような三角錐)は、互いに直交する長さ $2$ の辺を3つ持つ。この三角錐の体積は次のように求まる。

$$ \frac{1}{3} \times \left( \frac{1}{2} \times 2 \times 2 \right) \times 2 = \frac{4}{3} $$

これが4つあるため、求める四面体の体積 $V$ は次のように計算できる。

$$ V = 8 - 4 \times \frac{4}{3} = \frac{8}{3} $$

これが求める極限値である。

解説

不等式が表す領域内の格子点の個数を数え上げる典型問題である。 解法1のように、文字を1つ固定して(今回は $z$ について解く)平面で切断し、シグマ計算に持ち込むのが王道である。その際、絶対値を用いた関数 $\max$ の性質を利用できると、場合分けの見通しが大きく良くなる。 一方、解法2のように「格子点の個数 $\div n^3$ の極限は、領域を $n$ 分の1に縮小した図形の体積に等しい」という事実を知っていると、積分計算や体積計算に帰着でき、煩雑なシグマ計算を回避できる。難関大ではしばしば強力な武器となるため、押さえておきたい考え方である。

答え

$$ \frac{8}{3} $$

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