東京大学 1998年 理系 第3問 解説

方針・初手
$x$ 軸に接する 2 つの円が外接するとき、中心間の距離と半径の関係から、接点の $x$ 座標の差が半径で表せる。この性質から $r_n$ に関する漸化式を導くのが第一歩である。 (2) では接点の位置関係に着目し、$x_{n+1}$ を $x_n$ と $x_{n-1}$ の内分点として捉えることで、複雑な計算を避けて簡潔に漸化式を導出できる。 (3) は、(2) で得られた $p_n, q_n$ の関係から $x_{n+1}$ と $x_n$ の漸化式を作り、極限を求める典型的な評価問題に帰着させる。
解法1
(1) $x$ 軸に接する 2 つの円 $A, B$ の半径をそれぞれ $r_A, r_B$、接点の $x$ 座標を $x_A, x_B$ とする。この 2 円が外接するとき、中心はそれぞれ $(x_A, r_A), (x_B, r_B)$ であるから、中心間の距離について
$$ (x_A - x_B)^2 + (r_A - r_B)^2 = (r_A + r_B)^2 $$
が成り立つ。これを整理すると
$$ (x_A - x_B)^2 = 4r_A r_B $$
$$ |x_A - x_B| = 2\sqrt{r_A r_B} \quad \cdots (*) $$
となる。
$C_0$ は $x^2 + \left(y - \frac{1}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}$ より、中心 $\left(0, \frac{1}{2}\right)$、半径 $r_0 = \frac{1}{2}$。接点は $x_0 = 0$ である。 $C_1$ は $(x - 1)^2 + \left(y - \frac{1}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}$ より、中心 $\left(1, \frac{1}{2}\right)$、半径 $r_1 = \frac{1}{2}$。接点は $x_1 = 1$ である。 中心間距離は $\sqrt{(1-0)^2+0} = 1 = r_0 + r_1$ であり、$C_0$ と $C_1$ は外接している。
$C_2$ は $x$ 軸および $C_0, C_1$ に接する。このとき $C_2$ は $C_0, C_1$ の間に挟まれるように接するため、接点 $x_2$ は $x_0$ と $x_1$ の間にある。 一般に、$n \ge 1$ に対して $C_{n+1}$ は $C_{n-1}$ と $C_n$ に接し、$C_{n-2}$ とは異なる円であることから、その接点 $x_{n+1}$ は $x_{n-1}$ と $x_n$ の間にある。 したがって、常に
$$ |x_{n-1} - x_n| = |x_{n-1} - x_{n+1}| + |x_{n+1} - x_n| $$
が成り立つ。これに $(*)$ を適用すると
$$ 2\sqrt{r_{n-1} r_n} = 2\sqrt{r_{n-1} r_{n+1}} + 2\sqrt{r_n r_{n+1}} $$
となる。両辺を $2\sqrt{r_{n-1} r_n r_{n+1}}$ で割ると
$$ \frac{1}{\sqrt{r_{n+1}}} = \frac{1}{\sqrt{r_n}} + \frac{1}{\sqrt{r_{n-1}}} $$
が得られる。両辺に $\frac{1}{\sqrt{2}}$ を掛けると
$$ \frac{1}{\sqrt{2r_{n+1}}} = \frac{1}{\sqrt{2r_n}} + \frac{1}{\sqrt{2r_{n-1}}} $$
すなわち、数列 $\{q_n\}$ は
$$ q_{n+1} = q_n + q_{n-1} \quad (n \ge 1) $$
という漸化式を満たす。 初期値は
$$ q_0 = \frac{1}{\sqrt{2 \cdot \frac{1}{2}}} = 1, \quad q_1 = \frac{1}{\sqrt{2 \cdot \frac{1}{2}}} = 1 $$
である。$q_0, q_1$ は整数であり、漸化式より $q_n$ は直前の 2 項の和となるため、数学的帰納法によりすべての $n \ge 0$ に対して $q_n$ は整数である。
(2) (1) より $x_{n+1}$ は $x_{n-1}$ と $x_n$ の間にあり、
$$ |x_{n-1} - x_{n+1}| = 2\sqrt{r_{n-1} r_{n+1}} = \frac{2}{\sqrt{2r_{n-1}} \sqrt{2r_{n+1}}} = \frac{2}{q_{n-1} q_{n+1}} $$
$$ |x_n - x_{n+1}| = 2\sqrt{r_n r_{n+1}} = \frac{2}{\sqrt{2r_n} \sqrt{2r_{n+1}}} = \frac{2}{q_n q_{n+1}} $$
となる。これより $x_{n+1}$ が線分 $x_{n-1}x_n$ を分ける比は
$$ |x_{n-1} - x_{n+1}| : |x_n - x_{n+1}| = \frac{1}{q_{n-1}} : \frac{1}{q_n} = q_n : q_{n-1} $$
である。したがって、$x_{n+1}$ は $x_{n-1}$ と $x_n$ を $q_n : q_{n-1}$ に内分する点として
$$ x_{n+1} = \frac{q_{n-1} x_{n-1} + q_n x_n}{q_n + q_{n-1}} $$
と表せる。 ここで $p_n = q_n x_n$ であり、また (1) より $q_n + q_{n-1} = q_{n+1}$ であるから
$$ x_{n+1} = \frac{p_{n-1} + p_n}{q_{n+1}} $$
$$ q_{n+1} x_{n+1} = p_n + p_{n-1} $$
すなわち
$$ p_{n+1} = p_n + p_{n-1} \quad (n \ge 1) $$
が得られる。 初期値は
$$ p_0 = q_0 x_0 = 1 \cdot 0 = 0, \quad p_1 = q_1 x_1 = 1 \cdot 1 = 1 $$
である。$p_0, p_1$ は整数であり、漸化式より $p_n$ もすべての $n \ge 0$ に対して整数となる。
次に、$p_n$ と $q_n$ が互いに素であることを示す。 $p_0 = 0, p_1 = 1$、$q_0 = 1, q_1 = 1$ であり、
$$ p_{n+1} = p_n + p_{n-1}, \quad q_{n+1} = q_n + q_{n-1} $$
であることから、$q_0 = p_1 = 1, q_1 = p_2 = 1$ となり、すべての $n \ge 0$ に対して $q_n = p_{n+1}$ が成り立つ。 したがって、$p_n$ と $q_n$ が互いに素であることは、$p_n$ と $p_{n+1}$ が互いに素であることと同値である。 ユークリッドの互除法を用いる。$p_{n+1}$ と $p_n$ の最大公約数を $d$ とおくと、$p_{n-1} = p_{n+1} - p_n$ より $d$ は $p_{n-1}$ も割り切る。 これを繰り返すと、$d$ は $p_1 = 1$ と $p_0 = 0$ の最大公約数となり、$d = 1$ である。 よって、$p_n$ と $q_n$ は互いに素である。
(3) $\alpha = \frac{1}{1+\alpha}$ より $\alpha^2 + \alpha - 1 = 0$ であり、$\alpha > 0$ より
$$ \alpha = \frac{-1+\sqrt{5}}{2} $$
である。 (2) より $q_n = p_{n+1}$ であるため、
$$ x_n = \frac{p_n}{q_n} = \frac{p_n}{p_{n+1}} $$
と表せる。すると
$$ x_{n+1} = \frac{p_{n+1}}{p_{n+2}} = \frac{p_{n+1}}{p_{n+1} + p_n} = \frac{1}{1 + \frac{p_n}{p_{n+1}}} = \frac{1}{1 + x_n} $$
が成り立つ。 これを用いて $|x_{n+1} - \alpha|$ を計算する。
$$ x_{n+1} - \alpha = \frac{1}{1+x_n} - \frac{1}{1+\alpha} = \frac{(1+\alpha) - (1+x_n)}{(1+x_n)(1+\alpha)} = \frac{\alpha - x_n}{(1+x_n)(1+\alpha)} $$
両辺の絶対値をとると
$$ |x_{n+1} - \alpha| = \frac{|x_n - \alpha|}{(1+x_n)(1+\alpha)} $$
ここで $x_n = \frac{p_n}{q_n} \ge 0$ であるから $1+x_n \ge 1$ である。 また、$\alpha$ について $\sqrt{5} < \sqrt{\frac{49}{9}} = \frac{7}{3}$ であるから
$$ \alpha = \frac{\sqrt{5}-1}{2} < \frac{\frac{7}{3}-1}{2} = \frac{2}{3} $$
これらを用いると
$$ \frac{1}{(1+x_n)(1+\alpha)} \le \frac{1}{1 \cdot (1+\alpha)} = \alpha < \frac{2}{3} $$
となる。したがって
$$ |x_{n+1} - \alpha| < \frac{2}{3} |x_n - \alpha| $$
が示された。 この不等式を繰り返し用いると
$$ |x_n - \alpha| < \left(\frac{2}{3}\right)^n |x_0 - \alpha| $$
となる。$n \to \infty$ のとき $\left(\frac{2}{3}\right)^n \to 0$ であるから
$$ \lim_{n \to \infty} |x_n - \alpha| = 0 $$
よって
$$ \lim_{n \to \infty} x_n = \alpha = \frac{\sqrt{5}-1}{2} $$
である。
解説
本問は「フォードの円」と呼ばれる図形を題材にしている。互いに接する円の連鎖において、その半径や接点の座標にはフィボナッチ数列やファレイ数列といった整数論的性質が隠れている。 (2) で接点の座標 $x_{n+1}$ を求める際、愚直に方程式を解くのではなく、内分点として図形的な意味を捉えることで見通し良く漸化式を導出できるのがポイントである。後半の極限の評価は、分数漸化式から定数へ収束する様子を絶対値の不等式で挟み込む、標準的で重要な処理である。
答え
(1)
略(解法1の証明を参照)
(2)
略(解法1の証明を参照)
(3)
略(解法1の証明を参照)
$$ \lim_{n \to \infty} x_n = \frac{\sqrt{5}-1}{2} $$
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