九州大学 2012年 理系 第3問 解説

方針・初手
問題文の式に共通して現れる $x+1$ に着目し、$X = x+1$ と置き換えて方程式を整理する。方程式の中に定数 $a$ が1箇所にしか含まれていないため、「定数分離」を行い、$a = g(X)$ の形に変形して関数 $g(X)$ の値域を調べる方針をとる。また、(2) では (1) で得られた $n$ を含む不等式が、すべての自然数 $n$ で成り立つための条件を数列の極限と単調性を用いて評価する。
解法1
(1)
$X = x+1$ とおく。$x$ がすべての実数値をとるとき、$X$ もすべての実数値をとる。 与えられた方程式は
$$ a \{(X-1)^2 + |X| + n - 1\} = \sqrt{n}X $$
$$ a(X^2 - 2X + |X| + n) = \sqrt{n}X $$
と変形できる。ここで、左辺の括弧内を $f(X) = X^2 - 2X + |X| + n$ とおく。
(i) $X \ge 0$ のとき
$$ f(X) = X^2 - X + n = \left(X - \frac{1}{2}\right)^2 + n - \frac{1}{4} $$
$n$ は自然数($n \ge 1$)であるから、$f(X) \ge \frac{3}{4} > 0$ である。
(ii) $X < 0$ のとき
$$ f(X) = X^2 - 3X + n $$
$X < 0$ かつ $n \ge 1$ であるから、$f(X) > 0$ である。
以上より、すべての実数 $X$ において $f(X) > 0$ であるため、方程式の両辺を $f(X)$ で割ることができ、定数 $a$ を分離すると
$$ a = \frac{\sqrt{n}X}{X^2 - 2X + |X| + n} $$
となる。右辺を $g(X)$ とおく。方程式が実数解を持つための条件は、$a$ が関数 $g(X)$ の値域に含まれることである。
(ア) $X > 0$ のとき
$$ g(X) = \frac{\sqrt{n}X}{X^2 - X + n} = \frac{\sqrt{n}}{X + \frac{n}{X} - 1} $$
$X > 0$, $\frac{n}{X} > 0$ より、相加平均と相乗平均の大小関係から
$$ X + \frac{n}{X} \ge 2\sqrt{X \cdot \frac{n}{X}} = 2\sqrt{n} $$
等号は $X = \frac{n}{X}$ すなわち $X = \sqrt{n}$ のとき成立する。よって分母について $X + \frac{n}{X} - 1 \ge 2\sqrt{n} - 1 > 0$ となるため
$$ 0 < g(X) \le \frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} - 1} $$
(イ) $X < 0$ のとき
$$ g(X) = \frac{\sqrt{n}X}{X^2 - 3X + n} = \frac{\sqrt{n}}{X + \frac{n}{X} - 3} $$
$-X > 0$, $-\frac{n}{X} > 0$ より、相加平均と相乗平均の大小関係から
$$ -X + \left(-\frac{n}{X}\right) \ge 2\sqrt{(-X) \cdot \left(-\frac{n}{X}\right)} = 2\sqrt{n} $$
ゆえに $X + \frac{n}{X} \le -2\sqrt{n}$ となる。等号は $-X = -\frac{n}{X}$ すなわち $X = -\sqrt{n}$ のとき成立する。分母について $X + \frac{n}{X} - 3 \le -2\sqrt{n} - 3 < 0$ となるため
$$ g(X) \ge \frac{\sqrt{n}}{-2\sqrt{n} - 3} = -\frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} + 3} $$
また、$X < 0$ のとき $g(X) < 0$ である。
(ウ) $X = 0$ のとき
$$ g(0) = 0 $$
(ア)、(イ)、(ウ) と $g(X)$ が連続関数であることから、$g(X)$ の値域は
$$ -\frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} + 3} \le g(X) \le \frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} - 1} $$
となり、これが求める $a$ の範囲である。
(2)
(1) の結果より、すべての自然数 $n$ に対して
$$ -\frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} + 3} \le a \le \frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} - 1} $$
が成り立つような $a$ の範囲を求めればよい。
$L_n = -\frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} + 3}$ , $R_n = \frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} - 1}$ とおく。
数列 $\{L_n\}$ について考える。
$$ L_n = -\frac{1}{2 + \frac{3}{\sqrt{n}}} $$
$n$ が大きくなると $\frac{3}{\sqrt{n}}$ は減少するため、分母 $2 + \frac{3}{\sqrt{n}}$ も減少する。これより $\frac{1}{2 + \frac{3}{\sqrt{n}}}$ は増加し、マイナスをつけた $L_n$ は単調に減少する。 したがって、すべての自然数 $n$ に対して $a \ge L_n$ が成り立つための条件は
$$ a \ge L_1 = -\frac{1}{2+3} = -\frac{1}{5} $$
次に、数列 $\{R_n\}$ について考える。
$$ R_n = \frac{1}{2 - \frac{1}{\sqrt{n}}} $$
$n$ が大きくなると $\frac{1}{\sqrt{n}}$ は減少するため、分母 $2 - \frac{1}{\sqrt{n}}$ は増加する。これより $R_n$ は単調に減少する。 また、$n \to \infty$ の極限を考えると
$$ \lim_{n \to \infty} R_n = \lim_{n \to \infty} \frac{1}{2 - \frac{1}{\sqrt{n}}} = \frac{1}{2} $$
もし $a > \frac{1}{2}$ とすると、$R_n \to \frac{1}{2}$ より十分に大きい $n$ に対して $R_n < a$ となってしまい、条件を満たさない。 したがって、すべての自然数 $n$ に対して $a \le R_n$ が成り立つための条件は
$$ a \le \lim_{n \to \infty} R_n = \frac{1}{2} $$
(逆に $a \le \frac{1}{2}$ であれば、任意の自然数 $n$ に対して $2 - \frac{1}{\sqrt{n}} < 2$ より $R_n > \frac{1}{2} \ge a$ となり、条件を満たす。)
以上をまとめて、求める $a$ の範囲は
$$ -\frac{1}{5} \le a \le \frac{1}{2} $$
解説
方程式の実数解の存在条件を、定数を分離して関数の値域の問題に帰着させる典型的な問題である。(1) において分母・分子を $X$ で割り、相加平均と相乗平均の大小関係を用いて関数の最大値・最小値を求める手法は、頻出かつ効果的である。 ただし、$X < 0$ のときはそのまま相加・相乗平均を用いることができないため、$-X > 0$ や $-\frac{n}{X} > 0$ のように正の値に直してから適用する必要がある。 (2) は「すべての $n$ に対して不等式が成り立つ」という条件を、数列の最大値や下限(極限)の問題として読み替える論理展開が求められる。単調減少する数列の上から押さえる条件は、極限値を考えることで得られる。
答え
(1)
$$ -\frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} + 3} \le a \le \frac{\sqrt{n}}{2\sqrt{n} - 1} $$
(2)
$$ -\frac{1}{5} \le a \le \frac{1}{2} $$
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