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名古屋大学 1992年 理系 第5問 解説

数学2/図形と式数学2/微分法数学1/二次関数テーマ/軌跡・領域テーマ/最大・最小
名古屋大学 1992年 理系 第5問 解説

方針・初手

円板を座標平面上に設定し、中心の座標と半径の条件に帰着させて解くのが定石である。正方形 $OABC$ の頂点を $O(0,0), A(1,0), B(1,1), C(0,1)$ とし、円板 $S, T$ の中心座標を設定する。

円が正方形の内部(周上を含む)に存在する条件と、2つの円が重ならない(中心間の距離が半径の和以上である)条件を不等式で表す。円板 $T$ の半径 $t$ を最大化するには、円板 $S$ から最も遠い位置に $T$ を配置すればよい。距離の最大値を式として評価し、$t$ の条件を絞り込む。

解法1

(1)

正方形 $OABC$ を座標平面上に置き、各頂点を $O(0,0), A(1,0), B(1,1), C(0,1)$ とする。 円板 $S$ は辺 $OA$ (x軸), 辺 $OC$ (y軸) に接し、半径が $s$ であるから、その中心を $P$ とすると $P(s,s)$ である。 円板 $S$ は正方形に収まるので、その直径は1以下である。したがって $0 < s \le \frac{1}{2}$ が成り立つ。

円板 $T$ の半径を $t$、中心を $M(x,y)$ とする。円板 $T$ が正方形に収まるため、$0 < t \le \frac{1}{2}$ であり、中心 $M(x,y)$ が存在しうる領域(これを $D_t$ とする)は以下の不等式で表される。

$$ t \le x \le 1-t, \quad t \le y \le 1-t $$

また、円板 $S$ と $T$ が重ならないための条件は、中心間の距離 $PM$ が半径の和 $s+t$ 以上になることである。

$$ PM^2 = (x-s)^2 + (y-s)^2 \ge (s+t)^2 \quad \cdots \text{①} $$

$s$ を固定したとき、①を満たすような $M(x,y)$ が領域 $D_t$ 内に存在するための条件は、点 $P(s,s)$ から $D_t$ 内の点までの距離の最大値が $s+t$ 以上になることである。 $D_t$ は4点 $(t,t), (1-t, t), (1-t, 1-t), (t, 1-t)$ を頂点とする正方形である。点 $P(s,s)$ は直線 $y=x$ 上の左下に位置しているため、$D_t$ 内で $P$ から最も遠い点は、頂点 $Q(1-t, 1-t)$ であると予想できる。 実際に、頂点 $Q(1-t, 1-t)$ と頂点 $R(1-t, t)$ (対称性より $(t, 1-t)$ も同距離)の距離の2乗を比較する。

$$ \begin{aligned} PQ^2 - PR^2 &= 2(1-t-s)^2 - \left\{ (1-t-s)^2 + (t-s)^2 \right\} \\ &= (1-t-s)^2 - (t-s)^2 \\ &= \{ (1-t-s) + (t-s) \} \{ (1-t-s) - (t-s) \} \\ &= (1-2s)(1-2t) \end{aligned} $$

$0 < s \le \frac{1}{2}, 0 < t \le \frac{1}{2}$ より $1-2s \ge 0, 1-2t \ge 0$ であるから、$PQ^2 \ge PR^2$ が成り立つ。 したがって、$P(s,s)$ から $D_t$ 内の点までの距離の最大値は $PQ = \sqrt{2}(1-t-s)$ である。 よって、①を満たす $M$ が存在する必要十分条件は以下のようになる。

$$ \sqrt{2}(1-t-s) \ge s+t $$

これを $t$ について解く。

$$ \begin{aligned} \sqrt{2} - \sqrt{2}s - \sqrt{2}t &\ge s+t \\ (\sqrt{2}+1)t &\le \sqrt{2} - (\sqrt{2}+1)s \\ t &\le \frac{\sqrt{2}}{\sqrt{2}+1} - s \\ t &\le 2-\sqrt{2}-s \end{aligned} $$

円板 $T$ は正方形に収まる制約 $t \le \frac{1}{2}$ も満たす必要があるため、$t$ の取り得る最大値は $2-\sqrt{2}-s$ と $\frac{1}{2}$ の小さい方となる。 ここで、境界となる $s$ の値を調べる。

$$ 2-\sqrt{2}-s \ge \frac{1}{2} \iff s \le \frac{3}{2} - \sqrt{2} $$

以上により、求める $t$ の最大値は以下のように場合分けされる。

(i) $0 < s \le \frac{3}{2} - \sqrt{2}$ のとき 最大値は $\frac{1}{2}$

(ii) $\frac{3}{2} - \sqrt{2} < s \le \frac{1}{2}$ のとき 最大値は $2-\sqrt{2}-s$

(2)

$S$ と $T$ の面積の和を $U$ とおくと、$U = \pi(s^2 + t^2)$ である。 $s$ を固定して考えると、$t$ が最大となるときに $U$ も最大となる。したがって、(1) で求めた $t$ の最大値を $t(s)$ とおき、$f(s) = s^2 + \{t(s)\}^2$ の最大値を考えればよい。

(i) $0 < s \le \frac{3}{2} - \sqrt{2}$ のとき $f(s) = s^2 + \frac{1}{4}$ であり、これは区間内で単調増加する。 したがって、$s = \frac{3}{2} - \sqrt{2}$ のときに最大値をとる。

$$ \begin{aligned} f\left(\frac{3}{2} - \sqrt{2}\right) &= \left(\frac{3-2\sqrt{2}}{2}\right)^2 + \frac{1}{4} \\ &= \frac{17-12\sqrt{2}}{4} + \frac{1}{4} \\ &= \frac{18-12\sqrt{2}}{4} \\ &= \frac{9}{2} - 3\sqrt{2} \end{aligned} $$

(ii) $\frac{3}{2} - \sqrt{2} < s \le \frac{1}{2}$ のとき

$$ \begin{aligned} f(s) &= s^2 + (2-\sqrt{2}-s)^2 \\ &= 2s^2 - 2(2-\sqrt{2})s + (2-\sqrt{2})^2 \\ &= 2 \left( s - \frac{2-\sqrt{2}}{2} \right)^2 - \frac{(2-\sqrt{2})^2}{2} + (2-\sqrt{2})^2 \\ &= 2 \left( s - 1 + \frac{\sqrt{2}}{2} \right)^2 + \frac{(2-\sqrt{2})^2}{2} \\ &= 2 \left( s - 1 + \frac{\sqrt{2}}{2} \right)^2 + 3 - 2\sqrt{2} \end{aligned} $$

この2次関数は下に凸であり、軸は $s = 1 - \frac{\sqrt{2}}{2} \approx 0.293$ である。 定義域の端点は $\frac{3}{2} - \sqrt{2} \approx 0.086$ と $\frac{1}{2} = 0.5$ であり、軸はこの区間内に含まれる。 下に凸の放物線では、軸から遠い方の端点で最大値をとるため、両端の値を比較する。

$s = \frac{3}{2} - \sqrt{2}$ のとき、((i)との境界であるから)連続性より $f\left(\frac{3}{2} - \sqrt{2}\right) = \frac{9}{2} - 3\sqrt{2}$

$s = \frac{1}{2}$ のとき $$ \begin{aligned} f\left(\frac{1}{2}\right) &= \frac{1}{4} + \left(2-\sqrt{2}-\frac{1}{2}\right)^2 \\ &= \frac{1}{4} + \left(\frac{3}{2}-\sqrt{2}\right)^2 \\ &= \frac{1}{4} + \frac{17-12\sqrt{2}}{4} \\ &= \frac{9}{2} - 3\sqrt{2} \end{aligned} $$

したがって、区間の両端において同じ最大値 $\frac{9}{2} - 3\sqrt{2}$ をとる。

以上 (i), (ii) より、$f(s)$ の最大値は $\frac{9}{2} - 3\sqrt{2}$ である。 求める面積の和の最大値はこれに $\pi$ を掛けたものである。

解説

図形を座標平面に設定し、式として処理する典型問題である。 (1) では、円板 $T$ が取り得る中心の領域 $D_t$ を設定し、「領域内の点と定点との距離の最大値」という問題に帰着させることが最大のポイントである。図形的に「対角線上に並ぶときが一番厳しい」と直感することは難しくないが、それを $PQ^2 \ge PR^2$ のように数式を用いて論証することで、数学的に不備のない解答になる。 また、円が正方形に収まるための条件 $t \le \frac{1}{2}$ を見落とすと、場合分けができずに正答にたどり着けないため注意が必要である。

(2) では $f(s)$ が下に凸の2次関数となる。下に凸な関数の最大値は定義域の端点でとるという性質を利用すれば、軸との距離を細かく比較せずとも、両端の値を代入して比較するだけで安全に最大値を求めることができる。

答え

(1) $0 < s \le \frac{3}{2} - \sqrt{2}$ のとき $\frac{1}{2}$ $\frac{3}{2} - \sqrt{2} < s \le \frac{1}{2}$ のとき $2-\sqrt{2}-s$

(2) $\pi \left( \frac{9}{2} - 3\sqrt{2} \right)$

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