北海道大学 1964年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) は正三角形の面積を利用する典型的なアプローチが有効である。三角形全体を点 $P$ を頂点とする3つの小さな三角形に分割し、面積の和を比較することで $x_1, x_2, x_3$ の関係式を導く。
(2) と (3) は、(1) で得られた関係式を利用して条件式を簡略化し、図形的な意味(角の二等分線や平行線)から領域を特定する方針(解法1)と、自分で座標軸を設定して直線の方程式と不等式の表す領域として代数的に処理する方針(解法2)の2つが考えられる。
解法1
(1)
$\triangle ABC$ の1辺の長さを $a$ とする。 高さが $1$ であるから、$\frac{\sqrt{3}}{2}a = 1$ より $a = \frac{2}{\sqrt{3}}$ である。 $\triangle ABC$ の面積を $S$ とすると、$S = \frac{1}{2} \cdot a \cdot 1 = \frac{a}{2}$ である。
一方、点 $P$ と各頂点 $A, B, C$ を結ぶと、$\triangle ABC$ は $\triangle PBC$, $\triangle PCA$, $\triangle PAB$ の3つに分割される。 これらの面積の和は $S$ に等しいため、以下の式が成り立つ。
$$S = \triangle PBC + \triangle PCA + \triangle PAB$$
$$\frac{a}{2} = \frac{1}{2} a x_1 + \frac{1}{2} a x_2 + \frac{1}{2} a x_3$$
両辺を $\frac{a}{2}$ で割ると、次が得られる。
$$x_1 + x_2 + x_3 = 1$$
(2)
(1) の結果より $x_2 = 1 - x_1 - x_3$ である。 これを与えられた関係式 $x_2 + 2x_3 = 1$ に代入する。
$$(1 - x_1 - x_3) + 2x_3 = 1$$
$$x_3 = x_1$$
$x_1$ は点 $P$ から辺 $BC$ への距離、$x_3$ は点 $P$ から辺 $AB$ への距離である。 $x_1 = x_3$ を満たす点 $P$ は、辺 $BC$ と辺 $AB$ から等距離にある点の軌跡、すなわち $\angle B$ の二等分線上にある。 正三角形において、$\angle B$ の二等分線は頂点 $B$ から辺 $AC$ に下ろした中線と一致する。 点 $P$ は $\triangle ABC$ の内部(および周上)の点であるため、求める線は頂点 $B$ と辺 $AC$ の中点を結ぶ線分である。
(3)
与えられた3つの不等式を、$x_1 + x_2 + x_3 = 1$ を用いて変形する。
1つ目の不等式 $x_2 + 2x_3 \leqq 1$ について。
$$x_2 + x_3 + x_3 \leqq 1$$
$$(1 - x_1) + x_3 \leqq 1$$
$$x_3 \leqq x_1$$
2つ目の不等式 $x_3 + 2x_1 \geqq 1$ について。
$$x_3 + x_1 + x_1 \geqq 1$$
$$(1 - x_2) + x_1 \geqq 1$$
$$x_2 \leqq x_1$$
3つ目の不等式 $3x_1 + x_2 + x_3 \leqq 2$ について。
$$2x_1 + (x_1 + x_2 + x_3) \leqq 2$$
$$2x_1 + 1 \leqq 2$$
$$x_1 \leqq \frac{1}{2}$$
したがって、点 $P$ は $x_3 \leqq x_1$ かつ $x_2 \leqq x_1$ かつ $x_1 \leqq \frac{1}{2}$ を満たす範囲に存在する。 辺 $AB, AC$ の中点をそれぞれ $M_3, M_2$ とし、$\triangle ABC$ の重心(内心と一致)を $G$ とする。 それぞれの条件が表す図形的意味は以下の通りである。
- $x_3 \leqq x_1$: 辺 $AB$ からの距離が辺 $BC$ からの距離以下である。境界となる $x_3 = x_1$ は直線 $BM_2$ であり、不等式を満たすのは直線 $BM_2$ に関して頂点 $A$ を含む側の領域である。
- $x_2 \leqq x_1$: 辺 $AC$ からの距離が辺 $BC$ からの距離以下である。境界となる $x_2 = x_1$ は直線 $CM_3$ であり、不等式を満たすのは直線 $CM_3$ に関して頂点 $A$ を含む側の領域である。
上記2つの条件を同時に満たす領域は、四角形 $A M_3 G M_2$ の内部および周上である。
- $x_1 \leqq \frac{1}{2}$: 辺 $BC$ からの距離が $\frac{1}{2}$ 以下である。中点連結定理より、線分 $M_3 M_2$ と辺 $BC$ の距離は $\frac{1}{2}$ であるため、$x_1 \leqq \frac{1}{2}$ を満たすのは直線 $M_3 M_2$ に関して辺 $BC$ を含む側の領域である。
四角形 $A M_3 G M_2$ のうち、直線 $M_3 M_2$ に関して辺 $BC$ を含む側の部分は、$\triangle G M_3 M_2$ となる。(重心 $G$ の辺 $BC$ からの距離は $\frac{1}{3}$ であり条件を満たす) 以上より、求める領域は $\triangle G M_3 M_2$ の内部および周上である。
解法2
(1)
辺 $BC$ の中点を原点 $O$ とし、直線 $BC$ を $x$ 軸に、辺 $BC$ の垂直二等分線を $y$ 軸にとる。 高さが $1$ の正三角形であるため、各頂点の座標は $A(0, 1)$, $B\left(-\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right)$, $C\left(\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right)$ となる。 各辺の直線の方程式は以下の通りである。
直線 $BC$: $y = 0$ 直線 $CA$: $y = -\sqrt{3}x + 1 \iff \sqrt{3}x + y - 1 = 0$ 直線 $AB$: $y = \sqrt{3}x + 1 \iff \sqrt{3}x - y + 1 = 0$
点 $P(x, y)$ は $\triangle ABC$ の内部(および境界)の点であるから、$y \geqq 0$, $\sqrt{3}x + y - 1 \leqq 0$, $\sqrt{3}x - y + 1 \geqq 0$ を満たす。 各辺への垂線の長さ $x_1, x_2, x_3$ は、点と直線の距離の公式より次のように表される。
$$x_1 = |y| = y$$
$$x_2 = \frac{|\sqrt{3}x + y - 1|}{\sqrt{(\sqrt{3})^2 + 1^2}} = \frac{-\sqrt{3}x - y + 1}{2}$$
$$x_3 = \frac{|\sqrt{3}x - y + 1|}{\sqrt{(\sqrt{3})^2 + (-1)^2}} = \frac{\sqrt{3}x - y + 1}{2}$$
これらを足し合わせると、以下のようになる。
$$x_1 + x_2 + x_3 = y + \frac{-\sqrt{3}x - y + 1}{2} + \frac{\sqrt{3}x - y + 1}{2} = y + \frac{-2y + 2}{2} = 1$$
よって、$x_1 + x_2 + x_3 = 1$ である。
(2)
(1) で求めた座標による表現を、条件 $x_2 + 2x_3 = 1$ に代入する。
$$\frac{-\sqrt{3}x - y + 1}{2} + 2 \cdot \frac{\sqrt{3}x - y + 1}{2} = 1$$
$$\frac{-\sqrt{3}x - y + 1}{2} + (\sqrt{3}x - y + 1) = 1$$
両辺を2倍して整理する。
$$-\sqrt{3}x - y + 1 + 2\sqrt{3}x - 2y + 2 = 2$$
$$\sqrt{3}x - 3y + 1 = 0$$
$$y = \frac{1}{\sqrt{3}}x + \frac{1}{3}$$
この直線は、点 $B\left(-\frac{1}{\sqrt{3}}, 0\right)$ を通る。 また、直線 $CA$ ($y = -\sqrt{3}x + 1$) との交点を求めると以下のようになる。
$$\frac{1}{\sqrt{3}}x + \frac{1}{3} = -\sqrt{3}x + 1$$
$$\frac{4}{\sqrt{3}}x = \frac{2}{3} \iff x = \frac{1}{2\sqrt{3}}$$
このとき $y = \frac{1}{2}$ となり、交点 $\left(\frac{1}{2\sqrt{3}}, \frac{1}{2}\right)$ は頂点 $A$ と頂点 $C$ の中点である。 よって、求める軌跡は頂点 $B$ と辺 $AC$ の中点を結ぶ線分である。
(3)
3つの不等式を $x, y$ の不等式に変換する。
1つ目の不等式 $x_2 + 2x_3 \leqq 1$ は、(2) と同様の計算から以下のようになる。
$$y \geqq \frac{1}{\sqrt{3}}x + \frac{1}{3}$$
2つ目の不等式 $x_3 + 2x_1 \geqq 1$ を計算する。
$$\frac{\sqrt{3}x - y + 1}{2} + 2y \geqq 1$$
$$\sqrt{3}x + 3y + 1 \geqq 2$$
$$y \geqq -\frac{1}{\sqrt{3}}x + \frac{1}{3}$$
3つ目の不等式 $3x_1 + x_2 + x_3 \leqq 2$ を計算する。
$$3y + \frac{-\sqrt{3}x - y + 1}{2} + \frac{\sqrt{3}x - y + 1}{2} \leqq 2$$
$$3y + \frac{-2y + 2}{2} \leqq 2$$
$$2y + 1 \leqq 2$$
$$y \leqq \frac{1}{2}$$
点 $P$ の存在する範囲は、これら3つの不等式が表す連立不等式の領域である。 境界となる3つの直線を以下のように置く。
$l_1: y = \frac{1}{\sqrt{3}}x + \frac{1}{3}$ $l_2: y = -\frac{1}{\sqrt{3}}x + \frac{1}{3}$ $l_3: y = \frac{1}{2}$
これらの交点を求める。
- $l_1$ と $l_2$ の交点は $\left(0, \frac{1}{3}\right)$ であり、これは $\triangle ABC$ の重心である。
- $l_1$ と $l_3$ の交点は $x = \frac{1}{2\sqrt{3}}$ より $\left(\frac{1}{2\sqrt{3}}, \frac{1}{2}\right)$ であり、これは辺 $AC$ の中点である。
- $l_2$ と $l_3$ の交点は $x = -\frac{1}{2\sqrt{3}}$ より $\left(-\frac{1}{2\sqrt{3}}, \frac{1}{2}\right)$ であり、これは辺 $AB$ の中点である。
よって、求める領域は、重心と辺 $AB, AC$ のそれぞれの中点を結んでできる三角形の内部および周上となる。
解説
- (1) で証明した $x_1+x_2+x_3=1$ (一定)は「ヴィヴィアーニの定理 (Viviani's theorem)」として知られる有名な性質である。面積を用いて容易に示せるため、図形的アプローチの第一歩として自力で導けるようにしておきたい。
- 本問は、幾何(面積や角の二等分線)による解法と、座標設定による代数的な解法の2通りが考えられる典型問題である。
- 幾何的に解く場合(解法1)は、(1) の等式を用いて条件式を2変数のシンプルな形に帰着させ、「2辺からの距離の大小関係が角の二等分線を境界とする」という性質を利用すると見通しが良い。
- 座標を用いる解法(解法2)は、少し計算量は増えるが、視覚的な直感に頼らずに正確に領域を特定できるため確実性が高い。図形問題において、適切な座標軸を設定して代数的に処理する手法は非常に強力である。
答え
(1) $1$
(2) 頂点 $B$ と辺 $AC$ の中点を結ぶ線分上。
(3) $\triangle ABC$ の重心と、辺 $AB, AC$ のそれぞれの中点の3点を頂点とする三角形の内部および周。
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