大阪大学 1985年 文系 第4問 解説

方針・初手
(1) は、2点を通る直線の方程式を立て、原点との距離を「点と直線の距離の公式」を用いて求める。 (2) は、円の中での光の反射の性質を幾何的に捉える。入射角と反射角が等しいことから、反射を繰り返す光の軌跡を含む直線と原点との距離は常に一定($d$)に保たれる。これを利用し、光が進むにつれて円周上の反射点がどれだけ回転するか(偏角の推移)を定式化する。
解法1
(1)
点 $P_0(x_0, y_0)$ と点 $P_1(x_1, y_1)$ を通る直線の方程式は、
$$ (y_1 - y_0)(x - x_0) - (x_1 - x_0)(y - y_0) = 0 $$
これを展開して整理すると、
$$ (y_1 - y_0)x - (x_1 - x_0)y - x_0 y_1 + x_1 y_0 = 0 $$
となる。原点 $O(0, 0)$ とこの直線の距離 $d$ は、点と直線の距離の公式により、
$$ d = \frac{|-x_0 y_1 + x_1 y_0|}{\sqrt{(y_1 - y_0)^2 + \{-(x_1 - x_0)\}^2}} = \frac{|x_1 y_0 - x_0 y_1|}{\sqrt{(x_1 - x_0)^2 + (y_1 - y_0)^2}} $$
(2)
直線 $P_0 P_1$ と円 $C$ の交点のうち、ベクトル $\overrightarrow{P_0 P_1}$ の向きに対して後方にあるものを $A_0$、前方にあるものを $A_1$ とする。 最初の光は、有向線分 $\overrightarrow{A_0 A_1}$ 上を進む。以降の反射点を順に $A_1, A_2, A_3, \dots$ とし、光は有向線分列 $\overrightarrow{A_k A_{k+1}}$ ($k = 0, 1, 2, \dots$) の上を進むとする。 原点 $O$ から直線 $A_k A_{k+1}$ に下ろした垂線の長さを $d_k$ とする。定義より $d_0 = d$ である。
点 $A_k$ ($k \ge 1$) における反射を考える。 $\triangle O A_{k-1} A_k$ と $\triangle O A_k A_{k+1}$ は、ともに半径を斜辺とする二等辺三角形である。 反射の法則により、点 $A_k$ における入射角と反射角は等しい。すなわち、法線 $O A_k$ と入射光線 $A_{k-1} A_k$ のなす角と、法線 $O A_k$ と反射光線 $A_k A_{k+1}$ のなす角は等しい。これを $\alpha_k$ とおく。
直角三角形に着目すると、原点 $O$ から直線 $A_{k-1} A_k$ までの距離は $1 \cdot \sin\alpha_k$ であり、直線 $A_k A_{k+1}$ までの距離も $1 \cdot \sin\alpha_k$ である。 したがって、$d_{k-1} = d_k$ が成り立ち、すべての $k \ge 0$ について $d_k = d$ となる。すなわち、光の軌跡を含む直線は常に原点から距離 $d$ を保つ。
また、すべての弦 $A_k A_{k+1}$ の長さは一定であり、これが円の中心 $O$ に対して張る中心角を $2\varphi$ ($0 < \varphi \le \frac{\pi}{2}$) とおく。 原点 $O$ から弦 $A_k A_{k+1}$ に下ろした垂線の足を $H$ とすると、$\triangle O A_{k+1} H$ は $\angle O H A_{k+1} = 90^\circ$ の直角三角形であり、$O A_{k+1} = 1, OH = d, \angle A_{k+1} O H = \varphi$ であるから、
$$ d = \cos\varphi $$
が成り立つ。 光の軌跡は原点を中心とする半径 $d$ の同心円に常に接しながら進み、反射によって回転の向きが変わることはないため、点列 $A_k$ は円 $C$ の周上を同じ向きに中心角 $2\varphi$ ずつ進む。 点 $A_k$ の極座標での偏角を $\theta_k$ とすると、次のように表せる。
$$ \theta_k = \theta_0 + 2k\varphi $$
光がある時間後にふたたび線分 $P_0 P_1$ 上を点 $P_0$ から点 $P_1$ の向きに進むための条件は、ある正の整数 $n$ が存在して、有向線分 $\overrightarrow{A_n A_{n+1}}$ が最初の有向線分 $\overrightarrow{A_0 A_1}$ と一致することである。 これは、始点と終点がそれぞれ一致すること、すなわち $A_n = A_0$ かつ $A_{n+1} = A_1$ であることと同値である。
$A_n = A_0$ となる条件は、偏角の差が $2\pi$ の整数倍になることであるから、ある整数 $m$ が存在して、
$$ \theta_n - \theta_0 = 2n\varphi = 2m\pi $$
$$ \varphi = \frac{m}{n}\pi $$
が成り立つことである。このとき、$A_{n+1}$ の偏角は $\theta_{n+1} = \theta_n + 2\varphi \equiv \theta_0 + 2\varphi = \theta_1 \pmod{2\pi}$ となり、$A_{n+1} = A_1$ も自動的に満たされる。 したがって、求める必要十分条件は $\varphi = q\pi$ となる有理数 $q$ が存在することである。
$d = \cos\varphi$ であるから、$\varphi = q\pi$ ($q$ は有理数) のとき、
$$ d = \cos(q\pi) $$
となる。 逆に、$d = \cos(q\pi)$ を満たす有理数 $q$ が存在するとき、$\cos\varphi = \cos(q\pi)$ より、ある整数 $l$ を用いて $\varphi = \pm q\pi + 2l\pi = (\pm q + 2l)\pi$ と表せる。 $q$ が有理数であるから $\pm q + 2l$ も有理数であり、これを $\frac{M}{N}$ ($M, N$ は整数、$N > 0$) とおけば、$\varphi = \frac{M}{N}\pi$ となる。 このとき、反射回数を $n = N$ 回とすれば、$2N\varphi = 2M\pi$ となり、偏角の変化が $2\pi$ の整数倍となるため $A_N = A_0$ かつ $A_{N+1} = A_1$ が成り立ち、条件を満たす。
以上より、光がふたたび元の線分上を同じ向きに進むための必要十分条件は、ある有理数 $q$ が存在して $d = \cos(q\pi)$ を満たすことであると示された。
解説
円の中での光の反射は、入試において典型的なテーマの1つである。「中心からの距離が保存される」という性質を見抜けるかが最大のポイントとなる。 円の対称性と反射の法則から、軌跡の直線群はすべて同心円に接する性質を持つ。これにより、反射のたびに進む中心角が一定であることが保証される。 あとは円周上の点の回転という離散的な漸化モデルに帰着させ、「有理数 $\times \pi$ の回転角を持てばいつかは元の位置に戻る」という周期性の議論に持ち込めばよい。必要十分条件の証明であるため、「条件が成り立つと仮定したとき」と「逆にその式が成り立つとき」の双方向の論理を崩さずに記述することが求められる。
答え
(1)
$$ d = \frac{|x_1 y_0 - x_0 y_1|}{\sqrt{(x_1 - x_0)^2 + (y_1 - y_0)^2}} $$
(2)
解法1の通り証明された。
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