北海道大学 1980年 理系 第5問 解説

方針・初手
2つのさいころを同時に投げて同じ目(ゾロ目)が出る確率を求め、さいころを投げる回数ごとの確率を立式する。 投げる回数を確率変数 $X$ としたとき、$n$ 回より前に終了する場合と、上限である $n$ 回まで到達する場合とで条件が異なることに注意して期待値 $E_n$ の定義式を書き下す。
解法1
1回の試行で2つのさいころを同時に投げて同じ目が出る確率は、$(1, 1)$ から $(6, 6)$ までの6通りあるので、 $$p = \frac{6}{36} = \frac{1}{6}$$
である。また、同じ目が出ない確率は、 $$q = 1 - p = \frac{5}{6}$$
である。さいころを投げる回数を表す確率変数を $X$ とする。$X$ のとりうる値は $1, 2, \dots, n$ であり、各値をとる確率 $P(X=k)$ を求める。
(i) $1 \le k \le n-1$ のとき
$X=k$ となるのは、$k-1$ 回目まで同じ目が出ず、$k$ 回目に初めて同じ目が出る場合であるから、 $$P(X=k) = q^{k-1}p$$
(ii) $k = n$ のとき
$X=n$ となるのは、(イ)が起こる前に(ロ)の条件を満たす場合、すなわち $n-1$ 回目まで同じ目が出ない場合である。$n$ 回目に同じ目が出るか否かは問わないため、 $$P(X=n) = q^{n-1}$$
したがって、投げる回数の期待値 $E_n$ は次のように立式できる。 $$E_n = \sum_{k=1}^{n-1} k P(X=k) + n P(X=n)$$
$$E_n = \sum_{k=1}^{n-1} k q^{k-1} p + n q^{n-1}$$
ここで、$S = \sum_{k=1}^{n-1} k q^{k-1}$ とおき、等差数列と等比数列の積の和を求める。 $$S = 1 + 2q + 3q^2 + \dots + (n-1)q^{n-2}$$
両辺に $q$ を掛けると、 $$qS = q + 2q^2 + \dots + (n-2)q^{n-2} + (n-1)q^{n-1}$$
辺々引くと、 $$(1-q)S = 1 + q + q^2 + \dots + q^{n-2} - (n-1)q^{n-1}$$
$1-q = p$ であるから、 $$pS = \frac{1-q^{n-1}}{1-q} - (n-1)q^{n-1} = \frac{1-q^{n-1}}{p} - (n-1)q^{n-1}$$
これを $E_n$ の式に代入すると、 $$E_n = pS + n q^{n-1}$$
$$E_n = \left\{ \frac{1-q^{n-1}}{p} - (n-1)q^{n-1} \right\} + n q^{n-1}$$
$$E_n = \frac{1-q^{n-1}}{p} + q^{n-1}$$
$p = \frac{1}{6}, q = \frac{5}{6}$ を代入すると、 $$E_n = 6 \left\{ 1 - \left(\frac{5}{6}\right)^{n-1} \right\} + \left(\frac{5}{6}\right)^{n-1}$$
$$E_n = 6 - 5 \left(\frac{5}{6}\right)^{n-1}$$
$$E_n = 6 - 6 \left(\frac{5}{6}\right)^n$$
次に、$E = \lim_{n \to \infty} E_n$ を求める。$\lim_{n \to \infty} \left(\frac{5}{6}\right)^n = 0$ であるから、 $$E = \lim_{n \to \infty} \left\{ 6 - 6 \left(\frac{5}{6}\right)^n \right\} = 6$$
解法2
最初の1回目の試行の結果に着目して、期待値 $E_n$ の漸化式を立てる。
$n \ge 2$ のとき、最初の試行で同じ目が出た場合(確率 $\frac{1}{6}$)、投げる回数は1回で終了する。 最初の試行で同じ目が出なかった場合(確率 $\frac{5}{6}$)、あと最大 $n-1$ 回投げる試行が残っているため、トータルで投げる回数の期待値は $1 + E_{n-1}$ 回となる。
したがって、$E_n$ は以下の漸化式を満たす。 $$E_n = \frac{1}{6} \cdot 1 + \frac{5}{6} \cdot (1 + E_{n-1})$$
$$E_n = \frac{5}{6} E_{n-1} + 1$$
この漸化式を変形すると、 $$E_n - 6 = \frac{5}{6} (E_{n-1} - 6)$$
ここで、$n=1$ のときは、1回投げて終了するため $E_1 = 1$ である。 数列 $\{E_n - 6\}$ は初項 $E_1 - 6 = 1 - 6 = -5$、公比 $\frac{5}{6}$ の等比数列であるから、 $$E_n - 6 = -5 \left(\frac{5}{6}\right)^{n-1}$$
$$E_n = 6 - 5 \left(\frac{5}{6}\right)^{n-1} = 6 - 6 \left(\frac{5}{6}\right)^n$$
これ以降の極限の計算は解法1と同様であり、$E = 6$ となる。
解説
最大 $n$ 回で打ち切られる反復試行(幾何分布)の期待値を求める問題である。 解法1のように定義に従って和を計算するのが標準的だが、最後の $n$ 回目だけ終了条件が異なるため、$n-1$ 回目までと $n$ 回目で場合分けして確率を正確に立式する必要がある。 解法2のように、初回の結果で場合分けして期待値の漸化式を立てる手法(状態遷移に着目した手法)は、煩雑な等比数列の和の計算を回避でき、計算ミスを減らすことができるため非常に有効である。
答え
$$E_n = 6 - 6 \left(\frac{5}{6}\right)^n$$
$$E = 6$$
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