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大阪大学 2011年 理系 第5問 解説

数学A/確率数学B/数列数学B/確率分布・統計的推測テーマ/漸化式テーマ/確率漸化式
大阪大学 2011年 理系 第5問 解説

方針・初手

与えられた漸化式の両辺の期待値をとることから始める。期待値の線形性 $E[X+Y] = E[X]+E[Y]$ を用いる。 このとき、右辺に現れる $E[r_n(a_n - a_{n-1})]$ の処理が最大のポイントとなる。$a_n$ と $a_{n-1}$ の値は $n-1$ 回目までのコイントスの結果によってすでに確定しているため、$n$ 回目のコイントスで決まる $r_n$ とは独立である。したがって、$E[r_n(a_n - a_{n-1})] = E[r_n]E[a_n - a_{n-1}]$ と分解できることに着目する。

解法1

$a_n$ の期待値 $p_n$ を求めるために、与えられた漸化式

$$ a_{n+1} - a_n = r_n(a_n - a_{n-1}) $$

の両辺の期待値をとる。

コインの表裏が出る確率はともに $\frac{1}{2}$ であるから、$r_n$ の期待値 $E[r_n]$ は

$$ E[r_n] = \frac{1}{2} \cdot \frac{r}{2} + \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2r} = \frac{r^2+1}{4r} $$

ここで、$a_n$ と $a_{n-1}$ は $n-1$ 回目までのコイントスの結果によって定まる確率変数である。したがって、$n$ 回目のコイントスの結果によって決まる確率変数 $r_n$ とは独立である。 独立な確率変数の積の期待値はそれぞれの期待値の積に等しいため、

$$ E[r_n(a_n - a_{n-1})] = E[r_n]E[a_n - a_{n-1}] $$

が成り立つ。

期待値の線形性より $p_n = E[a_n]$ を用いると、漸化式は次のように変形できる。

$$ p_{n+1} - p_n = \frac{r^2+1}{4r} (p_n - p_{n-1}) \quad (n \geqq 2) $$

表記を簡略化するため、$R = \frac{r^2+1}{4r}$ とおく。 初期条件は、$p_1 = E[a_1] = 0$、$p_2 = E[a_2] = r$ である。

(1)

$p_2 - p_1 = r - 0 = r$ であるから、漸化式より

$$ p_3 - p_2 = R(p_2 - p_1) = rR = r \cdot \frac{r^2+1}{4r} = \frac{r^2+1}{4} $$

よって、$p_3$ は

$$ p_3 = p_2 + \frac{r^2+1}{4} = r + \frac{r^2+1}{4} = \frac{r^2+4r+1}{4} $$

同様にして、

$$ p_4 - p_3 = R(p_3 - p_2) = R \cdot rR = rR^2 $$

よって、$p_4$ は

$$ p_4 = p_3 + rR^2 = \frac{r^2+4r+1}{4} + r \left( \frac{r^2+1}{4r} \right)^2 = \frac{r^2+4r+1}{4} + \frac{r^4+2r^2+1}{16r} = \frac{4r(r^2+4r+1) + r^4+2r^2+1}{16r} = \frac{r^4+4r^3+18r^2+4r+1}{16r} $$

(2)

数列 $\{p_n\}$ の階差数列 $p_{n+1} - p_n$ は、初項 $p_2 - p_1 = r$、公比 $R = \frac{r^2+1}{4r}$ の等比数列である。 したがって、$n \geqq 2$ に対して

$$ p_n - p_{n-1} = r R^{n-2} $$

が成り立つ。

$n \geqq 3$ のとき、$p_n$ は階差数列の和を用いて次のように表せる。

$$ p_n = p_1 + \sum_{k=1}^{n-1} (p_{k+1} - p_k) = 0 + \sum_{k=1}^{n-1} r R^{k-1} $$

ここで、$R = 1$ となる条件を調べる。

$$ \frac{r^2+1}{4r} = 1 \iff r^2-4r+1 = 0 $$

これを解いて $r = 2 \pm \sqrt{3}$ であるから、公比 $R$ が $1$ になるか否かで場合分けを行う。

(i)

$r = 2 \pm \sqrt{3}$(すなわち $R=1$)のとき

$$ p_n = \sum_{k=1}^{n-1} r = (n-1)r $$

(ii)

$r \neq 2 \pm \sqrt{3}$(すなわち $R \neq 1$)のとき

$$ p_n = \frac{r(1 - R^{n-1})}{1 - R} = \frac{r \left\{ 1 - \left( \frac{r^2+1}{4r} \right)^{n-1} \right\}}{1 - \frac{r^2+1}{4r}} = \frac{4r^2}{-(r^2-4r+1)} \left\{ 1 - \left( \frac{r^2+1}{4r} \right)^{n-1} \right\} $$

(3)

数列 $\{p_n\}$ が収束する条件を考える。

(i)

$r = 2 \pm \sqrt{3}$ のとき、$p_n = (n-1)r$ であり、問題文より $r>0$ であるから、$n \to \infty$ のとき $p_n \to \infty$ となり発散する。

(ii)

$r \neq 2 \pm \sqrt{3}$ のとき、$p_n$ が収束するための必要十分条件は、公比 $R$ について $-1 < R < 1$ が成り立つことである。 $r>0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係より

$$ R = \frac{r^2+1}{4r} = \frac{1}{4}\left(r + \frac{1}{r}\right) \geqq \frac{1}{4} \cdot 2\sqrt{r \cdot \frac{1}{r}} = \frac{1}{2} $$

が成り立つ。よって $R > -1$ は常に満たされる。

したがって、収束するための条件は $R < 1$ である。

$$ \frac{r^2+1}{4r} < 1 $$

$r>0$ より、両辺に $4r$ を掛けて整理する。

$$ r^2 - 4r + 1 < 0 $$

これを解いて、求める範囲は

$$ 2 - \sqrt{3} < r < 2 + \sqrt{3} $$

この範囲には $r = 2 \pm \sqrt{3}$ は含まれないため、場合分け(ii)の条件も満たしている。

(4)

(3) で求めた $2 - \sqrt{3} < r < 2 + \sqrt{3}$ の範囲では $0 < R < 1$ であるから、$\lim_{n \to \infty} R^{n-1} = 0$ となる。 したがって、求める極限値 $\lim_{n \to \infty} p_n$ を $L(r)$ とすると、(2) の結果より

$$ L(r) = \frac{4r^2}{-r^2+4r-1} $$

この最小値を求める。分母と分子を $r^2$ ($>0$) で割ると

$$ L(r) = \frac{4}{-1 + \frac{4}{r} - \frac{1}{r^2}} $$

ここで $x = \frac{1}{r}$ とおく。 $2-\sqrt{3} = \frac{1}{2+\sqrt{3}}$、$2+\sqrt{3} = \frac{1}{2-\sqrt{3}}$ であるから、$x$ の取りうる範囲は

$$ 2-\sqrt{3} < x < 2+\sqrt{3} $$

となる。

分母の関数を $g(x) = -x^2 + 4x - 1$ とおき、平方完成する。

$$ g(x) = -(x-2)^2 + 3 $$

$x=2$ は $2-\sqrt{3} < x < 2+\sqrt{3}$ に含まれるので、$g(x)$ は $x=2$ のとき最大値 $3$ をとる。 $L(r) = \frac{4}{g(x)}$ であり、この範囲で $g(x) > 0$ であるから、$g(x)$ が最大となるとき $L(r)$ は最小となる。 よって、極限値の最小値は $\frac{4}{3}$ である。

解説

確率変数を含む漸化式(確率漸化式)において、両辺の期待値をとることで期待値の漸化式に帰着させるのが定石である。本問では「現在と直前の状態」と「新しく振ったコインの結果」が独立であることを正確に式で表現できるかが最初の関門となる。 また、(4) における分数関数の最大最小問題では、商の微分法を用いて増減表を書いてもよいが、分母分子を $r^2$ で割り $1/r$ を置換することで、シンプルな2次関数の最大値問題に帰着させることができる。この変形は対称式や逆数を含む分数関数において非常に有効な手段である。

答え

(1)

$p_3 = \frac{r^2+4r+1}{4}$, $p_4 = \frac{r^4+4r^3+18r^2+4r+1}{16r}$

(2)

$r = 2 \pm \sqrt{3}$ のとき $p_n = (n-1)r$, $r \neq 2 \pm \sqrt{3}$ のとき $p_n = \frac{4r^2}{-(r^2-4r+1)} \left\{ 1 - \left( \frac{r^2+1}{4r} \right)^{n-1} \right\}$

(3)

$2 - \sqrt{3} < r < 2 + \sqrt{3}$

(4)

$\frac{4}{3}$

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