北海道大学 1992年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) 放物線の接線の方程式を文字 $a$ を用いて表し、それが「$a$ の値によらない定直線」となるような接点の座標を恒等式の考え方を利用して求める。
(2) 点 $P$ の $x$ 座標を $t$ とおき、接線の方程式を立てて直線 $l$ との交点 $Q$ の座標を計算する。ベクトルのなす角は、それぞれの方向ベクトルの傾きから角度を考えるか、内積を利用して処理する。面積は積分を用いて立式し、$a$ と $t$ に関する連立方程式に帰着させる。
解法1
(1) 放物線の方程式を $y = ax^2 - \sqrt{3}x$ とする。 この放物線上の点 $A$ の $x$ 座標を $p$ とすると、$y$ 座標は $ap^2 - \sqrt{3}p$ である。 $y' = 2ax - \sqrt{3}$ より、点 $A$ における接線の方程式は、
$$y - (ap^2 - \sqrt{3}p) = (2ap - \sqrt{3})(x - p)$$
整理すると、
$$y = (2ap - \sqrt{3})x - ap^2$$
この直線が $a > 0$ の値によらない定直線 $l$ となるための条件は、$x$ の係数と定数項がともに $a$ に依存しないことである。 すなわち、$2p = 0$ かつ $-p^2 = 0$ が成り立つ必要があり、これを満たすのは $p = 0$ のときである。
$p = 0$ を代入すると、接点 $A$ の座標は $(0, 0)$ となり定点となる。 また、このときの接線の方程式は $y = -\sqrt{3}x$ となり、これも定直線となる。 したがって、点 $A$ は原点 $(0, 0)$ であり、直線 $l$ の方程式は $y = -\sqrt{3}x$ である。
(2) 点 $P$ の $x$ 座標を $t$ ($t \neq 0$) とする。 (1) の計算結果から、点 $P$ における接線の方程式は $y = (2at - \sqrt{3})x - at^2$ である。 直線 $l$ とこの接線の交点 $Q$ の $x$ 座標は、次の方程式を満たす。
$$-\sqrt{3}x = (2at - \sqrt{3})x - at^2$$
$$2atx = at^2$$
$a > 0$ かつ $t \neq 0$ であるから、$x = \frac{t}{2}$ を得る。 直線 $l$ 上の点であることから、$Q$ の座標は $\left(\frac{t}{2}, -\frac{\sqrt{3}}{2}t\right)$ となる。
次に、ベクトル $\overrightarrow{AQ}$ と $\overrightarrow{QP}$ を成分表示する。 $A(0,0)$、$Q\left(\frac{t}{2}, -\frac{\sqrt{3}}{2}t\right)$、$P(t, at^2 - \sqrt{3}t)$ より、
$$\overrightarrow{AQ} = \left(\frac{t}{2}, -\frac{\sqrt{3}}{2}t\right) = \frac{t}{2}(1, -\sqrt{3})$$
$$\overrightarrow{QP} = P - Q = \left(t - \frac{t}{2}, at^2 - \sqrt{3}t - \left(-\frac{\sqrt{3}}{2}t\right)\right) = \left(\frac{t}{2}, at^2 - \frac{\sqrt{3}}{2}t\right) = \frac{t}{2}(1, 2at - \sqrt{3})$$
ここで、方向ベクトルを $\vec{u} = (1, -\sqrt{3})$、$\vec{v} = (1, 2at - \sqrt{3})$ とおく。 $t$ の符号に関わらず、$\overrightarrow{AQ}$ と $\overrightarrow{QP}$ はそれぞれ $\vec{u}$ と $\vec{v}$ に対して同じ向き(またはともに逆向き)のスカラー倍となるため、$\overrightarrow{AQ}$ と $\overrightarrow{QP}$ のなす角は $\vec{u}$ と $\vec{v}$ のなす角に等しい。
$\vec{u}$ と $\vec{v}$ が $x$ 軸の正の向きとなす角をそれぞれ $\alpha, \beta$ ($-90^\circ < \alpha, \beta < 90^\circ$)とする。 $\tan \alpha = -\sqrt{3}$ より $\alpha = -60^\circ$ である。 また、$\tan \beta = 2at - \sqrt{3}$ である。 なす角が $30^\circ$ であるから、$|\beta - \alpha| = 30^\circ$ となる。 したがって、$\beta = -60^\circ \pm 30^\circ$ より $\beta = -30^\circ$ または $\beta = -90^\circ$ である。 $\beta = -90^\circ$ のとき $\tan \beta$ は定義されないため不適。 ゆえに $\beta = -30^\circ$ となり、
$$2at - \sqrt{3} = \tan(-30^\circ) = -\frac{1}{\sqrt{3}}$$
$$2at = \sqrt{3} - \frac{1}{\sqrt{3}} = \frac{2}{\sqrt{3}}$$
$$at = \frac{1}{\sqrt{3}}$$
$a > 0$ であるから、この結果より $t > 0$ であることがわかる。
続いて、放物線と2つの線分 $AQ, PQ$ で囲まれる部分の面積 $S$ を求める。 $t > 0$ であるから、積分区間を $0 \le x \le \frac{t}{2}$ と $\frac{t}{2} \le x \le t$ に分けて計算する。
$$S = \int_{0}^{\frac{t}{2}} \{ (ax^2 - \sqrt{3}x) - (-\sqrt{3}x) \} dx + \int_{\frac{t}{2}}^{t} [ (ax^2 - \sqrt{3}x) - \{ (2at - \sqrt{3})x - at^2 \} ] dx$$
$$S = \int_{0}^{\frac{t}{2}} ax^2 dx + \int_{\frac{t}{2}}^{t} a(x - t)^2 dx$$
$$S = \left[ \frac{a}{3}x^3 \right]_{0}^{\frac{t}{2}} + \left[ \frac{a}{3}(x - t)^3 \right]_{\frac{t}{2}}^{t}$$
$$S = \frac{a}{3} \left( \frac{t}{2} \right)^3 + \frac{a}{3} \left\{ 0 - \left( -\frac{t}{2} \right)^3 \right\}$$
$$S = \frac{at^3}{24} + \frac{at^3}{24} = \frac{at^3}{12}$$
条件より $S = \sqrt{3}$ であるから、
$$\frac{at^3}{12} = \sqrt{3}$$
$$at^3 = 12\sqrt{3}$$
先ほど求めた $at = \frac{1}{\sqrt{3}}$ より $t = \frac{1}{\sqrt{3}a}$ である。これを代入して、
$$a \left( \frac{1}{\sqrt{3}a} \right)^3 = 12\sqrt{3}$$
$$\frac{1}{3\sqrt{3}a^2} = 12\sqrt{3}$$
$$a^2 = \frac{1}{3\sqrt{3} \cdot 12\sqrt{3}} = \frac{1}{108}$$
$a > 0$ より、
$$a = \frac{1}{\sqrt{108}} = \frac{1}{6\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}}{18}$$
解法2
(2)の前半において、ベクトルのなす角の処理を内積を用いて行う別解を示す。
方向ベクトル $\vec{u} = (1, -\sqrt{3})$、$\vec{v} = (1, 2at - \sqrt{3})$ について、なす角が $30^\circ$ であるから、内積の定義 $\vec{u} \cdot \vec{v} = |\vec{u}| |\vec{v}| \cos 30^\circ$ より、
$$1 \cdot 1 + (-\sqrt{3})(2at - \sqrt{3}) = \sqrt{1^2 + (-\sqrt{3})^2} \sqrt{1^2 + (2at - \sqrt{3})^2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}$$
$$4 - 2\sqrt{3}at = 2 \sqrt{1 + (2at - \sqrt{3})^2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}$$
$$4 - 2\sqrt{3}at = \sqrt{3(4a^2t^2 - 4\sqrt{3}at + 4)}$$
両辺を $2$ で割って、
$$2 - \sqrt{3}at = \sqrt{3(a^2t^2 - \sqrt{3}at + 1)}$$
右辺は正であるから左辺も正である。したがって $2 - \sqrt{3}at > 0$ すなわち $at < \frac{2}{\sqrt{3}}$ が必要である。この条件のもとで両辺を2乗すると、
$$4 - 4\sqrt{3}at + 3a^2t^2 = 3(a^2t^2 - \sqrt{3}at + 1)$$
$$4 - 4\sqrt{3}at = -3\sqrt{3}at + 3$$
$$\sqrt{3}at = 1$$
$$at = \frac{1}{\sqrt{3}}$$
これは $at < \frac{2}{\sqrt{3}}$ を満たす。以降は解法1と同様に面積を計算して $a$ を求める。
解説
(1) は「すべての放物線に接する」という条件を、数式上では「$a$ についての恒等式」として読み替える典型的なアプローチが有効である。
(2) では、接線の交点 $Q$ の $x$ 座標が接点 $A, P$ の $x$ 座標の中点になる性質を活用することで、計算量を抑えることができる。また、ベクトルのなす角の条件は、解法2のように内積から計算することも可能だが、解法1のようにベクトルの成分を直線の傾きと結びつけ、有名角の三角比を活用する方が計算の見通しが良くなり、2乗による同値性の崩れ(無縁解の混入)を気にする必要がない。放物線の2接線と放物線で囲まれた面積の計算は、$(x-\alpha)^2$ の形を作って積分する定石に従うとスムーズである。
答え
(1) $A(0, 0)$, $l: y = -\sqrt{3}x$
(2) $a = \frac{\sqrt{3}}{18}$
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