北海道大学 2000年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) 境界となる2つの関数のグラフの交点を求め、不等式の表す領域を特定する。 (2) 点 $\text{A}$ を通る接線を求めて点 $\text{B}$ の座標を決定し、底辺 $\text{AB}$ を固定したときの三角形の高さ(点 $\text{P}$ と直線 $\text{AB}$ の距離)が最大となる条件を考える。 (3) 与式を「点 $\text{A}$ と点 $(x, y)$ を通る直線の傾き」と幾何学的に解釈するか、(2) で得られた不等式を利用して代数的に範囲を求める。
解法1
(1)
不等式 $|x| \leqq y \leqq -\frac{1}{2}x^2 + 3$ の表す領域 $D$ を求める。 境界線 $y = |x|$ と $y = -\frac{1}{2}x^2 + 3$ の交点を求める。
(i) $x \geqq 0$ のとき
$x = -\frac{1}{2}x^2 + 3$ を整理すると、
$$ x^2 + 2x - 6 = 0 $$
$x \geqq 0$ を満たす解は $x = -1 + \sqrt{7}$ であり、交点は $(-1 + \sqrt{7}, -1 + \sqrt{7})$ である。
(ii) $x < 0$ のとき
$-x = -\frac{1}{2}x^2 + 3$ を整理すると、
$$ x^2 - 2x - 6 = 0 $$
$x < 0$ を満たす解は $x = 1 - \sqrt{7}$ であり、交点は $(1 - \sqrt{7}, \sqrt{7} - 1)$ である。
領域 $D$ は、上に凸の放物線 $y = -\frac{1}{2}x^2 + 3$ と原点を頂点とする $V$ 字型の折れ線 $y = |x|$ で囲まれた領域であり、境界線を含む。
(2)
点 $\text{A} \left(-\frac{7}{2}, 0\right)$ を通る直線 $\text{AB}$ の方程式を $y = m\left(x + \frac{7}{2}\right)$ とおく。 これが $y = -\frac{1}{2}x^2 + 3$ に接するための条件は、二次方程式
$$ -\frac{1}{2}x^2 + 3 = m\left(x + \frac{7}{2}\right) $$
すなわち
$$ x^2 + 2mx + 7m - 6 = 0 $$
が重解をもつことである。判別式を $\frac{D}{4}$ とすると、
$$ \frac{D}{4} = m^2 - (7m - 6) = (m - 1)(m - 6) = 0 $$
よって $m = 1, 6$ である。接点の $x$ 座標は重解 $x = -m$ として求まる。
$m=1$ のとき、接点の $x$ 座標は $x = -1$ となり、接点は $\left(-1, \frac{5}{2}\right)$ である。 $m=6$ のとき、接点の $x$ 座標は $x = -6$ となり、接点は $(-6, -15)$ である。
点 $\text{B}$ は領域 $D$ に含まれる必要があり、領域 $D$ の $x$ 座標の範囲 $1 - \sqrt{7} \leqq x \leqq -1 + \sqrt{7}$ (ここで $1 - \sqrt{7} \approx -1.64$)より、$x = -6$ は不適である。 よって $m = 1$ であり、点 $\text{B}$ の座標は $\left(-1, \frac{5}{2}\right)$ となる。
直線 $\text{AB}$ の方程式は $y = x + \frac{7}{2}$ すなわち $x - y + \frac{7}{2} = 0$ である。 線分 $\text{AB}$ の長さは、
$$ \text{AB} = \sqrt{\left(-1 - \left(-\frac{7}{2}\right)\right)^2 + \left(\frac{5}{2} - 0\right)^2} = \sqrt{\frac{25}{4} + \frac{25}{4}} = \frac{5\sqrt{2}}{2} $$
三角形 $\text{ABP}$ の面積が最大となるのは、領域 $D$ 内の点 $\text{P}(X, Y)$ と直線 $\text{AB}$ の距離 $d$ が最大となるときである。 距離 $d$ は点と直線の距離の公式より、
$$ d = \frac{\left| X - Y + \frac{7}{2} \right|}{\sqrt{1^2 + (-1)^2}} = \frac{\left| X - Y + \frac{7}{2} \right|}{\sqrt{2}} $$
ここで、点 $\text{P}$ は $Y \leqq -\frac{1}{2}X^2 + 3$ を満たすので、
$$ X - Y + \frac{7}{2} \geqq X - \left(-\frac{1}{2}X^2 + 3\right) + \frac{7}{2} = \frac{1}{2}X^2 + X + \frac{1}{2} = \frac{1}{2}(X + 1)^2 \geqq 0 $$
が常に成り立つ。よって絶対値記号をそのまま外すことができ、
$$ d = \frac{X - Y + \frac{7}{2}}{\sqrt{2}} $$
となる。$d$ を最大にするには、$Y - X$ を最小にすればよい。 点 $\text{P}$ は領域 $D$ 内にあるため $Y \geqq |X| \geqq X$ を満たし、つねに $Y - X \geqq 0$ である。 $Y - X = 0$ となるのは、点 $\text{P}$ が境界線 $y = x \ (0 \leqq x \leqq -1 + \sqrt{7})$ 上にあるときであり、このとき $Y - X$ は最小値 $0$ をとる。
したがって、$d$ の最大値は
$$ d_{\text{max}} = \frac{\frac{7}{2}}{\sqrt{2}} = \frac{7\sqrt{2}}{4} $$
よって、三角形 $\text{ABP}$ の面積の最大値 $S$ は
$$ S = \frac{1}{2} \cdot \text{AB} \cdot d_{\text{max}} = \frac{1}{2} \cdot \frac{5\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{7\sqrt{2}}{4} = \frac{35}{8} $$
(3)
$k = \frac{y}{x + \frac{7}{2}}$ とおく。 領域 $D$ において $x \geqq 1 - \sqrt{7} > -1.64$ であるため、$x + \frac{7}{2} > 0$ である。 領域 $D$ の点は $y \geqq |x| \geqq 0$ を満たすので、
$$ k = \frac{y}{x + \frac{7}{2}} \geqq 0 $$
である。等号は $y = 0$ のとき、すなわち点 $(0, 0)$ においてのみ成り立ち、原点 $(0, 0)$ は領域 $D$ に含まれるため、$k$ の最小値は $0$ である。
また、(2) の議論より、領域 $D$ のすべての点 $(x, y)$ において $x - y + \frac{7}{2} \geqq 0$ が成り立つことが示されている。 これを変形すると $y \leqq x + \frac{7}{2}$ であり、$x + \frac{7}{2} > 0$ で両辺を割ることで
$$ \frac{y}{x + \frac{7}{2}} \leqq 1 $$
が得られる。等号は $(x + 1)^2 = 0$ より $x = -1$、このとき $y = \frac{5}{2}$ で成り立つ。点 $\left(-1, \frac{5}{2}\right)$ は点 $\text{B}$ であり領域 $D$ に含まれるため、$k$ の最大値は $1$ である。
以上より、求める値の範囲は
$$ 0 \leqq \frac{y}{x + \frac{7}{2}} \leqq 1 $$
である。
解法2
(3) の別解(図形的な意味を考える解法)
式 $\frac{y}{x + \frac{7}{2}}$ は、定点 $\text{A} \left(-\frac{7}{2}, 0\right)$ と領域 $D$ 内の動点 $\text{P}(x, y)$ を通る直線の傾き $m$ を表している。 点 $\text{A}$ は領域 $D$ の左下($x$ 軸上)に位置している。点 $\text{A}$ を中心に直線を回転させ、領域 $D$ と共有点をもつような傾き $m$ の範囲を調べる。
領域 $D$ は $y \geqq 0$ の範囲にあるため、傾きが最も小さくなるのは、直線が領域 $D$ 内で最も低い位置にある点を通るときである。原点 $(0, 0)$ は領域 $D$ に含まれ、直線 $\text{AO}$ は $x$ 軸に一致するため、その傾きは $0$ である。よって最小値は $0$ となる。
傾きが最も大きくなるのは、直線が領域 $D$ の上側の境界である放物線 $y = -\frac{1}{2}x^2 + 3$ に接するときである。(2) の結果より、点 $\text{A}$ から引いた接線のうち、接点が領域 $D$ 内にあるのは傾きが $1$ のときである。よって最大値は $1$ となる。
したがって、求める値の範囲は
$$ 0 \leqq \frac{y}{x + \frac{7}{2}} \leqq 1 $$
である。
解説
不等式の表す領域を把握し、その領域内での図形の計量や式の値の範囲を考える、図形と方程式の総合問題である。 (2) では、底辺が固定されていることに気づき、高さ(点と直線の距離)を最大化する方針をとるのが定石である。ここで絶対値記号を外す際に、領域の条件を利用して符号を判定する点が重要である。 (3) は式の形から「2点間の傾き」と幾何学的に解釈する視点をもてると見通しが良くなる。別解として示したように、視覚的に傾きの最大・最小を判定することで、計算量を減らしつつ確実な答えを得ることができる。
答え
(1) 領域 $D$ は放物線 $y = -\frac{1}{2}x^2 + 3$ と折れ線 $y = |x|$ で囲まれた閉領域。 (2) 面積の最大値は $\frac{35}{8}$ (3) $0 \leqq \frac{y}{x + \frac{7}{2}} \leqq 1$
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