京都大学 1970年 文系 第3問 解説

方針・初手
三角形の面積、あるいは三角比(正弦定理)を用いて、垂線の長さ $h, k, l$ を辺の長さや角で表す。円 $O$ が固定されていることからその外接円の半径 $R$ が一定であり、弦 $BC$ の長さ $a$ も一定であることに着目し、求める式 $\frac{kl}{h}$ を $a$ と $R$ のみを用いて表すことを目標とする。
解法1
$\triangle ABC$ の面積を $S$、辺の長さを $BC=a, CA=b, AB=c$ とする。
頂点 $A, B, C$ から対辺におろした垂線の長さがそれぞれ $h, k, l$ であるから、面積 $S$ は底辺と高さを用いて次のように表せる。
$$ S = \frac{1}{2}ah = \frac{1}{2}bk = \frac{1}{2}cl $$
これらを変形すると、各垂線の長さは面積と辺の長さを用いて次のように書ける。
$$ h = \frac{2S}{a}, \quad k = \frac{2S}{b}, \quad l = \frac{2S}{c} $$
これを求める式 $\frac{kl}{h}$ に代入する。
$$ \frac{kl}{h} = \frac{\frac{2S}{b} \cdot \frac{2S}{c}}{\frac{2S}{a}} = \frac{2aS}{bc} $$
ここで、円 $O$ の半径を $R$ とすると、$\triangle ABC$ における正弦定理より $2R = \frac{a}{\sin A}$ である。また、三角形の面積 $S$ は、
$$ S = \frac{1}{2}bc \sin A $$
と表せる。正弦定理の式から $\sin A = \frac{a}{2R}$ をこれに代入すると、
$$ S = \frac{1}{2}bc \cdot \frac{a}{2R} = \frac{abc}{4R} $$
となる。この $S$ を先ほどの $\frac{kl}{h}$ の式に代入する。
$$ \frac{kl}{h} = \frac{2a}{bc} \cdot \frac{abc}{4R} = \frac{a^2}{2R} $$
円 $O$ は固定されているためその半径 $R$ は定数であり、与えられた定弦 $BC$ の長さ $a$ も定数である。
したがって、$A$ の位置によらず $\frac{kl}{h}$ は一定の値 $\frac{a^2}{2R}$ をとることが示された。
解法2
$\triangle ABC$ の内角を $A, B, C$、辺の長さを $BC=a, CA=b, AB=c$ とし、円 $O$ の半径を $R$ とする。
頂点からおろした垂線によってできる直角三角形に着目すると、三角比の定義より垂線の長さ $h, k, l$ は次のように表せる。
$$ h = c \sin B = b \sin C $$
$$ k = a \sin C = c \sin A $$
$$ l = a \sin B = b \sin A $$
(鈍角三角形の場合でも $\sin(\pi - \theta) = \sin \theta$ よりこれらの関係式は成り立つ)
ここで $k = c \sin A$、$l = b \sin A$、$h = b \sin C$ を選択し、$\frac{kl}{h}$ に代入する。
$$ \frac{kl}{h} = \frac{c \sin A \cdot b \sin A}{b \sin C} = \frac{c \sin^2 A}{\sin C} $$
正弦定理より $\frac{c}{\sin C} = 2R$ であるから、これを上式に適用する。
$$ \frac{kl}{h} = 2R \sin^2 A $$
さらに、同じく正弦定理より $\sin A = \frac{a}{2R}$ であるから、これを代入する。
$$ \frac{kl}{h} = 2R \left( \frac{a}{2R} \right)^2 = \frac{a^2}{2R} $$
円 $O$ の半径 $R$ と定弦の長さ $a$ はともに一定であるため、$\frac{a^2}{2R}$ は一定である。
したがって、$\frac{kl}{h}$ は一定であることが示された。
解説
三角形の各辺とそこへ下ろした垂線の長さが与えられた場合、三角形の面積を媒介にしてそれらを関係付けるのが定石である。本問では $S = \frac{abc}{4R}$ という、外接円の半径を用いた面積公式の知識があると見通しよく計算を進めることができる。
また、解法2のように長さと角(正弦)を相互に変換する正弦定理の運用も重要である。「一定であることを示せ」という要求に対しては、問題文で与えられている不変な要素(本問では定弦 $a$ と円の半径 $R$)のみで目的の式を表すことを目指して式変形を行う方針をとる。
答え
$\frac{kl}{h} = \frac{a^2}{2R}$ ($R$ は円 $O$ の半径)となり、点 $A$ の位置に関わらず一定であることが証明された。
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