京都大学 1972年 文系 第4問 解説

方針・初手
方程式の左辺を $f(x)$ とおき、$y=f(x)$ のグラフが $x$ 軸と異なる3点で交わる条件を考える。 3次方程式が相異なる3実根をもつための必要十分条件は、関数 $f(x)$ が極大値と極小値をもち、かつそれらが異符号であること、すなわち「(極大値)$\times$(極小値)$<0$」となることである。 極値を直接求めるのは計算が煩雑になるため、$f(x)$ を導関数 $f'(x)$ で割った余りを利用して次数を下げる工夫をする。
解法1
$f(x) = x^3 - ax^2 + ax - \frac{a^2}{9}$ とおく。
関数 $f(x)$ を微分すると、
$$ f'(x) = 3x^2 - 2ax + a $$
$f(x)$ が極値をもつためには、2次方程式 $f'(x) = 0$ が異なる2つの実数解をもつ必要がある。 その判別式を $D$ とすると、$D > 0$ となる条件は、
$$ \frac{D}{4} = (-a)^2 - 3 \cdot a = a(a - 3) > 0 $$
これより、極値をもつための条件は、
$$ a < 0 \quad \text{または} \quad a > 3 \quad \cdots \text{①} $$
このとき、$f'(x) = 0$ の2つの解を $\alpha, \beta$ とすると、解と係数の関係より、
$$ \alpha + \beta = \frac{2}{3}a, \quad \alpha \beta = \frac{a}{3} $$
$f(x)=0$ が相異なる3実根をもつ条件は、極大値と極小値の積が負になること、すなわち $f(\alpha)f(\beta) < 0$ である。 ここで、$f(x)$ を $f'(x)$ で割ると、次の恒等式が得られる。
$$ f(x) = f'(x) \left( \frac{1}{3}x - \frac{a}{9} \right) + \frac{2}{9}a(3 - a)x $$
$f'(\alpha) = 0, f'(\beta) = 0$ であるから、極値はそれぞれ、
$$ \begin{aligned} f(\alpha) &= \frac{2}{9}a(3 - a)\alpha \\ f(\beta) &= \frac{2}{9}a(3 - a)\beta \end{aligned} $$
したがって、極値の積は次のように計算できる。
$$ \begin{aligned} f(\alpha)f(\beta) &= \left\{ \frac{2}{9}a(3 - a) \right\}^2 \alpha \beta \\ &= \frac{4}{81}a^2(3 - a)^2 \cdot \frac{a}{3} \\ &= \frac{4}{243}a^3(3 - a)^2 \end{aligned} $$
$f(\alpha)f(\beta) < 0$ となる条件を求める。 ①より $a \neq 3$ であるから $(3 - a)^2 > 0$ であり、$\frac{4}{243}(3 - a)^2$ は正の定数である。 よって、積が負となるためには、
$$ a^3 < 0 $$
すなわち $a < 0$ を得る。 これは条件①を満たしている。
解法2
$f(x) = x^3 - ax^2 + ax - \frac{a^2}{9}$ とおく。 $f'(x) = 3x^2 - 2ax + a$
$f(x)$ が極値をもつための条件は、解法1と同様に $a < 0$ または $a > 3$ である。 $f'(x) = 0$ の異なる2つの実数解を $\alpha, \beta$ ($\alpha < \beta$)とする。 $f(x)$ を $f'(x)$ で割った余りに着目すると、極値は $x = \alpha, \beta$ において直線 $y = \frac{2}{9}a(3 - a)x$ 上にある。
(i) $a < 0$ のとき
解と係数の関係より $\alpha \beta = \frac{a}{3} < 0$ であるため、2解は正と負を1つずつもち、$\alpha < 0 < \beta$ である。 このとき、極大値をとる $x = \alpha$ は負である。 $a < 0$ より $3 - a > 0$ であるから、係数について $\frac{2}{9}a(3 - a) < 0$ となる。 したがって、$\alpha < 0$ と合わせて、極大値は正となる。
$$ f(\alpha) = \frac{2}{9}a(3 - a)\alpha > 0 $$
また、$f(0) = -\frac{a^2}{9} < 0$ である。 極小値 $f(\beta)$ は $x > 0$ でとるため、$f(\beta) < f(0) < 0$ となり、極小値は負である。 極大値が正、極小値が負となるため、$y=f(x)$ のグラフは $x$ 軸と相異なる3つの共有点をもつ。
(ii) $a > 3$ のとき
解と係数の関係より $\alpha + \beta = \frac{2}{3}a > 0$ かつ $\alpha \beta = \frac{a}{3} > 0$ であるから、2解はともに正であり、$0 < \alpha < \beta$ である。 このとき、極大値をとる $x = \alpha$ は正である。 $a > 3$ より $3 - a < 0$ であるから、係数について $\frac{2}{9}a(3 - a) < 0$ となる。 したがって、$\alpha > 0$ と合わせて、極大値は負となる。
$$ f(\alpha) = \frac{2}{9}a(3 - a)\alpha < 0 $$
極大値が負であるならば極小値も当然負となるため、$y=f(x)$ のグラフは $x$ 軸と1つの共有点しかもたない。
以上より、相異なる3実根をもつための必要十分条件は $a < 0$ である。
解説
3次方程式の実数解の個数を問う定石問題だ。 大前提として、極値をもつための条件(導関数の判別式 $D>0$)を忘れないように確認する必要がある。 極値の積を考える際、$f(\alpha)f(\beta)$ を直接代入して計算すると次数が高くなり計算ミスを誘発しやすい。そのため、$f(x)$ を $f'(x)$ で割り算し、「極値は余りの1次式上の点になる」という性質を利用して次数を下げるのが鉄則のテクニックだ。 解法2のように、グラフの形状と極値をとる $x$ 座標の符号、および $y$ 切片の位置関係から図形的に処理することで、計算量を大きく減らしつつ論理的に完答することも可能だ。
答え
$a < 0$
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