京都大学 1974年 文系 第5問 解説

方針・初手
与えられた不等式の各項を整数の観点から評価することが基本となる。 (イ)
$m, n$ は整数なので、$n^2$ と $4m$ の差は $1$ 以上の整数となることに着目し、右辺の減少部分が $1$ より大きくなければならないことを利用する。 (ロ) 具体的な値を代入して右辺を評価し、$n^2$ の候補を絞り込む。さらに平方数を $4$ で割った余りの性質を用いて $n^2 = 4m+1$ を導く。 (ハ) (ロ) の結論と元の不等式を組み合わせ、$m$ に関する不等式を解いて条件を満たす最大の $n$ を見つける。
解法1
(イ) の証明
$m, n$ は整数であり、$m > 0$ より $m \geqq 1$ である。 したがって、$n^2$ および $4m$ も整数である。
不等式の左側 $4m < n^2$ より、整数 $n^2$ と $4m$ の間には、
$$ n^2 \geqq 4m + 1 $$
という関係が成り立つ。 これを元の不等式 $n^2 < 4m + \frac{a}{\sqrt{m}} + \frac{b}{m}$ と組み合わせると、
$$ 4m + 1 \leqq n^2 < 4m + \frac{a}{\sqrt{m}} + \frac{b}{m} $$
となるため、少なくとも
$$ 1 < \frac{a}{\sqrt{m}} + \frac{b}{m} $$
を満たす必要がある。 ここで、$m$ が大きくなると $\frac{a}{\sqrt{m}} + \frac{b}{m}$ は単調に減少し、$0$ に近づく。 具体的には、$m > (a+b)^2$ とすると、$\sqrt{m} > a+b > a$ かつ $m > a+b > b$ であるため($a, b$ は正の定数より)、
$$ \frac{a}{\sqrt{m}} + \frac{b}{m} < \frac{a}{a+b} + \frac{b}{a+b} = 1 $$
となり、不等式を満たさなくなる。 したがって、$1 < \frac{a}{\sqrt{m}} + \frac{b}{m}$ を満たす正の整数 $m$ は $m \leqq (a+b)^2$ の範囲に限られ、有限個しか存在しない。
有限個の各 $m$ に対して、$4m < n^2 < 4m + \frac{a}{\sqrt{m}} + \frac{b}{m}$ を満たす整数 $n^2$ の値も有限個であり、対応する $n$ の個数も有限個である。 よって、この不等式をみたす $m, n$ の組は有限個しか存在しない。(証明終)
(ロ) の証明
$a = 8, b = 9, m \geqq 9$ のとき、与えられた不等式は、
$$ 4m < n^2 < 4m + \frac{8}{\sqrt{m}} + \frac{9}{m} $$
となる。 $m \geqq 9$ のとき、$\sqrt{m} \geqq 3$ であるから、
$$ \frac{8}{\sqrt{m}} + \frac{9}{m} \leqq \frac{8}{3} + \frac{9}{9} = \frac{8}{3} + 1 = \frac{11}{3} $$
が成り立つ。$\frac{11}{3} < 4$ であるため、
$$ 4m < n^2 < 4m + 4 $$
が得られる。$4m$ と $n^2$ はともに整数であるため、$n^2$ が取り得る値は、
$$ n^2 = 4m+1, \quad 4m+2, \quad 4m+3 $$
のいずれかに限られる。
ここで、任意の整数 $n$ は、ある整数 $k$ を用いて $n=2k$ または $n=2k+1$ と表せる。
- $n=2k$ のとき、$n^2 = 4k^2$ より、$4$ で割った余りは $0$。
- $n=2k+1$ のとき、$n^2 = 4k^2+4k+1 = 4(k^2+k)+1$ より、$4$ で割った余りは $1$。
したがって、平方数 $n^2$ を $4$ で割った余りは $0$ または $1$ のいずれかである。 $4m+2, 4m+3$ を $4$ で割った余りはそれぞれ $2, 3$ であるため、$n^2 = 4m+2$ や $n^2 = 4m+3$ となることはない。 よって、$n^2 = 4m+1$ をみたす。(証明終)
(ハ) の解法
(ロ) の結果より、$n^2 = 4m+1$ である。 元の不等式の右側 $n^2 < 4m + \frac{8}{\sqrt{m}} + \frac{9}{m}$ に代入すると、
$$ 4m + 1 < 4m + \frac{8}{\sqrt{m}} + \frac{9}{m} $$
整理すると、
$$ 1 < \frac{8}{\sqrt{m}} + \frac{9}{m} $$
両辺に $m$ ($m > 0$) を掛けて、
$$ m < 8\sqrt{m} + 9 $$
ここで $\sqrt{m} = x$ ($x > 0$) とおくと、
$$ x^2 - 8x - 9 < 0 $$
$$ (x - 9)(x + 1) < 0 $$
$x > 0$ より、$-1 < x < 9$ であるから、$0 < x < 9$。すなわち、
$$ 0 < \sqrt{m} < 9 $$
両辺を $2$ 乗して、
$$ 0 < m < 81 $$
$m \geqq 9$ と合わせると、$9 \leqq m \leqq 80$ となる。 $n$ を最大にしたいので、条件を満たす最大の $m$ を考える。 $n^2 = 4m+1$ より、$n$ は奇数である。$n = 2k+1$ ($k$ は整数)とおくと、
$$ (2k+1)^2 = 4m+1 $$
$$ 4k^2 + 4k = 4m $$
$$ m = k(k+1) $$
$m \leqq 80$ を満たす $k(k+1)$ の形で表される最大の整数を探す。 $k=8$ のとき、$m = 8 \times 9 = 72 \leqq 80$ $k=9$ のとき、$m = 9 \times 10 = 90 > 80$
したがって、条件を満たす最大の $m$ は $72$ である。 このとき、
$$ n^2 = 4 \times 72 + 1 = 289 = 17^2 $$
$n = \pm 17$ となるが、最も大きい $n$ を求めるため $n = 17$ である。
解説
整数分野の不等式評価における典型的な考え方が問われている。
- (イ) では「整数の間に整数はない」こと、すなわち $x < y$ ならば $x+1 \leqq y$ という性質を用いて $n^2 \geqq 4m+1$ を引き出すことが最大のポイント。
- (ロ) では平方数に関する剰余の性質($\pmod 4$ で $0$ か $1$ しか取らない)を利用して、候補となる数から不適なものを除外する。
- (ハ) は、(イ) と (ロ) の議論を具体的に実行する構成になっている。$\sqrt{m}$ の2次不等式として処理することで見通しよく解くことができる。また、最後に $m$ が $k(k+1)$ の形で表されることに気づくと探索がスムーズになる。
答え
(イ)
略(解法1の証明を参照)
(ロ)
略(解法1の証明を参照)
(ハ)
$$ n = 17 $$
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