京都大学 2001年 文系 第4問 解説

方針・初手
与えられた大小関係 $a_1 \leqq a_2 \leqq \cdots \leqq a_n$ に着目します。すべての $k$ において $|a_k| < 2$ (すなわち $-2 < a_k < 2$)を示すには、最小の要素 $a_1$ と最大の要素 $a_n$ について、$-2 < a_1$ かつ $a_n < 2$ を示せば十分です。 与えられた不等式から、最大となる $S - a_1 < 1$ と最小となる $S - a_n > -1$ を取り出し、これらを引くことで $a_n - a_1 < 2$ という重要な関係式を導きます。ここから直接不等式を評価して目的の範囲を導く方法(解法1)と、背理法を用いて矛盾を導く方法(解法2)があります。
解法1
与えられた条件より、すべての $k = 1, 2, \cdots, n$ について $-1 < S - a_k < 1$ が成り立つ。 特に $k = 1, n$ のとき、以下の不等式が成り立つ。
$$ S - a_1 < 1 \quad \cdots \text{①} $$
$$ S - a_n > -1 \quad \cdots \text{②} $$
①と②の辺々を引くと、
$$ (S - a_1) - (S - a_n) < 1 - (-1) $$
$$ a_n - a_1 < 2 \quad \cdots \text{③} $$
条件 $a_1 \leqq a_2 \leqq \cdots \leqq a_n$ より、$-2 < a_k < 2$ をすべての $k$ について示すためには、$-2 < a_1$ かつ $a_n < 2$ を示せば十分である。
(i)
$n = 2$ のとき
$S = a_1 + a_2$ である。 ①より $a_2 < 1$、②より $a_1 > -1$ が得られる。 よって、$-1 < a_1 \leqq a_2 < 1$ となり、すべての $k$ について $|a_k| < 1 < 2$ が成り立つ。
(ii)
$n \ge 3$ のとき
まず $a_n < 2$ を示す。①より、
$$ a_2 + a_3 + \cdots + a_n < 1 $$
$a_1 \leqq a_k$ ($k \ge 2$) であるから、$a_2 + a_3 + \cdots + a_{n-1} \ge (n-2)a_1$ が成り立つ。よって、
$$ a_n < 1 - (a_2 + a_3 + \cdots + a_{n-1}) \leqq 1 - (n-2)a_1 $$
これに、③より得られる $a_1 > a_n - 2$ を代入すると、
$$ a_n < 1 - (n-2)(a_n - 2) $$
$$ a_n < 1 - (n-2)a_n + 2n - 4 $$
$$ (n-1)a_n < 2n - 3 $$
$n \ge 3$ より $n-1 > 0$ であるから、
$$ a_n < \frac{2n - 3}{n - 1} = 2 - \frac{1}{n - 1} $$
$\dfrac{1}{n-1} > 0$ より、$a_n < 2$ が示された。
次に $a_1 > -2$ を示す。②より、
$$ a_1 + a_2 + \cdots + a_{n-1} > -1 $$
$a_k \leqq a_n$ ($k \leqq n-1$) であるから、$a_2 + a_3 + \cdots + a_{n-1} \leqq (n-2)a_n$ が成り立つ。よって、
$$ a_1 > -1 - (a_2 + a_3 + \cdots + a_{n-1}) \geqq -1 - (n-2)a_n $$
これに、③より得られる $a_n < a_1 + 2$ を代入すると、
$$ a_1 > -1 - (n-2)(a_1 + 2) $$
$$ a_1 > -1 - (n-2)a_1 - 2n + 4 $$
$$ (n-1)a_1 > -2n + 3 $$
$n \ge 3$ より $n-1 > 0$ であるから、
$$ a_1 > \frac{-2n + 3}{n - 1} = -2 + \frac{1}{n - 1} $$
$\dfrac{1}{n-1} > 0$ より、$a_1 > -2$ が示された。
以上 (i), (ii) より、任意の 2 以上の整数 $n$ において $-2 < a_1 \leqq a_n < 2$ が成り立つため、すべての $k$ について $|a_k| < 2$ が示された。
解法2
すべての $k = 1, 2, \cdots, n$ について $-1 < S - a_k < 1$ が成り立つため、特に $S - a_1 < 1$(①)、$S - a_n > -1$(②)が成り立つ。 ①と②の辺々を引いて、
$$ a_n - a_1 < 2 \quad \cdots \text{③} $$
を得る。$-2 < a_1$ かつ $a_n < 2$ を背理法で示す。
(i)
$a_n < 2$ の証明
$a_n \ge 2$ と仮定する。 ③より $a_1 > a_n - 2 \ge 0$ となり、すべての $k$ について $a_k > 0$ である。
①の左辺 $S - a_1 = a_2 + a_3 + \cdots + a_n$ について、$n=2$ のとき右辺は $a_2 = a_n \ge 2$ であり、$n \ge 3$ のとき右辺は $a_n \ge 2$ を含む正の数の和であるため $2$ 以上となる。 いずれの場合も $S - a_1 \ge 2$ となるが、これは①($S - a_1 < 1$)に矛盾する。 ゆえに、$a_n < 2$ である。
(ii)
$a_1 > -2$ の証明
$a_1 \leqq -2$ と仮定する。 ③より $a_n < a_1 + 2 \leqq 0$ となり、すべての $k$ について $a_k < 0$ である。
②の左辺 $S - a_n = a_1 + a_2 + \cdots + a_{n-1}$ について、$n=2$ のとき右辺は $a_1 \leqq -2$ であり、$n \ge 3$ のとき右辺は $a_1 \leqq -2$ を含む負の数の和であるため $-2$ 以下となる。 いずれの場合も $S - a_n \leqq -2$ となるが、これは②($S - a_n > -1$)に矛盾する。 ゆえに、$a_1 > -2$ である。
以上より、$-2 < a_1 \leqq a_n < 2$ が成り立つため、すべての $k$ について $|a_k| < 2$ が示された。
解説
「最大値と最小値に着目する」という不等式証明の定石を問う良問です。すべての $a_k$ が条件を満たすことを示すために、両端の $a_1$ と $a_n$ だけを評価すれば十分であると見抜けるかがカギとなります。 $S - a_1$ と $S - a_n$ から $a_n - a_1 < 2$(最大と最小の差が2未満)を導き出すことができれば、解法1のような直接的な不等式評価も、解法2のような背理法もスムーズに進めることができます。特に背理法は計算量が少なく、直感的に矛盾を突くことができるため本問において非常に有効なアプローチです。
答え
(証明問題のため省略。解法1または解法2の通り、不等式の評価や背理法を用いることで、すべての $k$ において $-2 < a_k < 2$ が示された。)
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