京都大学 2016年 文系 第1問 解説

方針・初手
- 求める領域の面積を立式するためには、与えられた不等式が表す領域の上下関係(境界線の位置関係)を把握する必要があります。
- $x$ の積分区間 $-1 \leq x \leq 1$ において、曲線 $y = x^3 + x^2 - x$ と円 $x^2 + y^2 = 2$ の位置関係を調べ、被積分関数を決定します。
- 円の一部を含む積分は、扇形と三角形の面積に分割して図形的に考えるか、三角関数を用いた置換積分を利用することで計算できます。
解法1
求める領域は、連立不等式
$$ x^2 + y^2 \leq 2, \quad y \geq x^3 + x^2 - x, \quad -1 \leq x \leq 1 $$
の表す領域である。
第 1 式より、円の内部および境界では $-\sqrt{2-x^2} \leq y \leq \sqrt{2-x^2}$ である。
$f(x) = x^3 + x^2 - x$ とおく。積分区間となる $-1 \leq x \leq 1$ において、曲線 $y = f(x)$ と円の境界の上下関係を調べる。
$$ f(x) - 1 = x^3 + x^2 - x - 1 = (x-1)(x+1)^2 $$
$-1 \leq x \leq 1$ において $(x+1)^2 \geq 0$ かつ $x - 1 \leq 0$ であるから、$(x-1)(x+1)^2 \leq 0$ が成り立ち、常に $f(x) \leq 1$ である(等号成立は $x = 1,\ -1$ のとき)。
一方、$-1 \leq x \leq 1$ において $x^2 \leq 1$ より $2 - x^2 \geq 1$ であるから、常に $\sqrt{2-x^2} \geq 1$ であり、$-\sqrt{2-x^2} \leq -1$ である。
したがって、区間 $-1 \leq x \leq 1$ におけるすべての $x$ に対して、
$$ -\sqrt{2-x^2} \leq -1 \leq f(x) \leq 1 \leq \sqrt{2-x^2} $$
が成り立つ。すなわち、この区間で曲線 $y = f(x)$ は円 $x^2 + y^2 = 2$ の内部に含まれる。
以上より、求める面積 $S$ は、円の上半弧 $y = \sqrt{2-x^2}$ と曲線 $y = f(x)$ で囲まれた部分の面積であるから、
$$ S = \int_{-1}^{1}\!\left(\sqrt{2-x^2} - f(x)\right)dx $$
これを 2 つの定積分に分けて計算する。
第 1 項の計算
$\displaystyle\int_{-1}^{1}\sqrt{2-x^2}\,dx$ は、原点を中心とする半径 $\sqrt{2}$ の円のうち、$-1 \leq x \leq 1$ かつ $y \geq 0$ の部分の面積を表す。
この図形は、原点 O、点 A$(-1,\ 1)$、点 B$(1,\ 1)$ を結ぶ扇形 OAB と、両脇の 2 つの直角三角形に分割できる。
- 点 A の偏角は $\dfrac{3\pi}{4}$、点 B の偏角は $\dfrac{\pi}{4}$ であるから、扇形 OAB の中心角は $\dfrac{\pi}{2}$。その面積は $\dfrac{1}{2} \cdot (\sqrt{2})^2 \cdot \dfrac{\pi}{2} = \dfrac{\pi}{2}$
- 両脇の直角三角形(底辺 1、高さ 1)の面積の和は $\dfrac{1}{2} \cdot 1 \cdot 1 \times 2 = 1$
したがって、
$$ \int_{-1}^{1}\sqrt{2-x^2}\,dx = \frac{\pi}{2} + 1 $$
第 2 項の計算
奇関数・偶関数の性質を利用する。$x^3$ と $-x$ は奇関数、$x^2$ は偶関数であるから、
$$ \int_{-1}^{1} f(x)\,dx = \int_{-1}^{1}\!(x^3 + x^2 - x)\,dx = 0 + 2\int_0^1 x^2\,dx + 0 = 2\left[\frac{x^3}{3}\right]_0^1 = \frac{2}{3} $$
ゆえに、求める面積 $S$ は、
$$ S = \left(\frac{\pi}{2} + 1\right) - \frac{2}{3} = \frac{\pi}{2} + \frac{1}{3} $$
解法2
第 1 項の定積分 $\displaystyle\int_{-1}^{1}\sqrt{2-x^2}\,dx$ を、図形的意味を用いずに置換積分で求める方法を示す。
$x = \sqrt{2}\sin\theta$ とおくと、$dx = \sqrt{2}\cos\theta\,d\theta$ であり、積分区間は $\theta : -\dfrac{\pi}{4} \to \dfrac{\pi}{4}$ となる。
この区間において $\cos\theta > 0$ であるから、
$$ \sqrt{2-x^2} = \sqrt{2-2\sin^2\theta} = \sqrt{2}\cos\theta $$
$$ \int_{-1}^{1}\sqrt{2-x^2}\,dx = \int_{-\pi/4}^{\pi/4}\sqrt{2}\cos\theta \cdot \sqrt{2}\cos\theta\,d\theta = 2\int_{-\pi/4}^{\pi/4}\cos^2\theta\,d\theta $$
$$ = 2\int_{-\pi/4}^{\pi/4}\frac{1+\cos 2\theta}{2}\,d\theta = \left[\theta + \frac{\sin 2\theta}{2}\right]_{-\pi/4}^{\pi/4} = \frac{\pi}{2} + 1 $$
以下、解法1と同様の計算により $S = \dfrac{\pi}{2} + \dfrac{1}{3}$ を得る。
解説
複数の曲線や領域が絡む面積問題では、積分の立式の前に上下関係を論理的に確認することが重要です。本問では $f(x) - 1 = (x-1)(x+1)^2$ の符号を調べることで、曲線全体が円の内部に収まっていることが簡潔に示せます。
円の一部を表す定積分 $\displaystyle\int\sqrt{a^2-x^2}\,dx$ については、解法1のように扇形や三角形などの基本図形の面積に帰着させる方法と、解法2のように $x = a\sin\theta$ と置いて置換積分する方法の両方を使いこなせるようにしましょう。
積分区間が $[-a,\ a]$ と対称であることから、奇関数の積分が 0 になる性質を活用して計算量を抑えるのも定石です。
答え
$$ S = \frac{\pi}{2} + \frac{1}{3} $$
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