京都大学 1964年 理系 第6問 解説

方針・初手
与えられた図形 $S$ は、曲線 $y = \cos x$ と $x$ 軸で囲まれた部分であるため、定義域を $-\frac{\pi}{2} \le x \le \frac{\pi}{2}$、値域を $0 \le y \le \cos x$ とする領域として考える。 曲線 $y = \cos x$ はこの区間において $y'' = -\cos x \le 0$ を満たすため、上に凸な曲線である。したがって、図形 $S$ は凸集合(内部の任意の2点を結ぶ線分が常に図形に含まれる性質を持つ集合)となる。
この性質とグラフの対称性を利用して、$A, B, C$ それぞれの最大値を数式で表し、評価していく。
解法1
三角形の面積の最大値 $B$ について
図形 $S$ に含まれ、$x$ 軸上に1辺をもつ三角形を考える。 底辺は区間 $[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}]$ に含まれるため、その長さの最大値は $\pi$ である。 また、三角形の頂点は図形 $S$ 内にあるため、高さの最大値は $y = \cos x$ の最大値である $1$ である。 したがって、面積の最大値は高々 $\frac{1}{2} \times \pi \times 1 = \frac{\pi}{2}$ である。
ここで、頂点を $(-\frac{\pi}{2}, 0), (\frac{\pi}{2}, 0), (0, 1)$ とする三角形を考えると、これらの頂点はすべて図形 $S$ の境界上に存在する。図形 $S$ は凸集合であるため、これらの頂点を結んでできる三角形は完全に $S$ に含まれる。 以上より、三角形の面積の最大値は実現可能であり、次が成り立つ。
$$ B = \frac{\pi}{2} $$
半円の面積の最大値 $C$ について
$x$ 軸上に直径をもつ半円の中心を $(c, 0)$、半径を $r$ とおく。 この半円が図形 $S$ に含まれるためには、$x = c$ における半円の高さ $r$ が、曲線 $y = \cos x$ の高さ $\cos c$ 以下である必要がある。すなわち $r \le \cos c$ である。 $\cos c \le 1$ であるから、$r \le 1$ が必要条件となる。
半円の面積は $\frac{1}{2}\pi r^2$ であり、$r$ が大きいほど面積も大きくなるため、$r=1$ とできるか検討する。 $r=1$ のとき、条件 $1 \le \cos c$ を満たすのは $c=0$ のみである。 中心 $(0,0)$、半径 $1$ の半円の方程式は、$y = \sqrt{1-x^2}$ ($-1 \le x \le 1$)となる。 この半円が $S$ に含まれるか、すなわち $-1 \le x \le 1$ において $\sqrt{1-x^2} \le \cos x$ が成り立つかを確認する。 両辺ともに正であるから、2乗して差をとる。任意の実数 $x$ において $|\sin x| \le |x|$ が成り立つことを用いると、次のように評価できる。
$$ \cos^2 x - (1-x^2) = (1-\sin^2 x) - 1 + x^2 = x^2 - \sin^2 x \ge 0 $$
したがって $\sqrt{1-x^2} \le \cos x$ が成り立ち、この半円は完全に $S$ に含まれる。 ゆえに、半径の最大値は $1$ であり、面積の最大値は次のように求まる。
$$ C = \frac{\pi}{2} $$
長方形の面積の最大値 $A$ について
長方形の $x$ 軸上の辺を $[a, b]$ ($-\frac{\pi}{2} \le a < b \le \frac{\pi}{2}$)とする。 この長方形が $S$ に含まれるための高さの最大値は、区間 $[a, b]$ における $\cos x$ の最小値となる。 $|a| \le |b|$ と仮定すると、最小値は $\cos b$ であり、面積は $(b-a)\cos b$ となる。 ここで、辺を対称な区間 $[-b, b]$ に取り直すと、高さは $\cos b$ のままで面積は $2b\cos b$ となる。$(b-a) \le 2b$ であるから、面積を最大化する長方形は $y$ 軸対称な $[-t, t]$ ($0 < t < \frac{\pi}{2}$)を底辺と仮定してよい。
この対称な長方形の面積 $f(t)$ は次のように表される。
$$ f(t) = 2t\cos t $$
$f(t)$ の増減を調べるために微分する。
$$ f'(t) = 2(\cos t - t\sin t) $$
$f'(t) = 0$ となる $t$ について、$t = \frac{\pi}{4}$ と $t = 1$ における符号を調べる。
$$ f'\left(\frac{\pi}{4}\right) = 2\left(\frac{1}{\sqrt{2}} - \frac{\pi}{4\sqrt{2}}\right) = \frac{\sqrt{2}}{2}(4-\pi) > 0 $$
$$ f'(1) = 2(\cos 1 - \sin 1) $$
ここで、$1 > \frac{\pi}{4}$ より $\cos 1 < \sin 1$ であるため、$f'(1) < 0$ となる。 したがって、$f(t)$ は $\frac{\pi}{4} < \alpha < 1$ を満たすある $\alpha$ で最大値をとる。 $f'(\alpha) = 0$ より、$\cos \alpha = \alpha \sin \alpha$ が成り立つ。これを用いて最大値 $A$ を変形する。
$$ \cos^2 \alpha = \frac{1}{1+\tan^2 \alpha} = \frac{1}{1+\frac{1}{\alpha^2}} = \frac{\alpha^2}{1+\alpha^2} $$
$$ A = f(\alpha) = 2\alpha \cos \alpha = 2\alpha \frac{\alpha}{\sqrt{1+\alpha^2}} = 2\sqrt{\frac{\alpha^4}{1+\alpha^2}} $$
関数 $g(x) = \frac{x^2}{1+x}$ は $x > 0$ において単調増加である。 $\alpha < 1$ より $\alpha^2 < 1$ であるから、次のように評価できる。
$$ A = 2\sqrt{\frac{\alpha^4}{1+\alpha^2}} < 2\sqrt{\frac{1^2}{1+1}} = 2\sqrt{\frac{1}{2}} = \sqrt{2} $$
大小関係の比較
これまでに得られた結果から、$A, B, C$ を比較する。 $B = C = \frac{\pi}{2}$ である。 $A < \sqrt{2}$ と $\frac{\pi}{2}$ の大小関係を調べるため、それぞれの2乗を比較する。
$$ (\sqrt{2})^2 = 2 $$
$$ \left(\frac{\pi}{2}\right)^2 = \frac{\pi^2}{4} > \frac{3^2}{4} = 2.25 $$
したがって、$2 < \left(\frac{\pi}{2}\right)^2$ より $\sqrt{2} < \frac{\pi}{2}$ が成り立つ。 以上より、$A < B = C$ である。
解説
直感的には「図形の角が削られる分、長方形が最も面積が小さくなるだろう」と予想できるが、それを数学的に厳密に示すことが求められる問題である。 長方形の面積の最大値 $A$ を与える $t=\alpha$ が陽に求まらないため、$\alpha$ の満たす条件式($\cos \alpha = \alpha \sin \alpha$)を利用して関数形を整理し、$\alpha < 1$ のような範囲で面積を上から評価する手法が鍵となる。また、半円が曲線の下に収まることの証明において、有名不等式 $|\sin x| \le |x|$ が自然に現れる点も美しい。
答え
$$ A < B = C $$
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