京都大学 1998年 理系 第1問 解説

方針・初手
直角三角形の直角を挟む2辺を $a, b$、斜辺を $c$ とおき、内接円の幾何学的な性質を利用して辺の長さと半径 $r$ の関係式を立てます。直角三角形において「接線の長さが等しい」という性質を用いると、$a+b-c=2r$ という簡潔な関係が導けます。これを問題文の条件式と連立させます。(2) では、面積 $S$ を $r$ の関数として表した後、$a, b$ が実数の辺の長さとして存在するための $r$ の条件(定義域)を求めることが重要になります。
解法1
(1)
直角三角形の直角を挟む2辺の長さを $a, b$、斜辺の長さを $c$ とする。 直角の頂点から内接円の接点までの距離は $r$ であり、各頂点から内接円への2本の接線の長さはそれぞれ等しい。 したがって、斜辺 $c$ は他の2辺の、直角の頂点から接点までの距離 $r$ を除いた部分の和に等しくなるため、次の関係式が成り立つ。
$$ c = (a - r) + (b - r) $$
これを整理すると、次のようになる。
$$ a + b - c = 2r $$
一方、問題の条件から「三角形の3辺の長さの和と円の直径との和が $2$」であるため、次の式が成り立つ。
$$ a + b + c + 2r = 2 $$
$a + b = c + 2r$ をこの式に代入して整理する。
$$ (c + 2r) + c + 2r = 2 $$
$$ 2c + 4r = 2 $$
$$ c = 1 - 2r $$
(2)
三角形の面積を $S$ とすると、$S = \frac{1}{2}ab$ である。 (1) の過程より $a + b = c + 2r$ であり、$c = 1 - 2r$ を代入すると次のようになる。
$$ a + b = (1 - 2r) + 2r = 1 $$
また、直角三角形の面積 $S$ は内接円の半径 $r$ を用いて次のように表せる。
$$ S = \frac{1}{2}r(a + b + c) $$
ここで $a + b + c = (a + b) + c = 1 + (1 - 2r) = 2 - 2r$ であるから、面積は次のように表される。
$$ S = \frac{1}{2}r(2 - 2r) = r(1 - r) $$
したがって、$ab = 2S = 2r(1 - r)$ となる。 $a, b$ は和が $1$、積が $2r(1 - r)$ であるから、2次方程式 $t^2 - t + 2r(1 - r) = 0$ の2つの正の実数解である。 この2次方程式が実数解をもつ条件は、判別式を $D$ とすると $D \ge 0$ である。
$$ D = (-1)^2 - 4 \cdot 1 \cdot 2r(1 - r) \ge 0 $$
$$ 1 - 8r + 8r^2 \ge 0 $$
$$ 8r^2 - 8r + 1 \ge 0 $$
これを解くと、次の範囲が得られる。
$$ r \le \frac{2 - \sqrt{2}}{4}, \quad \frac{2 + \sqrt{2}}{4} \le r $$
ここで、辺の長さと半径は正であるから $r > 0$ であり、また斜辺 $c > 0$ より $1 - 2r > 0$ すなわち $r < \frac{1}{2}$ である。 $\frac{2 + \sqrt{2}}{4} > \frac{1}{2}$ であるから、条件を満たす $r$ のとりうる値の範囲は次のようになる。
$$ 0 < r \le \frac{2 - \sqrt{2}}{4} $$
次に、面積 $S$ を $r$ の関数とみて平方完成する。
$$ S = -r^2 + r = -\left(r - \frac{1}{2}\right)^2 + \frac{1}{4} $$
これは $r = \frac{1}{2}$ を軸とする上に凸の放物線である。 $r$ の変域 $0 < r \le \frac{2 - \sqrt{2}}{4}$ において、$\frac{2 - \sqrt{2}}{4} < \frac{1}{2}$ であるから、この範囲で $S$ は単調に増加する。 したがって、$S$ は $r = \frac{2 - \sqrt{2}}{4}$ のとき最大値をとる。 このときの最大値は、以下のように計算できる。
$$ \begin{aligned} S &= r(1 - r) \\ &= \frac{2 - \sqrt{2}}{4} \left( 1 - \frac{2 - \sqrt{2}}{4} \right) \\ &= \frac{2 - \sqrt{2}}{4} \cdot \frac{2 + \sqrt{2}}{4} \\ &= \frac{4 - 2}{16} \\ &= \frac{1}{8} \end{aligned} $$
解説
直角三角形と内接円が絡む問題では、$a+b-c=2r$ の関係式が非常に強力です。図を描き、円外の点から引いた2本の接線の長さが等しいことを用いるとすぐに導出できます。 (2) において、面積 $S$ の式が求まった後、すぐに頂点で最大値をとると判断するのは誤りです。「$a, b$ が図形を構成する実数として存在するか」という実数解条件を確認し、変数 $r$ の定義域を絞り込む手続きがこの問題の最大のポイントです。和と積から2次方程式を作成し、判別式を調べる流れは、図形量の最大・最小問題における典型的な手法です。
答え
(1)
$1 - 2r$
(2)
$\frac{1}{8}$
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