京都大学 2010年 理系 第2問(乙) 解説

方針・初手
点 $A, B$ が固定されており、点 $P$ が直線 $y=x$ ($x>0$)上を動くとき、$\angle APB$ の最大値を求める問題です。 大きく分けて2つのアプローチが考えられます。 1つは、直線の傾きから正接($\tan$)の加法定理を用いて $\angle APB$ を関数として表し、その最大値を解析的に求める方法です。 もう1つは、「定線分を見込む角が最大になるのは、その点を通る円が直線に接するときである」という図形的な性質(円周角の定理と方べきの定理)を利用する方法です。
解法1
直線 $PA, PB$ が $x$ 軸の正の向きとなす角をそれぞれ $\alpha, \beta$ とおく。ただし $-\dfrac{\pi}{2} < \alpha, \beta < \dfrac{\pi}{2}$ とする。
直線 $PA, PB$ の傾きを考えると、点 $P(x, x)$, $A(0, 1)$, $B(0, 2)$ であるから、
$$ \tan \alpha = \frac{1 - x}{0 - x} = \frac{x - 1}{x} = 1 - \frac{1}{x} $$
$$ \tan \beta = \frac{2 - x}{0 - x} = \frac{x - 2}{x} = 1 - \frac{2}{x} $$
ここで、$x > 0$ より $\tan \alpha - \tan \beta = \dfrac{1}{x} > 0$ であるため、$\alpha > \beta$ である。
$\theta = \angle APB$ とおくと、$\theta = \alpha - \beta$ と表せる。 $\tan \theta$ を加法定理を用いて計算する。
$$ \tan \theta = \tan (\alpha - \beta) = \frac{\tan \alpha - \tan \beta}{1 + \tan \alpha \tan \beta} $$
分子と分母をそれぞれ計算すると、
分子は $\tan \alpha - \tan \beta = \dfrac{1}{x}$
分母は $1 + \left( \dfrac{x - 1}{x} \right) \left( \dfrac{x - 2}{x} \right) = 1 + \dfrac{x^2 - 3x + 2}{x^2} = \dfrac{2x^2 - 3x + 2}{x^2}$
よって、
$$ \tan \theta = \frac{\dfrac{1}{x}}{\dfrac{2x^2 - 3x + 2}{x^2}} = \frac{x}{2x^2 - 3x + 2} $$
分母の $2x^2 - 3x + 2$ は $2\!\left(x - \dfrac{3}{4}\right)^2 + \dfrac{7}{8} > 0$ であり、$x > 0$ より $\tan \theta > 0$ である。
したがって、$0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}$(鋭角)であることがわかり、$\tan \theta$ が最大となるときに $\theta$ も最大となる。
分母・分子を $x\ (>0)$ で割ると、
$$ \tan \theta = \frac{1}{2x - 3 + \dfrac{2}{x}} $$
ここで、分母の $2x + \dfrac{2}{x}$ について、相加平均と相乗平均の大小関係を用いる。$2x > 0$, $\dfrac{2}{x} > 0$ より、
$$ 2x + \frac{2}{x} \geqq 2\sqrt{2x \cdot \frac{2}{x}} = 4 $$
等号成立は $2x = \dfrac{2}{x}$、すなわち $x^2 = 1$ より $x = 1$($x > 0$ を満たす)のときである。
したがって、分母は
$$ 2x - 3 + \frac{2}{x} \geqq 4 - 3 = 1 $$
分母の最小値が $1$ であるから、
$$ \tan \theta \leqq \frac{1}{1} = 1 $$
$0 < \theta < \dfrac{\pi}{2}$ の範囲で $\tan \theta \leqq 1$ を解くと $\theta \leqq \dfrac{\pi}{4}$ となる。
よって、$\angle APB$ の最大値は $\dfrac{\pi}{4}$ である。
解法2
2点 $A(0, 1), B(0, 2)$ を通り、直線 $y=x$ の $x>0$ の部分(半直線 $l$ とする)に接する円を考える。
直線 $AB$($y$ 軸)と直線 $y=x$ の交点は原点 $O(0,0)$ である。 そのような円が存在したとし、その接点を $P_0$ とすると、方べきの定理より
$$ OP_0^2 = OA \cdot OB $$
$OA = 1$, $OB = 2$ であるから $OP_0^2 = 1 \cdot 2 = 2$。$P_0$ は第1象限にあるので $OP_0 = \sqrt{2}$ となる。
$P_0$ は直線 $y=x$ 上にあるため、$P_0(1, 1)$ と定まる。
実際に3点 $A(0, 1), B(0, 2), P_0(1, 1)$ を通る円が存在して直線 $y=x$ に接するか確認する。
線分 $AB$ の垂直二等分線は $y = \dfrac{3}{2}$ であり、円の中心はこの直線上にある。$P_0(1,1)$ で直線 $y=x$ に接する円の中心は、点 $P_0$ を通り $y=x$ に垂直な直線 $y = -x + 2$ 上にある。
よって、円の中心 $C$ の座標は $y = \dfrac{3}{2}$ と $y = -x + 2$ の交点であるから、$C\!\left(\dfrac{1}{2}, \dfrac{3}{2}\right)$ となる。
中心 $C$ から $A(0,1)$ までの距離の2乗は $\left(\dfrac{1}{2}\right)^2 + \left(\dfrac{1}{2}\right)^2 = \dfrac{1}{2}$ であり、中心 $C$ から直線 $x-y=0$ までの距離の2乗も $\dfrac{|1/2 - 3/2|^2}{2} = \dfrac{1}{2}$ となるため、確かにこの円は $A, B$ を通り $P_0$ で直線 $y=x$ に接する。
半直線 $l$ 上の $P_0$ 以外の任意の点 $P$ はこの円の外部にあり、円周角の定理と三角形の外角の性質より $\angle APB < \angle AP_0B$ が成り立つ。
したがって、$\angle APB$ は $P = P_0(1, 1)$ のとき最大となる。
$A(0, 1), P_0(1, 1), B(0, 2)$ より $AP_0 = 1$, $AB = 1$、$\angle P_0AB = 90^\circ$ の直角二等辺三角形となるから、
最大値 $\angle AP_0B = \dfrac{\pi}{4}$ である。
解説
「定点を見込む角の最大化」は入試数学の頻出テーマです。
解法1のように直線の傾きを $\tan$ に置き換えて加法定理を用いるアプローチは、相加相乗平均や微分に持ち込めるため最も汎用性が高く、確実な解法です。
一方で解法2の「角が最大となるのは、定点を通る円が動点のある直線に接するときである」という図形的な性質を知っていれば、方べきの定理を用いて一瞬で最大値をとる座標を求めることができます。本問のように点 $A, B$ が一直線($y$ 軸)上にあり、それが動点のある直線と交わっている場合は、特に方べきの定理が強力に機能します。
答え
$$ \frac{\pi}{4} $$
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