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京都大学 2019年 理系 第6問 解説

数学C/複素数平面数学2/三角関数数学2/指数対数テーマ/最大・最小テーマ/場合分け
京都大学 2019年 理系 第6問 解説

方針・初手

複素数の累乗の和を計算するため、極形式とド・モアブルの定理を用いて式を簡略化します。

実部のみが残る形で式を整理したのち、その値が $10^{10}$ を超えるための条件を求めます。常用対数の値が与えられていないため、$2^{10} \approx 10^3$ であることを利用して指数の値を評価し、$n$ の候補を絞り込みます。

解法1

$1 \pm i$ を極形式で表すと、

$$ 1 + i = \sqrt{2}\left(\cos\frac{\pi}{4} + i\sin\frac{\pi}{4}\right), \qquad 1 - i = \sqrt{2}\left(\cos\frac{\pi}{4} - i\sin\frac{\pi}{4}\right) $$

となる。ド・モアブルの定理を用いると、

$$ (1+i)^n = 2^{\frac{n}{2}}\left(\cos\frac{n\pi}{4} + i\sin\frac{n\pi}{4}\right), \qquad (1-i)^n = 2^{\frac{n}{2}}\left(\cos\frac{n\pi}{4} - i\sin\frac{n\pi}{4}\right) $$

これらを辺々足し合わせると、虚部が打ち消し合って

$$ (1+i)^n + (1-i)^n = 2^{\frac{n}{2}+1}\cos\frac{n\pi}{4} $$

となる。この値が $10^{10}$ より大きくなる最小の正の整数 $n$ を求める。

まず、$2^m > 10^{10}$ を満たす整数 $m$ を調べる。

$2^{10} = 1024$ であるから、

$$ 2^{30} = 1024^3 > (10^3)^3 = 10^9 $$

さらに細かく評価すると、

$$ 2^{33} = 8 \times 1024^3 = 8{,}589{,}934{,}592 < 10^{10} $$

$$ 2^{34} = 16 \times 2^{30} > 16 \times 10^9 = 1.6 \times 10^{10} > 10^{10} $$

したがって、$2^m > 10^{10}$ を満たす最小の整数は $m = 34$ である。

次に、$a_n = 2^{\frac{n}{2}+1}\cos\dfrac{n\pi}{4}$ とおく。

$a_n > 10^{10}$ を満たすためには、大前提として $a_n > 0$ すなわち $\cos\dfrac{n\pi}{4} > 0$ でなければならない。

$\cos\dfrac{n\pi}{4} > 0$ となるのは、$n$ を $8$ で割った余りが $0, 1, 7$ のいずれかの場合のみである。

(i) $n = 8k$ のとき($k$ は正の整数)

$$ \cos\frac{n\pi}{4} = \cos 2k\pi = 1 \quad \text{より} \quad a_n = 2^{\frac{n}{2}+1} $$

$a_n > 10^{10}$ のためには $2^{\frac{n}{2}+1} > 10^{10}$ が必要であり、$\dfrac{n}{2}+1 \geqq 34 \iff n \geqq 66$ を得る。

$n$ は $8$ の倍数であるから、これを満たす最小の $n$ は $n = 72$ である。

(ii) $n = 8k+1$ のとき($k$ は非負整数)

$$ \cos\frac{n\pi}{4} = \cos\!\left(2k\pi + \frac{\pi}{4}\right) = \frac{1}{\sqrt{2}} = 2^{-\frac{1}{2}} \quad \text{より} \quad a_n = 2^{\frac{n}{2}+1} \cdot 2^{-\frac{1}{2}} = 2^{\frac{n+1}{2}} $$

$a_n > 10^{10}$ のためには $\dfrac{n+1}{2} \geqq 34 \iff n \geqq 67$ を得る。

$n \equiv 1 \pmod{8}$ を満たす最小の $n$ を探す。

$n = 65$ のときは $\dfrac{65+1}{2} = 33 < 34$ で条件を満たさず、次の候補である $n = 73$ は $\dfrac{73+1}{2} = 37 \geqq 34$ で条件を満たす。

(iii) $n = 8k+7$ のとき($k$ は非負整数)

$$ \cos\frac{n\pi}{4} = \cos\!\left(2k\pi + \frac{7\pi}{4}\right) = \frac{1}{\sqrt{2}} = 2^{-\frac{1}{2}} \quad \text{より} \quad a_n = 2^{\frac{n+1}{2}} $$

$a_n > 10^{10}$ のためには $\dfrac{n+1}{2} \geqq 34 \iff n \geqq 67$ を得る。

$n \equiv 7 \pmod{8}$ を満たす最小の $n$ を探す。

$n = 8 \times 8 + 7 = 71$ は $\dfrac{71+1}{2} = 36 \geqq 34$ を満たす。

(その前の候補である $n = 63$ は $\dfrac{63+1}{2} = 32 < 34$ で条件を満たさない。)

(i), (ii), (iii) より、条件を満たす最小の $n$ は $71$ である。

なお、$65 < n < 71$ となる整数 $n$($66, 67, 68, 69, 70$)については、$\cos\dfrac{n\pi}{4} \leqq 0$ となるため $a_n > 10^{10}$ を満たすことはない。

解説

複素数の累乗と極形式を組み合わせた標準的な問題ですが、後半の不等式評価に工夫が求められます。

$\log_{10} 2 \approx 0.3010$ などの近似値が与えられていない場合、$2^{10} = 1024 \approx 10^3$ を用いて自力で桁数を評価する手法は、難関大の整数問題や極限問題で頻出のテクニックです。

また、指数部分(振幅)は $n$ に伴って単調増加しますが、$\cos\dfrac{n\pi}{4}$ の符号が周期的に変動するため、関数全体は単調増加ではありません。そのため、「指数部分が条件を満たす最初の $n$」を単純に探すだけでなく、$n$ を $8$ で割った余りで分類し、符号が正になる区間で個別に最小値を調べる論理的な慎重さが必要です。

答え

$$ n = 71 $$

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