大阪大学 2017年 理系 第2問 解説

方針・初手
方程式 $z^5=1$ の解が複素数平面上で単位円を5等分する正五角形の頂点となることを図形的に把握しておく。 $w$ は、これら5つの頂点のうち、硬貨の表が出たもの($a_k=1$)を足し合わせたものである。 (1) は等比数列の和の公式、あるいは $z^5-1$ の因数分解の形を利用する。 (2) は $z^4 = z^{-1}$ を用いて相反方程式の解法に帰着させるか、三角関数の値の評価を行う。 (3) は $1+z+z^2+z^3+z^4=0$ という関係を用いて、選んだ頂点の個数ごとに図形的な対称性を活用して分類すると見通しがよい。
解法1
(1) $z^5 = 1$ の解であり、実部と虚部がともに正であるため $z \neq 1$ である。
$$ z^5 - 1 = 0 $$
$$ (z-1)(z^4+z^3+z^2+z+1) = 0 $$
$z \neq 1$ より、以下の等式が成り立つ。
$$ z^4+z^3+z^2+z+1 = 0 $$
5回とも表が出たとき $a_0 = a_1 = a_2 = a_3 = a_4 = 1$ であるから、
$$ w = 1 + z + z^2 + z^3 + z^4 = 0 $$
(2) $a_0 = a_2 = a_3 = 0, \ a_1 = a_4 = 1$ のとき、
$$ w = z + z^4 $$
$z^5 = 1$ であるから $z^4 = \frac{z^5}{z} = \frac{1}{z}$ となり、$w = z + \frac{1}{z}$ と表せる。 (1)で求めた等式の両辺を $z^2 \neq 0$ で割ると、
$$ z^2 + z + 1 + \frac{1}{z} + \frac{1}{z^2} = 0 $$
$$ \left(z + \frac{1}{z}\right)^2 - 2 + \left(z + \frac{1}{z}\right) + 1 = 0 $$
$$ w^2 + w - 1 = 0 $$
これを解くと、$w = \frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2}$ を得る。 ここで、$z$ は $z^5=1$ の解のうち第一象限にあるものなので、偏角は $\frac{2\pi}{5}$ である。 すなわち $z = \cos\frac{2\pi}{5} + i \sin\frac{2\pi}{5}$ と表せる。
$$ w = z + z^4 = z + \frac{1}{z} = z + \overline{z} = 2\cos\frac{2\pi}{5} $$
$0 < \frac{2\pi}{5} < \frac{\pi}{2}$ であるから $\cos\frac{2\pi}{5} > 0$ となり、$w > 0$ である。 したがって、$w = \frac{\sqrt{5}-1}{2}$ と定まる。 $2 < \sqrt{5} < 3$ であるから、
$$ \frac{2-1}{2} < w < \frac{3-1}{2} $$
$$ \frac{1}{2} < w < 1 $$
よって、$w > 0$ とあわせて $|w| < 1$ であることが示された。
(3) 各回において表と裏が出る確率はともに $\frac{1}{2}$ であり、出方の総数は $2^5 = 32$ 通りである。これらは同様に確からしい。 $w$ は、正五角形の頂点 $1, z, z^2, z^3, z^4$ のうち $a_k=1$ に対応する点の和である。 表が出た回数(選ばれる点の個数)を $n = a_0+a_1+a_2+a_3+a_4$ とし、場合分けを行う。
(i)
$n=0$ のとき(1通り) $w=0$ となり、$|w| < 1$ を満たす。
(ii)
$n=1$ のとき(5通り) ある $k$ に対して $w = z^k$ となる。 $z$ は単位円上の点であるから $|w| = |z^k| = 1$ となり、$|w| < 1$ を満たさない。
(iii)
$n=2$ のとき(10通り) 異なる2点の和 $w = z^j + z^k$ となる。 $w = z^j(1 + z^{k-j})$ と変形できる。 $|z^j| = 1$ であり、$z^{k-j}$ の偏角を $\pm \theta$ とすると、$\theta$ は $\frac{2\pi}{5}$ または $\frac{4\pi}{5}$ である。
$$ |w|^2 = |1 + \cos\theta + i\sin\theta|^2 = (1+\cos\theta)^2 + \sin^2\theta = 2 + 2\cos\theta $$
ここで、$|w| < 1 \iff |w|^2 < 1 \iff \cos\theta < -\frac{1}{2}$ である。 隣り合う2点($\theta = \frac{2\pi}{5}$)の場合、$\cos\frac{2\pi}{5} > 0 > -\frac{1}{2}$ より満たさない。(5通り) 一つ飛ばしの2点($\theta = \frac{4\pi}{5}$)の場合、$\frac{4\pi}{5} > \frac{2\pi}{3}$ より $\cos\frac{4\pi}{5} < \cos\frac{2\pi}{3} = -\frac{1}{2}$ となり、条件を満たす。(5通り) よって、$n=2$ のときは5通りが条件を満たす。
(iv)
$n=3$ のとき(10通り) $1+z+z^2+z^3+z^4=0$ より、5点すべての和は $0$ である。 選ばれなかった2点を $z^j, z^k$ とすると、$w + (z^j + z^k) = 0$ すなわち $w = -(z^j + z^k)$ となる。 $|w| = |- (z^j + z^k)| = |z^j + z^k|$ であるから、(iii)と全く同じ評価に帰着する。 すなわち、選ばれなかった2点が一つ飛ばしとなる5通りのみが $|w| < 1$ を満たす。
(v)
$n=4$ のとき(5通り) 選ばれなかった1点を $z^k$ とすると、$w + z^k = 0 \Rightarrow w = -z^k$ となる。 $|w| = |-z^k| = 1$ となり、$|w| < 1$ を満たさない。
(vi)
$n=5$ のとき(1通り) (1)より $w=0$ となり、$|w| < 1$ を満たす。
以上(i)〜(vi)より、$|w| < 1$ となるのは $1 + 5 + 5 + 1 = 12$ 通り。 求める確率は、
$$ \frac{12}{32} = \frac{3}{8} $$
解法2
(2)の別解として、方程式を解かずに図形的な評価のみで証明する方法を示す。
$w = z + z^4 = z + \overline{z} = 2\text{Re}(z)$ である。 $z$ の偏角は $\frac{2\pi}{5}$ であるから、
$$ w = 2\cos\frac{2\pi}{5} $$
ここで、$\frac{\pi}{3} < \frac{2\pi}{5} < \frac{\pi}{2}$ である。 $0 < x < \pi$ において $\cos x$ は単調減少であるから、
$$ \cos\frac{\pi}{2} < \cos\frac{2\pi}{5} < \cos\frac{\pi}{3} $$
$$ 0 < \cos\frac{2\pi}{5} < \frac{1}{2} $$
この各辺を2倍して、
$$ 0 < 2\cos\frac{2\pi}{5} < 1 $$
すなわち $0 < w < 1$ が得られる。 したがって、$|w| < 1$ であることが示された。
解説
複素数平面における正多角形の頂点と、相反方程式の典型的な処理を問う問題である。 (2) は解法2のような三角関数の大小比較を用いるのが最も簡潔だが、解法1のように $\cos\frac{2\pi}{5}$ の値を具体的に導出する手法も頻出であるため押さえておきたい。 (3) は $1+z+z^2+z^3+z^4=0$ の関係を活用し、「表が出た項を足す」ことを「裏が出た項を全体から引く」と読み替える(余事象的な発想)ことで、計算量を劇的に減らすことができる。これを理解していれば、図形的対称性から暗算に近い速度で見通しを立てることが可能である。
答え
(1)
$0$
(2)
$w^2+w-1=0$ より $w = \frac{\sqrt{5}-1}{2}$ となることや、図形的な評価から示される。
(3)
$\frac{3}{8}$
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