九州大学 1964年 文系 第3問 解説

方針・初手
- (1) は与えられた式を展開して $x$ についての2次式とみなし、それが完全平方式になるための条件、すなわち「判別式 $D = 0$」を利用する。
- (2) は (1) の結果が誘導となっている。2つの完全平方式の係数 $a$ と $c$ が入れ替わっていることに着目し、それぞれの条件式を立てて辺々を引くことで関係式を導く。
解法1
(1)
与えられた式を $x$ について整理する。
$$\begin{aligned} &a(x-p)^2 + b(x-q)^2 + c(x-r)^2 \\ &= a(x^2 - 2px + p^2) + b(x^2 - 2qx + q^2) + c(x^2 - 2rx + r^2) \\ &= (a+b+c)x^2 - 2(ap+bq+cr)x + ap^2+bq^2+cr^2 \end{aligned}$$
$a+b+c \neq 0$ より、これは $x$ についての2次式である。 これが $x$ の完全平方式となるための条件は、この2次式を0とおいた2次方程式の判別式を $D$ とすると、$D = 0$ となることである。
$$\frac{D}{4} = (ap+bq+cr)^2 - (a+b+c)(ap^2+bq^2+cr^2) = 0$$
この左辺を展開して整理する。
$$\begin{aligned} &(ap+bq+cr)^2 - (a+b+c)(ap^2+bq^2+cr^2) \\ &= (a^2p^2 + b^2q^2 + c^2r^2 + 2abpq + 2bcqr + 2capr) \\ &\quad - (a^2p^2 + abq^2 + acr^2 + bap^2 + b^2q^2 + bcr^2 + cap^2 + cbq^2 + c^2r^2) \\ &= -ab(p^2 - 2pq + q^2) - bc(q^2 - 2qr + r^2) - ca(r^2 - 2rp + p^2) \\ &= -ab(p-q)^2 - bc(q-r)^2 - ca(r-p)^2 \end{aligned}$$
したがって、条件式は次のようになる。
$$-ab(p-q)^2 - bc(q-r)^2 - ca(r-p)^2 = 0$$
両辺を $-abc$ ($abc \neq 0$)で割ると、次の式を得る。
$$\frac{(p-q)^2}{c} + \frac{(q-r)^2}{a} + \frac{(r-p)^2}{b} = 0$$
順序を入れ替えて、
$$\frac{1}{a}(q-r)^2 + \frac{1}{b}(r-p)^2 + \frac{1}{c}(p-q)^2 = 0$$
よって、求める式の値は 0 である。
(2)
$a(x-p)^2 + b(x-q)^2 + c(x-r)^2$ が完全平方式であるから、(1) の結果より次が成り立つ。
$$\frac{1}{a}(q-r)^2 + \frac{1}{b}(r-p)^2 + \frac{1}{c}(p-q)^2 = 0 \quad \cdots ①$$
また、$c(x-p)^2 + b(x-q)^2 + a(x-r)^2$ についても完全平方式であるから、①式において $a$ と $c$ を入れ替えた式が成り立つ。
$$\frac{1}{c}(q-r)^2 + \frac{1}{b}(r-p)^2 + \frac{1}{a}(p-q)^2 = 0 \quad \cdots ②$$
(イ) の証明
①から②を辺々引くと、
$$\left( \frac{1}{a} - \frac{1}{c} \right)(q-r)^2 + \left( \frac{1}{c} - \frac{1}{a} \right)(p-q)^2 = 0$$
共通因数で整理すると、
$$\frac{c-a}{ac} \left\{ (q-r)^2 - (p-q)^2 \right\} = 0$$
条件 $(a-c)(p-r) \neq 0$ より $a \neq c$ であるから $\frac{c-a}{ac} \neq 0$ となり、
$$(q-r)^2 - (p-q)^2 = 0$$
和と差の積に因数分解して、
$$\{ (q-r) + (p-q) \} \{ (q-r) - (p-q) \} = 0$$
$$(p-r)(2q-p-r) = 0$$
条件 $(a-c)(p-r) \neq 0$ より $p-r \neq 0$ であるから、
$$2q-p-r = 0$$
よって、$2q = p+r$ が成立する。
(ロ) の証明
(イ) の結果 $2q = p+r$ より、次のように変形できる。
$$q-r = \frac{p+r}{2} - r = \frac{p-r}{2}$$
$$p-q = p - \frac{p+r}{2} = \frac{p-r}{2}$$
これらを①式に代入する。
$$\frac{1}{a} \left( \frac{p-r}{2} \right)^2 + \frac{1}{b}(r-p)^2 + \frac{1}{c} \left( \frac{p-r}{2} \right)^2 = 0$$
$(r-p)^2 = (p-r)^2$ であることに注意して $(p-r)^2$ でくくると、
$$(p-r)^2 \left( \frac{1}{4a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{4c} \right) = 0$$
$p-r \neq 0$ より $(p-r)^2 \neq 0$ であるから、
$$\frac{1}{4a} + \frac{1}{b} + \frac{1}{4c} = 0$$
両辺に 4 を掛けると、
$$\frac{1}{a} + \frac{4}{b} + \frac{1}{c} = 0$$
よって成立する。
解説
- 「2次式が完全平方式になる」ための必要十分条件は、その2次式を $0$ とおいた方程式の判別式 $D$ が $0$ になることである。本問の出発点となる重要な知識である。
- (1) の展開計算において、ラグランジュの恒等式 $(a+b+c)(ax^2+by^2+cz^2) - (ax+by+cz)^2 = ab(x-y)^2 + bc(y-z)^2 + ca(z-x)^2$ の形を知っていると、計算の見通しが非常に良くなる。
- (2) は (1) の結果を利用する典型的な誘導問題である。文字が対称に入れ替わった2つの式が与えられた場合、式同士の和や差をとって因数分解に持ち込む手法が有効である。
答え
(1) $0$
(2) 解法に記載の通り証明された。
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