九州大学 1966年 文系 第5問 解説

方針・初手
(1) 三角関数の相互関係を用いて $\cos\theta$ を求める。このとき、$\theta$ の取りうる値の範囲が指定されていないため、$\cos\theta$ の符号が定まらず場合分けが必要になることに注意する。次に $\tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta}$ と $\tan(\pi - \theta) = -\tan\theta$ の性質を用いて値を計算する。
(2) 問題文の指示通り、数学的帰納法を用いて証明する。$n=k+1$ のときの導関数を計算する際、$f_{k+1}(x) = (1-x+x^2)f_k(x)$ とみて積の微分法を利用すると、帰納法の仮定 $f_k'(0) = -k$ を使いやすい。
解法1
(1)
$\sin\theta = \frac{4}{5}$ と三角関数の相互関係 $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ より、
$$\cos^2\theta = 1 - \sin^2\theta = 1 - \left(\frac{4}{5}\right)^2 = \frac{9}{25}$$
よって、$\cos\theta = \pm\frac{3}{5}$ である。
$\tan(\pi - \theta) = -\tan\theta = -\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$ であるから、$\cos\theta$ の値によって場合分けを行う。
(i) $\cos\theta = \frac{3}{5}$ のとき
$$\tan(\pi - \theta) = -\frac{\frac{4}{5}}{\frac{3}{5}} = -\frac{4}{3}$$
(ii) $\cos\theta = -\frac{3}{5}$ のとき
$$\tan(\pi - \theta) = -\frac{\frac{4}{5}}{-\frac{3}{5}} = \frac{4}{3}$$
(2)
$f_n(x) = (1 - x + x^2)^n$ に対して、$f_n'(0) = -n$ であることを数学的帰納法で証明する。
[1] $n=1$ のとき
$f_1(x) = 1 - x + x^2$ より、これを $x$ で微分すると
$$f_1'(x) = -1 + 2x$$
$x = 0$ を代入すると $f_1'(0) = -1$ となり、$n=1$ のとき成り立つ。
[2] $n=k$ ($k$ は自然数)のとき成り立つと仮定する。すなわち、
$$f_k'(0) = -k$$
と仮定する。
$n=k+1$ のとき、
$$f_{k+1}(x) = (1 - x + x^2)^{k+1} = (1 - x + x^2) f_k(x)$$
両辺を $x$ で微分すると、積の微分法より
$$f_{k+1}'(x) = (1 - x + x^2)' f_k(x) + (1 - x + x^2) f_k'(x) = (-1 + 2x)f_k(x) + (1 - x + x^2)f_k'(x)$$
$x=0$ を代入すると、
$$f_{k+1}'(0) = (-1) \cdot f_k(0) + 1 \cdot f_k'(0)$$
ここで、定義より $f_k(0) = (1 - 0 + 0^2)^k = 1$ であり、帰納法の仮定より $f_k'(0) = -k$ であるから、
$$f_{k+1}'(0) = (-1) \cdot 1 + 1 \cdot (-k) = -(k + 1)$$
よって、$n=k+1$ のときも成り立つ。
[1], [2] より、すべての自然数 $n$ について $f_n'(0) = -n$ である。(証明終)
解説
(1) は基本的な三角関数の計算問題である。$\sin\theta$ の値から $\cos\theta$ を求める際、$\theta$ の変域が与えられていないため、$\cos\theta$ が正負の $2$ 通りの値をとり得ることに気付けるかがポイントとなる。
(2) は関数列の微分に関する証明問題である。数学IIIの「合成関数の微分法」を用いれば、$f_n'(x) = n(1-x+x^2)^{n-1}(-1+2x)$ と計算でき、直ちに $f_n'(0) = -n$ を得ることができるが、本問は「数学的帰納法によって証明せよ」と指定されているため、それに従う必要がある。 帰納法を用いる意義として、数学IIの範囲(整式の積の微分法)だけで証明を完結させられる点が挙げられる。$f_{k+1}(x)$ を $(1-x+x^2)$ と $f_k(x)$ の積とみなし、積の微分法と帰納法の仮定を適用する流れは、漸化式を用いた関数の証明における典型的な手法である。
答え
(1) $\cos\theta = \frac{3}{5}$ のとき、$\tan(\pi - \theta) = -\frac{4}{3}$ $\cos\theta = -\frac{3}{5}$ のとき、$\tan(\pi - \theta) = \frac{4}{3}$
(2) 証明は解法1に記載の通り。
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