九州大学 1985年 文系 第1問 解説

方針・初手
与えられたベクトル方程式 $\vec{OR} = \vec{OP} + \vec{OQ}$ を $\vec{QR} = \vec{OP}$ と変形し、点 $P$ の動く条件を適用することで、点 $R$ が満たすべき幾何学的な条件を導く。
動点 $Q$ が正方形の周である集合 $N$ 上を動くとき、「点 $Q$ を中心とする半径 $a$ の円周」が通過する領域を求める問題に帰着する。円の内部を含まない「円周」の通過領域であるが、$N$ が閉曲線であることを利用して、点 $R$ から $N$ への最短距離と最長距離の観点から中間値の定理を用いると、見通しよく領域を特定できる。
解法1
$\vec{OR} = \vec{OP} + \vec{OQ}$ より、$\vec{QR} = \vec{OP}$ である。 点 $P$ は集合 $M = \{(x, y) \mid x^2 + y^2 = a^2\}$ 上を動くため、$|\vec{OP}| = a$ である。 したがって、点 $R$ の満たすべき条件は、
$$ |\vec{QR}| = a \quad \text{となる点 } Q \text{ が集合 } N \text{ 上に存在する} $$
ことである。
集合 $N$ は方程式 $|x| + |y| = 1$ で表され、これは4点 $A(1,0), B(0,1), C(-1,0), D(0,-1)$ を頂点とする正方形の周(境界線)であり、連結な閉曲線である。 点 $R$ を任意に一つ固定したとき、点 $Q$ を $N$ 上で動かすと、距離 $f(Q) = |\vec{QR}|$ は連続的に変化する。 したがって、$f(Q)$ の最小値を $d_{\text{min}}$、最大値を $d_{\text{max}}$ とすると、中間値の定理より、距離が $a$ となる点 $Q$ が存在するための必要十分条件は、
$$ d_{\text{min}} \le a \le d_{\text{max}} $$
となる。
ここで、$N$ は点 $A(1,0)$ と点 $C(-1,0)$ を含むため、任意の点 $R$ について三角不等式を適用すると、
$$ f(A) + f(C) = |\vec{AR}| + |\vec{CR}| \ge |\vec{AC}| = 2 $$
が成り立つ。よって、$f(A)$ と $f(C)$ の少なくとも一方は $1$ 以上であり、常に $d_{\text{max}} \ge 1$ であることがわかる。 問題の条件より $0 < a < 1$ であるから、$a \le d_{\text{max}}$ は平面上のすべての点 $R$ に対して常に成立する。
ゆえに、点 $R$ が求める領域に含まれる条件は、
$$ d_{\text{min}} \le a $$
のみとなる。これは「点 $R$ から図形 $N$ までの最短距離が $a$ 以下である領域」であることを意味する。
図形 $N$ は各辺の長さが $\sqrt{2}$ の正方形の周である。これからの最短距離が $a$ 以下となる領域を、外側と内側に分けて考える。
外側の境界は、$N$ の各辺を外側に距離 $a$ だけ平行移動した線分と、各頂点を中心とする半径 $a$ の四分円をつないだ図形になる。 この外側の境界が囲む面積 $S_{\text{out}}$ は、元の正方形の面積(対角線 $2$ より面積 $2$)と、4つの長方形(縦 $a$、横 $\sqrt{2}$)の面積、4つの四分円の面積の和であり、
$$ S_{\text{out}} = 2 + 4 \times (\sqrt{2}a) + \pi a^2 = 2 + 4\sqrt{2}a + \pi a^2 $$
となる。
内側については、原点 $O$ から $N$ の各辺までの距離が $\frac{1}{\sqrt{2}}$ であるため、$a$ の値によって領域の形状が変わる。
(i) $0 < a < \frac{1}{\sqrt{2}}$ のとき $\frac{1}{\sqrt{2}} - a > 0$ であり、$N$ の内側に、どの辺からの距離も $a$ より大きい領域(穴)が存在する。 各辺から内側へ距離 $a$ の直線を引くと、それらは $|x| + |y| = 1 - \sqrt{2}a$ で表される正方形をなす。この正方形の内部が、距離が $a$ より大きい「穴」となる。 この穴の面積 $S_{\text{in}}$ は、対角線の長さが $2(1 - \sqrt{2}a)$ の正方形の面積として計算できる。
$$ S_{\text{in}} = \frac{1}{2} \cdot \{2(1 - \sqrt{2}a)\}^2 = 2(1 - \sqrt{2}a)^2 = 2 - 4\sqrt{2}a + 4a^2 $$
したがって、求める図形の面積 $S$ は、
$$ S = S_{\text{out}} - S_{\text{in}} = (2 + 4\sqrt{2}a + \pi a^2) - (2 - 4\sqrt{2}a + 4a^2) = 8\sqrt{2}a + (\pi - 4)a^2 $$
図形は、外側が角の丸まった正方形で、内側に $|x| + |y| < 1 - \sqrt{2}a$ の正方形の穴が空いたドーナツ状の領域となる。
(ii) $\frac{1}{\sqrt{2}} \le a < 1$ のとき $\frac{1}{\sqrt{2}} - a \le 0$ であり、$N$ の内部のすべての点は、$N$ までの最短距離が $a$ 以下となる。 したがって内側に穴は存在せず、図形は外側の境界の内部全体となる。 求める図形の面積 $S$ は、
$$ S = S_{\text{out}} = 2 + 4\sqrt{2}a + \pi a^2 $$
図形は、内側に穴のない、角の丸まった正方形の領域全体となる。
解説
ベクトル和で定義された図形の通過領域を求める問題である。一般に、ある図形 $N$ の点を中心として円を動かすと、その通過領域は「ミンコフスキー和」と呼ばれる図形になる。
本問で受験生が悩みやすいのは、円板(中身の詰まった円)の通過領域ではなく、円周の通過領域である点だ。直感的には「帯状の図形になるから中は空洞になるのではないか」と思いがちだが、中間値の定理を用いて「最短距離から最長距離までのすべての距離をとり得る」ことを厳密に示すことで、内側の特定の「穴」を除いて中身が隙間なく塗りつぶされることを論理的に保証できる。
場合分けの境界となる $a = \frac{1}{\sqrt{2}}$ は、正方形の中心(原点)に届くための最小の半径を意味している。
答え
図形の説明は以下の通りである。 外側の境界は、正方形 $|x| + |y| = 1$ の各辺を外側に距離 $a$ だけ平行移動した線分と、各頂点を中心とする半径 $a$ の四分円を滑らかに結んだ閉曲線となる。
(i) $0 < a < \frac{1}{\sqrt{2}}$ のとき 図形は、上記の外側境界の内部から、正方形 $|x| + |y| < 1 - \sqrt{2}a$ の領域(穴)を除いた部分である。 面積は $8\sqrt{2}a + (\pi - 4)a^2$
(ii) $\frac{1}{\sqrt{2}} \le a < 1$ のとき 図形は、上記の外側境界の内部全体の領域である(穴はない)。 面積は $2 + 4\sqrt{2}a + \pi a^2$
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