東京工業大学 2003年 理系 第3問 解説

方針・初手
点 $R$ の位置ベクトル $\vec{AR}$ を、基底となる $\vec{AB}$ と $\vec{AC}$ を用いて表す。交点の位置ベクトルは、2つの線分上の点であることを用いて係数比較するか、メネラウスの定理等を用いて線分比を求めて導出する。その後、点 $R$ が $\triangle AMN$ に含まれる条件を、$\vec{AM}$ と $\vec{AN}$ の係数の和や正負に着目して不等式として立式する。最後に、得られた不等式が表す領域を図示し、定積分を用いて面積を計算する。
解法1
点 $R$ は線分 $BQ$ 上にあるので、実数 $s$ ($0 \leqq s \leqq 1$) を用いて次のように表せる。
$$ \vec{AR} = (1-s)\vec{AB} + s\vec{AQ} = (1-s)\vec{AB} + sy\vec{AC} $$
また、点 $R$ は線分 $CP$ 上にもあるので、実数 $t$ ($0 \leqq t \leqq 1$) を用いて次のように表せる。
$$ \vec{AR} = t\vec{AP} + (1-t)\vec{AC} = tx\vec{AB} + (1-t)\vec{AC} $$
$\triangle ABC$ において $\vec{AB} \neq \vec{0}$、$\vec{AC} \neq \vec{0}$ であり、$\vec{AB}$ と $\vec{AC}$ は一次独立であるから、係数を比較して以下の連立方程式を得る。
$$ \begin{cases} 1 - s = tx \\ sy = 1 - t \end{cases} $$
第1式より $s = 1 - tx$ である。これを第2式に代入する。
$$ (1 - tx)y = 1 - t $$
$$ t(1 - xy) = 1 - y $$
ここで、$0 \leqq x < 1$、$0 \leqq y < 1$ より $0 \leqq xy < 1$ であるから、$1 - xy \neq 0$ である。よって $t$ は次のように求まる。
$$ t = \frac{1 - y}{1 - xy} $$
同様にして $s = \frac{1 - x}{1 - xy}$ を得る。これらはともに $0$ 以上 $1$ 以下の実数である。したがって、点 $R$ の位置ベクトルは次のように定まる。
$$ \vec{AR} = \frac{x(1 - y)}{1 - xy}\vec{AB} + \frac{y(1 - x)}{1 - xy}\vec{AC} $$
次に、点 $R$ が $\triangle AMN$ に含まれる条件を求める。点 $M, N$ はそれぞれ辺 $AB, AC$ の中点であるから、$\vec{AM} = \frac{1}{2}\vec{AB}$、$\vec{AN} = \frac{1}{2}\vec{AC}$ である。これを $\vec{AR}$ の式に代入すると以下のようになる。
$$ \vec{AR} = \frac{2x(1 - y)}{1 - xy}\vec{AM} + \frac{2y(1 - x)}{1 - xy}\vec{AN} $$
点 $R$ が $\triangle AMN$ の内部または周上にあるための条件は、$\vec{AM}$ と $\vec{AN}$ の係数がともに $0$ 以上であり、かつその和が $1$ 以下となることである。 $0 \leqq x < 1$、$0 \leqq y < 1$、$1 - xy > 0$ であることから、各係数が $0$ 以上であることは常に満たされている。したがって、係数の和が $1$ 以下である条件を考えればよい。
$$ \frac{2x(1 - y)}{1 - xy} + \frac{2y(1 - x)}{1 - xy} \leqq 1 $$
両辺に正の値である $1 - xy$ を掛けて整理する。
$$ 2x - 2xy + 2y - 2xy \leqq 1 - xy $$
$$ 3xy - 2x - 2y + 1 \geqq 0 $$
両辺を $3$ で割り、因数分解の形に変形する。
$$ xy - \frac{2}{3}x - \frac{2}{3}y + \frac{1}{3} \geqq 0 $$
$$ \left( x - \frac{2}{3} \right) \left( y - \frac{2}{3} \right) - \frac{4}{9} + \frac{1}{3} \geqq 0 $$
$$ \left( x - \frac{2}{3} \right) \left( y - \frac{2}{3} \right) \geqq \frac{1}{9} $$
前提条件 $0 \leqq x < 1$、$0 \leqq y < 1$ のもとでこの不等式を満たす領域を調べる。 もし $x > \frac{2}{3}$ であれば、$x < 1$ より $0 < x - \frac{2}{3} < \frac{1}{3}$ となる。このとき不等式を満たすためには $y - \frac{2}{3} > \frac{1}{3}$ すなわち $y > 1$ となる必要があるが、これは $y < 1$ に反するため不適である。 よって $x < \frac{2}{3}$ でなければならず、対称性から同様に $y < \frac{2}{3}$ でなければならない。 このとき $x - \frac{2}{3} < 0$ であるから、両辺を $x - \frac{2}{3}$ で割ると不等号の向きが反転する。
$$ y - \frac{2}{3} \leqq \frac{1}{9 \left( x - \frac{2}{3} \right)} $$
$$ y \leqq \frac{2}{3} + \frac{1}{3(3x - 2)} = \frac{2(3x - 2) + 1}{3(3x - 2)} = \frac{6x - 3}{3(3x - 2)} = \frac{2x - 1}{3x - 2} $$
また、$y \geqq 0$ より $\frac{2x - 1}{3x - 2} \geqq 0$ であり、$x < \frac{2}{3}$ のもとでは分母が負であるため、分子も負または $0$ となる。すなわち $2x - 1 \leqq 0$ より $x \leqq \frac{1}{2}$ を得る。 以上より、求める領域は、連立不等式
$$ \begin{cases} 0 \leqq x \leqq \frac{1}{2} \\ 0 \leqq y \leqq \frac{2x - 1}{3x - 2} \end{cases} $$
が表す領域である。これは、$xy$ 平面において、曲線 $y = \frac{2x - 1}{3x - 2}$ と $x$ 軸および $y$ 軸で囲まれた領域であり、境界線を含む。
この領域の面積 $S$ を定積分を用いて求める。
$$ \begin{aligned} S &= \int_{0}^{\frac{1}{2}} \frac{2x - 1}{3x - 2} \, dx \\ &= \int_{0}^{\frac{1}{2}} \left( \frac{2}{3} + \frac{1}{3(3x - 2)} \right) \, dx \\ &= \left[ \frac{2}{3}x + \frac{1}{9} \log |3x - 2| \right]_{0}^{\frac{1}{2}} \\ &= \left( \frac{2}{3} \cdot \frac{1}{2} + \frac{1}{9} \log \left| \frac{3}{2} - 2 \right| \right) - \left( 0 + \frac{1}{9} \log |-2| \right) \\ &= \frac{1}{3} + \frac{1}{9} \log \frac{1}{2} - \frac{1}{9} \log 2 \\ &= \frac{1}{3} - \frac{2}{9} \log 2 \end{aligned} $$
解説
交点 $R$ の位置ベクトルを求める際、解答では実数パラメータを用いたオーソドックスな係数比較法を採用した。しかし、$\triangle ABQ$ と直線 $CP$ についてメネラウスの定理を適用することで、交点の線分比をより直接的に求めることも可能である。 定理より $\frac{BP}{PA} \cdot \frac{AC}{CQ} \cdot \frac{QR}{RB} = 1$ が成り立つため、$\frac{1-x}{x} \cdot \frac{1}{1-y} \cdot \frac{QR}{RB} = 1$ から $BR : RQ = (1-x) : x(1-y)$ を導くことができ、これを利用しても同様に $\vec{AR}$ を求められる。 不等式から図示する領域を特定する場面では、$x, y$ の変域の制約から双曲線の片側の枝のみが該当することを正確に議論する必要がある。積分の計算においては、被積分関数である分数関数を「(多項式)+(分子が定数の分数関数)」の形に分割する帯分数化の処理が必須となる。
答え
図示する領域は、$xy$ 平面上の $0 \leqq x \leqq \frac{1}{2}$ における曲線 $y = \frac{2x - 1}{3x - 2}$ と、$x$ 軸および $y$ 軸で囲まれた部分である(境界線を含む)。
その面積は $\frac{1}{3} - \frac{2}{9} \log 2$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











