九州大学 1961年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) 与えられた3つの値は、関数 $f(t) = \frac{a+t}{b+t}$ に対してそれぞれ $t=0, x, x'$ を代入したものとみなせる。分子の次数を下げて $f(t) = 1 + \frac{C}{b+t}$ の形に変形し、$a$ と $b$ の大小関係によって関数の増減がどう変わるかを調べる。
(2) 対数の「指標」という用語が用いられていることから、対数は底が $10$ の常用対数 $\log_{10}$ として扱う。正の実数 $A$ に対して $\log_{10} A$ の指標が $0$ であるとは、$0 \leqq \log_{10} A < 1$ を満たすことと同値である。この不等式から $a$ の範囲を求め、続いて $m$ の範囲を絞り込む。
解法1
(1)
関数 $f(t) = \frac{a+t}{b+t}$ ($t \geqq 0$) を考える。 分子の次数を下げて変形すると、
$$f(t) = \frac{b+t+a-b}{b+t} = 1 + \frac{a-b}{b+t}$$
となる。 $a, b$ は正の数であるから、$t \geqq 0$ の範囲において、分母の $b+t$ は正であり、$t$ の増加とともに単調に増加する。 したがって、分子の $a-b$ の符号によって関数 $f(t)$ の増減が変わる。 問題の条件より $a, b$ は異なる数であるため、$a \neq b$ であり、以下の2つの場合に分けて考える。
(i) $a > b$ のとき $a-b > 0$ であるから、$\frac{a-b}{b+t}$ は $t$ の増加とともに単調に減少する。 よって、$f(t)$ は $t \geqq 0$ において単調に減少する。 $0 < x < x'$ の関係があるから、$f(0) > f(x) > f(x')$ が成り立つ。 $f(0) = \frac{a}{b}$ であるから、大きさの順は
$$\frac{a}{b} > \frac{a+x}{b+x} > \frac{a+x'}{b+x'}$$
となる。
(ii) $a < b$ のとき $a-b < 0$ であるから、$\frac{a-b}{b+t}$ は負の値をとりながら $t$ の増加とともに単調に増加する( $0$ に近づいていく)。 よって、$f(t)$ は $t \geqq 0$ において単調に増加する。 $0 < x < x'$ の関係があるから、$f(0) < f(x) < f(x')$ が成り立つ。 大きさの順は
$$\frac{a}{b} < \frac{a+x}{b+x} < \frac{a+x'}{b+x'}$$
となる。
後半の問いについて、以上の結果から、関数 $f(x) = \frac{a+x}{b+x}$ の変化については、$x>0$ において $a > b$ のときは単調に減少し、$a < b$ のときは単調に増加することを表している。
(2)
対数の底を $10$ とする。 $\log_{10} a$ の指標が $0$ になるための条件は、
$$0 \leqq \log_{10} a < 1$$
が成り立つことである。 底 $10$ は $1$ より大きいので、真数の大小を比較して、
$$10^0 \leqq a < 10^1$$
すなわち
$$1 \leqq a < 10$$
となる。 問題の条件から $a = \log_{10} m$ であるから、これを代入して、
$$1 \leqq \log_{10} m < 10$$
再び底 $10 > 1$ より、
$$10^1 \leqq m < 10^{10}$$
すなわち
$$10 \leqq m < 10^{10}$$
$m$ は正の整数であるから、この不等式を満たす整数 $m$ の個数を求めればよい。 不等式を満たす最大の整数は $10^{10} - 1$ であり、最小の整数は $10$ であるから、その個数は
$$(10^{10} - 1) - 10 + 1 = 10^{10} - 10$$
となる。
解説
(1) は分数関数の基本的な性質である単調性を問う問題である。変数の入った項が分子と分母の両方にあると変化が掴みにくいため、分子にのみ定数が残るように式変形を行う(いわゆる「帯分数化」)ことで、関数の増減を視覚的にも論理的にも明らかにするのが定石である。この変形は分数関数のグラフを描く際や極限を求める際にも頻繁に用いられる。
(2) は常用対数の「指標」の定義を正しく理解しているかが問われている。現在では高校数学で「指標」「仮数」といった用語が積極的に使われることは少なくなったが、指標が $n$ であることは、対数値の整数部分が $n$ であること、あるいは元の数が $n+1$ 桁($n \geqq 0$ の場合)であることと同義である。基本通りに不等式を立てれば、あとは指数と対数の関係を用いて処理するだけである。整数の個数を数える際の「(最大値)-(最小値)+1」の計算ミスには注意したい。
答え
(1) $a > b$ のとき、 $\frac{a}{b} > \frac{a+x}{b+x} > \frac{a+x'}{b+x'}$ の順に並ぶ。 $a < b$ のとき、 $\frac{a}{b} < \frac{a+x}{b+x} < \frac{a+x'}{b+x'}$ の順に並ぶ。 この結果は、関数 $f(x) = \frac{a+x}{b+x}$ が $x>0$ において、$a>b$ ならば単調に減少し、$a<b$ ならば単調に増加することを表している。
(2) $10^{10} - 10$ 個
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