東京工業大学 1999年 理系 第1問 解説

方針・初手
与えられた $A$ と $B$ の式を見ると、それぞれ「和の $p$ 乗」と「$p$ 乗の和」に関連する形をしている。このような式において対称性がある場合は、関数 $f(x) = x^p$ のグラフの凹凸(凸性)を利用するか、文字を消去して1変数の関数として微分法を用いるのが定石である。正の実数 $p$ の値によって関数の凹凸が変化するため、$p > 1$、$p = 1$、$0 < p < 1$ の3つの場合に場合分けして調べる。
解法1
関数 $f(x) = x^p$ ($x > 0$)を考える。
$f(x)$ の導関数および第2次導関数は
$$ f'(x) = p x^{p-1} $$
$$ f''(x) = p(p-1) x^{p-2} $$
である。正の実数 $p$ の値によって $f''(x)$ の符号が変わるため、以下の3つの場合に分ける。
(i) $p > 1$ のとき
$x > 0$ において $f''(x) > 0$ であるから、関数 $f(x)$ は下に凸である。
したがって、任意の正の実数 $a, b$ について
$$ \frac{f(a) + f(b)}{2} \ge f\left(\frac{a+b}{2}\right) $$
が成り立つ。等号が成立するのは $a = b$ のときのみである。
これに $f(x) = x^p$ を代入すると
$$ \frac{a^p + b^p}{2} \ge \left(\frac{a+b}{2}\right)^p $$
両辺に $2^p$ を掛けると
$$ 2^{p-1} (a^p + b^p) \ge (a+b)^p $$
すなわち、$A \le B$ が成り立つ。等号成立は $a = b$ のときである。
(ii) $p = 1$ のとき
与式に $p=1$ を代入すると
$$ A = (a + b)^1 = a + b $$
$$ B = 2^{1-1}(a^1 + b^1) = a + b $$
よって、$A = B$ が成り立つ。
(iii) $0 < p < 1$ のとき
$x > 0$ において $f''(x) < 0$ であるから、関数 $f(x)$ は上に凸である。
したがって、任意の正の実数 $a, b$ について
$$ \frac{f(a) + f(b)}{2} \le f\left(\frac{a+b}{2}\right) $$
が成り立つ。等号が成立するのは $a = b$ のときのみである。
これに $f(x) = x^p$ を代入すると
$$ \frac{a^p + b^p}{2} \le \left(\frac{a+b}{2}\right)^p $$
両辺に $2^p$ を掛けると
$$ 2^{p-1} (a^p + b^p) \le (a+b)^p $$
すなわち、$A \ge B$ が成り立つ。等号成立は $a = b$ のときである。
解法2
差をとって微分法を用いる。
$a > 0, b > 0$ より $A$ と $B$ の大小関係は、両辺を $b^p$ で割った $\frac{A}{b^p}$ と $\frac{B}{b^p}$ の大小関係と一致する。
$x = \frac{a}{b}$ とおくと、$a, b$ は正の実数であるから $x > 0$ である。
$$ \frac{A}{b^p} = \left(\frac{a}{b} + 1\right)^p = (x+1)^p $$
$$ \frac{B}{b^p} = 2^{p-1}\left\{ \left(\frac{a}{b}\right)^p + 1 \right\} = 2^{p-1}(x^p+1) $$
関数 $g(x) = 2^{p-1}(x^p+1) - (x+1)^p$ ($x > 0$)を定義し、この符号を調べる。
$$ g'(x) = 2^{p-1} \cdot p x^{p-1} - p(x+1)^{p-1} = p \left\{ (2x)^{p-1} - (x+1)^{p-1} \right\} $$
$g'(x) = 0$ となる条件を考えると、$p \neq 1$ のとき $(2x)^{p-1} = (x+1)^{p-1}$ となり、両辺の底を比較して $2x = x+1$ すなわち $x = 1$ を得る。
(i) $p > 1$ のとき
$p - 1 > 0$ であるから、$0 < x < 1$ のとき $2x < x+1$ より $(2x)^{p-1} < (x+1)^{p-1}$ となり、$g'(x) < 0$ である。
$x > 1$ のとき $2x > x+1$ より $(2x)^{p-1} > (x+1)^{p-1}$ となり、$g'(x) > 0$ である。
よって $g(x)$ は $x=1$ で極小かつ最小となり、最小値は
$$ g(1) = 2^{p-1}(1+1) - 2^p = 0 $$
である。したがって $g(x) \ge 0$、すなわち $A \le B$ が成り立つ。等号成立は $x=1$、つまり $a=b$ のとき。
(ii) $p = 1$ のとき
$g(x) = 2^0(x+1) - (x+1) = 0$ となるため、$x$ の値によらず $A = B$ である。
(iii) $0 < p < 1$ のとき
$p - 1 < 0$ であるため、累乗の大小関係が逆転する。
$0 < x < 1$ のとき $2x < x+1$ より $(2x)^{p-1} > (x+1)^{p-1}$ となり、$g'(x) > 0$ である。
$x > 1$ のとき $2x > x+1$ より $(2x)^{p-1} < (x+1)^{p-1}$ となり、$g'(x) < 0$ である。
よって $g(x)$ は $x=1$ で極大かつ最大となり、最大値は $g(1) = 0$ である。
したがって $g(x) \le 0$、すなわち $A \ge B$ が成り立つ。等号成立は $x=1$、つまり $a=b$ のとき。
解説
「関数の平均」と「平均の関数」の大小を比較する「イェンセンの不等式(Jensen's inequality)」を背景とした問題である。関数のグラフが下に凸であれば、2点を結ぶ線分は常にグラフの上側にくるため、「平均での関数の値」よりも「関数の値の平均」の方が大きくなる。本問では $f(x)=x^p$ のグラフの凹凸が $p=1$ を境に入れ替わる性質を用いている。
解法1のように凸性を利用すると非常に見通しよく解答できるが、解法2のように同次式であることを利用して1変数の関数に帰着させて微分する手法も、不等式の証明における汎用的な定石として習熟しておく必要がある。
答え
$p > 1$ のとき、$A \le B$ (等号成立は $a=b$ のとき)
$p = 1$ のとき、$A = B$
$0 < p < 1$ のとき、$A \ge B$ (等号成立は $a=b$ のとき)
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