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九州大学 1993年 理系 第5問 解説

数学C/式と曲線数学3/微分法数学3/積分法テーマ/面積・体積
九州大学 1993年 理系 第5問 解説

方針・初手

点 $Q$ が満たすべき図形的な条件(点 $P$ との距離が一定であること、および速度ベクトルの向き)を数式に翻訳します。 (1) では、与えられた2つの条件から媒介変数 $t$ を消去し、$\frac{dy}{dx}$ を $x$ と $y$ の関係式として導きます。 (2) では、(1) で得られた $\frac{dy}{dx}$ の式を $\frac{dx}{dy}$ の形に直し、置換積分法を用いて面積を $y$ についての定積分として計算します。

解法1

(1)

時刻 $t=0$ において、点 $P$ の座標は $(0, 0)$、点 $Q$ の座標は $(0, 1)$ であるから、点 $P$ と点 $Q$ の距離 $PQ$ は

$$PQ = \sqrt{(0-0)^2 + (1-0)^2} = 1$$

である。 点 $Q$ は点 $P$ との距離を一定に保ちながら進むため、任意の時刻 $t$ においても $PQ = 1$ が成り立つ。 したがって、点 $P(t, 0)$ と点 $Q(x, y)$ の距離について

$$(t-x)^2 + y^2 = 1$$

が成り立つ。これを変形すると

$$(t-x)^2 = 1-y^2$$

となる。 点 $Q$ は原点から正の方向に進む点 $P$ に向かって追従するため、常に $x \le t$ が成り立つ。したがって

$$t-x = \sqrt{1-y^2}$$

となる。

次に、点 $Q$ の速度ベクトル $\left( \frac{dx}{dt}, \frac{dy}{dt} \right)$ は、ベクトル $\overrightarrow{QP} = (t-x, -y)$ と平行である。 したがって、

$$\frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}} = \frac{-y}{t-x}$$

すなわち

$$\frac{dy}{dx} = -\frac{y}{t-x}$$

が成り立つ。 この式の分母に $t-x = \sqrt{1-y^2}$ を代入すると

$$\frac{dy}{dx} = -\frac{y}{\sqrt{1-y^2}}$$

となり、示された。

(2)

点 $Q$ の描く曲線と $x$ 軸、直線 $x=a$ および直線 $x=b$ により囲まれる領域の面積を $S$ とすると、面積 $S$ は

$$S = \int_a^b y \,dx$$

で表される。 (1) の結果より

$$dx = -\frac{\sqrt{1-y^2}}{y} \,dy$$

である。 また、点 $Q$ の $x$ 座標が $a$ から $b$ まで変化するとき、$y$ 座標は $\frac{\sqrt{3}}{2}$ から $\frac{1}{2}$ まで変化する。 よって、これを $y$ についての積分に置換すると

$$S = \int_{\frac{\sqrt{3}}{2}}^{\frac{1}{2}} y \left( -\frac{\sqrt{1-y^2}}{y} \right) \,dy$$

$$S = \int_{\frac{1}{2}}^{\frac{\sqrt{3}}{2}} \sqrt{1-y^2} \,dy$$

となる。 ここで、$y = \sin \theta$ とおく。

$$dy = \cos \theta \,d\theta$$

であり、$y$ が $\frac{1}{2}$ から $\frac{\sqrt{3}}{2}$ まで変化するとき、$\theta$ は $\frac{\pi}{6}$ から $\frac{\pi}{3}$ まで変化する。 区間 $\frac{\pi}{6} \le \theta \le \frac{\pi}{3}$ において $\cos \theta > 0$ であるから

$$\sqrt{1-y^2} = \sqrt{1-\sin^2 \theta} = \sqrt{\cos^2 \theta} = \cos \theta$$

となる。これらを代入して定積分を計算する。

$$S = \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}} \cos \theta \cdot \cos \theta \,d\theta$$

$$S = \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}} \cos^2 \theta \,d\theta$$

半角の公式 $\cos^2 \theta = \frac{1+\cos 2\theta}{2}$ を用いると

$$S = \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}} \frac{1+\cos 2\theta}{2} \,d\theta$$

$$S = \left[ \frac{1}{2} \theta + \frac{1}{4} \sin 2\theta \right]_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}}$$

$$S = \left( \frac{\pi}{6} + \frac{1}{4} \sin \frac{2\pi}{3} \right) - \left( \frac{\pi}{12} + \frac{1}{4} \sin \frac{\pi}{3} \right)$$

$$S = \left( \frac{\pi}{6} + \frac{\sqrt{3}}{8} \right) - \left( \frac{\pi}{12} + \frac{\sqrt{3}}{8} \right)$$

$$S = \frac{\pi}{12}$$

したがって、求める領域の面積は $\frac{\pi}{12}$ である。

解説

本問の点 $Q$ が描く曲線は「トラクトリックス(牽引線)」と呼ばれる有名な曲線です。 (1) で得られた微分方程式を積分して曲線の関数 $x = f(y)$ を直接求めることも可能ですが、式が非常に複雑になります。 (2) の面積計算においては、曲線の式を陽に求める必要はありません。(1) で求めた $\frac{dy}{dx}$ の式を利用して $dx$ を $dy$ で表し、$x$ についての積分を $y$ についての積分に変換する置換積分が非常に有効です。 積分 $\int \sqrt{1-y^2} \,dy$ は、半径 $1$ の円の面積の一部を表す定積分として頻出の形であり、$y = \sin \theta$ と置換する定石の処理で容易に計算できます。

答え

(1) 略(解答内の導出を参照) (2) $\frac{\pi}{12}$

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