九州大学 1993年 理系 第4問 解説

方針・初手
行列 $A$ が表す 1 次変換による点の移動を数式で表し、その座標間の関係式を導く。 変換前の点を $(x, y)$、変換後の点を $(X, Y)$ とおき、関係式から $X+Y$ と $X-Y$ を計算すると見通しよく進めることができる。 (2)の回転移動については、回転の一次変換を利用して $(X, Y)$ と新しい座標 $(u, v)$ の関係を導く。 (3)では、得られた変換の式において定数 $(x_0, y_0)$ と変数 $t>0$ の関係とみなし、$t$ を消去して $X, Y$ の軌跡を求める。その際、ゼロ割りを防ぐための場合分けや、$t>0$ による軌跡の範囲に注意する。
解法1
(1)
単位円 $x^2+y^2=1$ 上の点 $(x, y)$ が行列 $A$ の表す 1 次変換によって点 $(X, Y)$ に移るとする。
$$\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \frac{1}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right) & \frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right) \\ \frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right) & \frac{1}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right) \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$$
行列の積を計算すると、以下の連立方程式を得る。
$$\begin{cases} X = \frac{1}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right)x + \frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right)y \\ Y = \frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right)x + \frac{1}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right)y \end{cases}$$
2式の和と差をそれぞれとると、次のように簡潔な式になる。
$$\begin{aligned} X+Y &= t(x+y) \\ X-Y &= \frac{1}{t}(x-y) \end{aligned}$$
ここで、点 $(x, y)$ は $x^2+y^2=1$ を満たすので、恒等式 $(x+y)^2 + (x-y)^2 = 2(x^2+y^2)$ に代入して、
$$(x+y)^2 + (x-y)^2 = 2$$
先ほど導いた和と差の式より $x+y = \frac{X+Y}{t}$、$x-y = t(X-Y)$ をこれに代入すると、
$$\frac{(X+Y)^2}{t^2} + t^2(X-Y)^2 = 2$$
これを展開・整理して像 $C$ を表す式を求める。
$$\frac{X^2+2XY+Y^2}{t^2} + t^2(X^2-2XY+Y^2) = 2$$
$$\left(t^2+\frac{1}{t^2}\right)(X^2+Y^2) - 2\left(t^2-\frac{1}{t^2}\right)XY = 2$$
したがって、像 $C$ を表す式は以下の通り。
$$\left(t^2+\frac{1}{t^2}\right)(x^2+y^2) - 2\left(t^2-\frac{1}{t^2}\right)xy = 2$$
(2)
曲線 $C$ 上の点 $(X, Y)$ を原点のまわりに $45^\circ$ 回転した点を $(u, v)$ とすると、回転の 1 次変換は次のように表される。
$$\begin{pmatrix} u \\ v \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \cos 45^\circ & -\sin 45^\circ \\ \sin 45^\circ & \cos 45^\circ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix}$$
これより、以下の関係式を得る。
$$\begin{aligned} u &= \frac{1}{\sqrt{2}}(X-Y) \\ v &= \frac{1}{\sqrt{2}}(X+Y) \end{aligned}$$
すなわち、$\sqrt{2}u = X-Y$、$\sqrt{2}v = X+Y$ である。これを (1) で得た変形前の式 $\frac{(X+Y)^2}{t^2} + t^2(X-Y)^2 = 2$ に代入する。
$$\frac{(\sqrt{2}v)^2}{t^2} + t^2(\sqrt{2}u)^2 = 2$$
$$\frac{2v^2}{t^2} + 2t^2 u^2 = 2$$
両辺を $2$ で割って整理すると、
$$t^2 u^2 + \frac{v^2}{t^2} = 1$$
したがって、求める曲線の式は以下のようになる。
$$t^2 x^2 + \frac{y^2}{t^2} = 1$$
(3)
単位円上の定点 $P_0(x_0, y_0)$ が行列 $A$ によって点 $(X, Y)$ に移るとすると、(1) と同様にして以下の関係が成り立つ。
$$\begin{aligned} X+Y &= t(x_0+y_0) \\ X-Y &= \frac{1}{t}(x_0-y_0) \end{aligned}$$
$t$ は正の数全体を動く。これら 2 式の辺々を掛け合わせると、$t$ が消去される。
$$(X+Y)(X-Y) = x_0^2 - y_0^2$$
$$X^2 - Y^2 = x_0^2 - y_0^2$$
定点 $P_0$ は単位円上の点であるため $x_0^2+y_0^2=1$ を満たす。ここから $P_0$ の位置によって場合分けをして、軌跡の範囲を調べる。
(i) $x_0^2 \neq y_0^2$ のとき
$X^2 - Y^2 = x_0^2 - y_0^2 \neq 0$ となり、軌跡は双曲線の一部となる。 ここで、$t > 0$ であるため、$X+Y$ と $x_0+y_0$ の符号は一致する。また、$t$ が正の実数全体を動くとき、$X+Y$ は $0$ を除いてその符号の実数全体をとり得る。
- $x_0+y_0 > 0$ のとき:軌跡は双曲線 $x^2-y^2 = x_0^2-y_0^2$ のうち $x+y > 0$ を満たす部分。
- $x_0+y_0 < 0$ のとき:軌跡は双曲線 $x^2-y^2 = x_0^2-y_0^2$ のうち $x+y < 0$ を満たす部分。
(ii) $x_0 = y_0$ のとき
単位円上の点より、$P_0\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ または $P_0\left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ である。 このとき $X-Y = 0$ すなわち $Y = X$ となる。 $X+Y = 2x_0 t$ に $Y=X$ を代入すると、$2X = 2x_0 t$ より $X = x_0 t$ を得る。 $t > 0$ より、$X$ と $x_0$ は同符号である。
- $P_0\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:軌跡は半直線 $y = x \ (x > 0)$。
- $P_0\left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:軌跡は半直線 $y = x \ (x < 0)$。
(iii) $x_0 = -y_0$ のとき
単位円上の点より、$P_0\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ または $P_0\left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ である。 このとき $X+Y = 0$ すなわち $Y = -X$ となる。 $X-Y = \frac{2x_0}{t}$ に $Y=-X$ を代入すると、$2X = \frac{2x_0}{t}$ より $X = \frac{x_0}{t}$ を得る。 $t > 0$ より、$X$ と $x_0$ は同符号である。
- $P_0\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:軌跡は半直線 $y = -x \ (x > 0)$。
- $P_0\left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:軌跡は半直線 $y = -x \ (x < 0)$。
解説
行列 $A$ は、対称行列であり、直交行列で対角化することでその幾何学的意味を捉えやすくすることができる。(2)の $45^\circ$ 回転がまさにその対角化に対応しており、元の変換が主軸を $45^\circ$ 傾けた楕円を生成する変換であることが明らかになる。 和と差をそれぞれ文字でおくことで計算が非常にスムーズになるという、2次曲線の標準化に関する典型的な処理が求められている。(3)の軌跡問題では、$t$ を消去するだけでなく、$t>0$ という条件から軌跡の範囲を絞り込むこと、さらに定点 $P_0$ の座標による場合分けを漏れなく行うことが重要である。
答え
(1)
$$\left(t^2+\frac{1}{t^2}\right)(x^2+y^2) - 2\left(t^2-\frac{1}{t^2}\right)xy = 2$$
(または $\frac{(x+y)^2}{t^2} + t^2(x-y)^2 = 2$ など同値な式)
(2)
$$t^2 x^2 + \frac{y^2}{t^2} = 1$$
(3)
点 $P_0(x_0, y_0)$ の位置により以下のようになる。
- $x_0^2 \neq y_0^2$ かつ $x_0+y_0 > 0$ のとき:双曲線 $x^2-y^2 = x_0^2-y_0^2$ のうち $x+y > 0$ の部分
- $x_0^2 \neq y_0^2$ かつ $x_0+y_0 < 0$ のとき:双曲線 $x^2-y^2 = x_0^2-y_0^2$ のうち $x+y < 0$ の部分
- $(x_0, y_0) = \left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:半直線 $y = x \ (x > 0)$
- $(x_0, y_0) = \left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:半直線 $y = x \ (x < 0)$
- $(x_0, y_0) = \left(\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:半直線 $y = -x \ (x > 0)$
- $(x_0, y_0) = \left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ のとき:半直線 $y = -x \ (x < 0)$
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