九州大学 1994年 理系 第2問 解説

方針・初手
- (1) 2次正方行列の累乗に関する等式が与えられているため、ケイリー・ハミルトンの定理を適用する。$A = kE$ となる場合を背理法で除外して結論を導く。
- (2) (1) で得られた関係式 $a+d=0$、$ad-bc=-1$ と、点の移動条件 $f(7, -1) = (-1, -7)$ を用いて、成分についての連立方程式を立てる。
- (3) 「原点を通る直線が不変である」とは、その直線上の任意の点が、変換後も同じ直線上にあるということである。直線を $y=mx$ または $x=0$ とおき、変換後の点が直線の方程式を満たすような条件を求める。
解法1
(1)
ケイリー・ハミルトンの定理より、
$$A^2 - (a+d)A + (ad-bc)E = O$$
仮定より $A^2 = E$ であるから、代入して整理すると、
$$E - (a+d)A + (ad-bc)E = O$$
$$(a+d)A = (1 + ad - bc)E$$
ここで、$a+d \neq 0$ と仮定する。このとき、両辺を $a+d$ で割ると、
$$A = \frac{1+ad-bc}{a+d}E$$
となり、実数 $k$ を用いて $A = kE$ と表せる。 これを $A^2 = E$ に代入すると、
$$(kE)^2 = E \iff k^2E = E \iff k^2 = 1 \iff k = \pm 1$$
よって $A = \pm E$ となるが、これは問題の仮定 $A \neq \pm E$ に矛盾する。
したがって、$a+d = 0$ でなければならない。 これを元の式に代入すると、
$$O = (1+ad-bc)E$$
となる。$E \neq O$ であるから、
$$1+ad-bc = 0 \iff ad-bc = -1$$
が成り立つ。
(2)
(1) より、$a+d = 0$ すなわち $d = -a$ が成り立つので、行列 $A$ は次のように表せる。
$$A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & -a \end{pmatrix}$$
また、$ad-bc = -1$ より、
$$-a^2 - bc = -1 \iff a^2 + bc = 1$$
条件 $f(7, -1) = (-1, -7)$ を行列の積で表すと、
$$\begin{pmatrix} a & b \\ c & -a \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 7 \\ -1 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -1 \\ -7 \end{pmatrix}$$
左辺を計算して成分を比較すると、
$$\begin{cases} 7a - b = -1 \\ 7c + a = -7 \end{cases}$$
これを $b, c$ について解くと、
$$b = 7a + 1$$
$$c = \frac{-a-7}{7}$$
これらを $a^2 + bc = 1$ に代入する。
$$a^2 + (7a+1) \cdot \frac{-a-7}{7} = 1$$
両辺を $7$ 倍して整理する。
$$7a^2 + (7a+1)(-a-7) = 7$$
$$7a^2 - 7a^2 - 49a - a - 7 = 7$$
$$-50a = 14 \iff a = -\frac{7}{25}$$
この $a$ の値を $b, c$ の式に代入する。
$$b = 7 \left( -\frac{7}{25} \right) + 1 = -\frac{49}{25} + \frac{25}{25} = -\frac{24}{25}$$
$$c = \frac{1}{7} \left( \frac{7}{25} - 7 \right) = \frac{1}{25} - 1 = -\frac{24}{25}$$
よって、求める行列 $A$ は、
$$A = \begin{pmatrix} -\frac{7}{25} & -\frac{24}{25} \\ -\frac{24}{25} & \frac{7}{25} \end{pmatrix}$$
(3)
原点を通る直線 $l$ が $f$ によって不変であるとする。 まず、直線 $l$ が $y$ 軸($x=0$)であると仮定する。この上の点 $(0, t)$ の $f$ による像は、
$$A \begin{pmatrix} 0 \\ t \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac{7}{25} & -\frac{24}{25} \\ -\frac{24}{25} & \frac{7}{25} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 0 \\ t \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac{24}{25}t \\ \frac{7}{25}t \end{pmatrix}$$
これが再び $y$ 軸上にあるためには $x$ 成分が $0$ である必要があるが、$t \neq 0$ のとき $-\frac{24}{25}t \neq 0$ となり不適である。よって、直線 $l$ は $y$ 軸ではない。
したがって、直線 $l$ の方程式を $y=mx$ とおくことができる。 $l$ 上の点 $(x, mx)$ の $f$ による像を $(X, Y)$ とすると、
$$\begin{pmatrix} X \\ Y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac{7}{25} & -\frac{24}{25} \\ -\frac{24}{25} & \frac{7}{25} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ mx \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -\frac{7}{25}x - \frac{24}{25}mx \\ -\frac{24}{25}x + \frac{7}{25}mx \end{pmatrix}$$
この像 $(X, Y)$ が再び直線 $y=mx$ 上にあるための条件は $Y = mX$ である。
$$-\frac{24}{25}x + \frac{7}{25}mx = m \left( -\frac{7}{25}x - \frac{24}{25}mx \right)$$
これが任意の $x$ について成り立つので、両辺を $-\frac{x}{25}$ で割って整理すると($x \neq 0$ として)、
$$24 - 7m = m(7 + 24m)$$
$$24 - 7m = 7m + 24m^2$$
$$24m^2 + 14m - 24 = 0$$
両辺を $2$ で割って因数分解する。
$$12m^2 + 7m - 12 = 0$$
$$(4m - 3)(3m + 4) = 0$$
$$m = \frac{3}{4}, \quad -\frac{4}{3}$$
よって、求める直線の方程式は $y = \frac{3}{4}x$ と $y = -\frac{4}{3}x$ である。
解説
- (1) は、2次正方行列 $A$ が $A^2=E$ ($A \neq \pm E$) を満たすとき、トレース $a+d=0$ かつ行列式 $ad-bc=-1$ になるという重要な性質の証明である。これは折り返し(鏡映)の1次変換が持つ特徴である。
- (2) は、成分の連立方程式を解く標準的な問題である。得られた行列が $A^2=E$ を満たしているかを確認することで、計算ミスを防ぐことができる。
- (3) における「不変な直線」とは、直線上の点が変換によってその直線の外に飛び出さないことを意味する。これは、行列 $A$ の固有ベクトルがなす直線を求めることと同値である。本問の行列は折り返し変換を表すため、折り返しの軸となる直線とその垂線が不変な直線として現れる。
答え
(1) 略(本文中に証明)
(2)
$$A = \begin{pmatrix} -\frac{7}{25} & -\frac{24}{25} \\ -\frac{24}{25} & \frac{7}{25} \end{pmatrix}$$
(3)
$$y = \frac{3}{4}x, \quad y = -\frac{4}{3}x$$
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