九州大学 2011年 理系 第3問 解説

方針・初手
与えられた漸化式 $a_{n+1} = \frac{2a_n}{1 - a_n^2}$ は、正接($\tan$)の2倍角の公式 $\tan 2\theta = \frac{2\tan\theta}{1 - \tan^2\theta}$ と同じ形をしていることに着目する。$a_1 = \tan\theta_1$ とおける場合、帰納的に $a_n = \tan(2^{n-1}\theta_1)$ と一般項を求めることができる。これを利用して各問を解き進める。
解法1
(1)
$a_1 = \frac{1}{\sqrt{3}} = \tan \frac{\pi}{6}$ である。 $a_n = \tan \theta_n$ とおくと、与えられた漸化式は以下のようになる。
$$ \tan \theta_{n+1} = \frac{2\tan \theta_n}{1 - \tan^2 \theta_n} $$
正接の2倍角の公式より、$\tan \theta_{n+1} = \tan 2\theta_n$ となる。 したがって、$\theta_{n+1} = 2\theta_n$ とすることができ、数列 $\{\theta_n\}$ は初項 $\frac{\pi}{6}$、公比 $2$ の等比数列となる。
$$ \theta_n = 2^{n-1} \cdot \frac{\pi}{6} $$
よって、求める一般項 $a_n$ は以下の通りである。
$$ a_n = \tan \left( \frac{2^{n-1}\pi}{6} \right) $$
(2)
$\tan \frac{\pi}{6}$ を $\tan \frac{\pi}{12}$ を用いて表す。正接の2倍角の公式において、$\theta = \frac{\pi}{12}$ とすると以下の式が成り立つ。
$$ \tan \frac{\pi}{6} = \frac{2\tan \frac{\pi}{12}}{1 - \tan^2 \frac{\pi}{12}} $$
$\tan \frac{\pi}{12} = t$ とおくと、$\tan \frac{\pi}{6} = \frac{1}{\sqrt{3}}$ であるから、方程式は以下のようになる。
$$ \frac{1}{\sqrt{3}} = \frac{2t}{1 - t^2} $$
分母を払って整理する。
$$ 1 - t^2 = 2\sqrt{3}t $$
$$ t^2 + 2\sqrt{3}t - 1 = 0 $$
これを解くと、$t = -\sqrt{3} \pm \sqrt{3+1} = -\sqrt{3} \pm 2$ を得る。 ここで、$0 < \frac{\pi}{12} < \frac{\pi}{2}$ より $\tan \frac{\pi}{12} > 0$ であるから、$t > 0$ となる。
$$ t = 2 - \sqrt{3} $$
したがって、$\tan \frac{\pi}{12} = 2 - \sqrt{3}$ である。
(3)
$a_1 = \tan \frac{\pi}{20}$ のとき、(1) と同様の議論から一般項は以下のように表される。
$$ a_n = \tan \left( 2^{n-1} \frac{\pi}{20} \right) $$
条件 $a_{n+k} = a_n$ は、以下の方程式と同値である。
$$ \tan \left( 2^{n+k-1} \frac{\pi}{20} \right) = \tan \left( 2^{n-1} \frac{\pi}{20} \right) $$
一般に、$\tan \alpha = \tan \beta$ が成り立つ条件は、$\alpha - \beta = m\pi$ ($m$ は整数)となることである。これを適用する。
$$ 2^{n+k-1} \frac{\pi}{20} - 2^{n-1} \frac{\pi}{20} = m\pi $$
両辺を $\pi$ で割り、$2^{n-1}$ でくくる。
$$ \frac{2^{n-1}(2^k - 1)}{20} = m $$
$$ 2^{n-1}(2^k - 1) = 20m = 2^2 \cdot 5m $$
両辺を $2^2$ で割る。
$$ 2^{n-3}(2^k - 1) = 5m $$
この等式が $n = 3, 4, 5, \cdots$ のすべての自然数 $n$ に対して成り立つような整数 $m$ が存在するための最小の自然数 $k$ を求める。 $n \geqq 3$ のとき、$2^{n-3}$ は整数である。 $2^{n-3}(2^k - 1)$ が常に $5$ の倍数となるためには、$2^{n-3}$ は $5$ の倍数ではないため、$2^k - 1$ が $5$ の倍数でなければならない。 よって、$2^k - 1 \equiv 0 \pmod 5$、すなわち $2^k \equiv 1 \pmod 5$ を満たす最小の自然数 $k$ を探す。
- $k=1$ のとき、$2^1 = 2 \equiv 2 \pmod 5$
- $k=2$ のとき、$2^2 = 4 \equiv 4 \pmod 5$
- $k=3$ のとき、$2^3 = 8 \equiv 3 \pmod 5$
- $k=4$ のとき、$2^4 = 16 \equiv 1 \pmod 5$
したがって、$2^k - 1$ が $5$ の倍数となる最小の自然数 $k$ は $4$ である。 このとき $2^4 - 1 = 15$ となり、条件式は $2^{n-3} \cdot 15 = 5m$ より $m = 3 \cdot 2^{n-3}$ となる。 $n \geqq 3$ において $m$ は常に整数となるため、条件を満たす。
よって、求める最小の自然数 $k$ は $4$ である。
解説
漸化式が分数式で与えられ、分母に2乗の項がある形 $a_{n+1} = \frac{2a_n}{1-a_n^2}$ は、三角関数の正接($\tan$)の2倍角の公式と完全に一致する。この形を見たら $a_n = \tan \theta_n$ と置換する発想が定石である。 (3)では $\tan$ の周期性から $\alpha - \beta = m\pi$ を導き、すべての $n \geqq 3$ で条件を満たすために整数論的な考察(合同式など)に持ち込む流れがポイントとなる。$n=3, 4, \cdots$ という条件が $2^{n-3}$ を整数にするために絶妙に設定されていることに注意したい。
答え
(1)
$$ a_n = \tan \left( \frac{2^{n-1}\pi}{6} \right) $$
(2)
$$ 2 - \sqrt{3} $$
(3)
$$ 4 $$
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