九州大学 2012年 理系 第5問 解説

方針・初手
箱$A$に入っている黒玉の数を状態として扱い、1回の試行による状態の推移確率をすべて求める。全体の玉の総数は常に一定(黒玉3個、白玉2個)であり、箱$A$の玉の数は常に3個、箱$B$の玉の数は常に2個であることに注意して、それぞれの場合における推移確率を計算していく。
解法1
箱$A$に黒玉が $k$ 個入っている状態を $S_k$ と表す。玉は合計で黒玉3個、白玉2個であるため、箱$A$の玉3個の中に含まれる黒玉の数 $k$ は $1, 2, 3$ のいずれかである。 状態 $S_k$ から試行$\text{T}$を1回行った後に状態 $S_l$ になる確率を $P(k \to l)$ とする。
(1)
最初の状態は、箱$A$に黒玉3個が入っているので $S_3$ である。この状態から試行$\text{T}$を1回行う。 まず、箱$A$(黒3)から2個を取り出す。箱$A$には黒玉しかないので、必ず黒玉2個が取り出される。 これを箱$B$(白2)に入れると、箱$B$の中身は黒玉2個、白玉2個の計4個となる。このとき、箱$A$に残っているのは黒玉1個である。
次に、箱$B$の4個から2個を取り出して箱$A$に入れる。取り出し方は ${}_4\text{C}_2 = 6$ 通りある。
- 黒玉2個を取り出す場合(確率 $\frac{{}_2\text{C}_2}{6} = \frac{1}{6}$) 箱$A$に入る玉は黒玉2個となり、箱$A$の黒玉は $1+2=3$ 個になる(状態 $S_3$)。
- 黒玉1個、白玉1個を取り出す場合(確率 $\frac{{}_2\text{C}_1 \times {}_2\text{C}_1}{6} = \frac{4}{6} = \frac{2}{3}$) 箱$A$に入る玉は黒玉1個となり、箱$A$の黒玉は $1+1=2$ 個になる(状態 $S_2$)。
- 白玉2個を取り出す場合(確率 $\frac{{}_2\text{C}_2}{6} = \frac{1}{6}$) 箱$A$に入る玉は黒玉0個となり、箱$A$の黒玉は $1+0=1$ 個になる(状態 $S_1$)。
よって、求める確率 $p_n$ は、
$$ p_1 = \frac{1}{6}, \quad p_2 = \frac{2}{3}, \quad p_3 = \frac{1}{6} $$
(2)
2回目の試行後の確率 $q_n$ を求めるために、すべての状態からの推移確率 $P(k \to l)$ を調べる。(1)より、状態 $S_3$ からの推移確率は以下の通りである。
$$ P(3 \to 1) = \frac{1}{6}, \quad P(3 \to 2) = \frac{2}{3}, \quad P(3 \to 3) = \frac{1}{6} $$
状態 $S_2$ からの推移 $P(2 \to l)$ 箱$A$には黒2・白1、箱$B$には黒1・白1がある。箱$A$から2個の玉を取り出す方法は ${}_3\text{C}_2 = 3$ 通り。
(i) 箱$A$から黒玉2個を取り出す場合(確率 $\frac{{}_2\text{C}_2}{3} = \frac{1}{3}$) 箱$B$は黒3・白1となる。ここから2個取り出して箱$A$(残りは白1)に入れるとき、 黒玉2個を取り出せば箱$A$の黒玉は $0+2=2$ 個(確率 $\frac{{}_3\text{C}_2}{{}_4\text{C}_2} = \frac{1}{2}$)。 黒玉1個・白玉1個を取り出せば箱$A$の黒玉は $0+1=1$ 個(確率 $\frac{{}_3\text{C}_1 \times {}_1\text{C}_1}{{}_4\text{C}_2} = \frac{1}{2}$)。
(ii) 箱$A$から黒玉1個・白玉1個を取り出す場合(確率 $\frac{{}_2\text{C}_1 \times {}_1\text{C}_1}{3} = \frac{2}{3}$) 箱$B$は黒2・白2となる。ここから2個取り出して箱$A$(残りは黒1)に入れるとき、 黒玉2個を取り出せば箱$A$の黒玉は $1+2=3$ 個(確率 $\frac{1}{6}$)。 黒玉1個・白玉1個を取り出せば箱$A$の黒玉は $1+1=2$ 個(確率 $\frac{2}{3}$)。 白玉2個を取り出せば箱$A$の黒玉は $1+0=1$ 個(確率 $\frac{1}{6}$)。
したがって、状態 $S_2$ からの遷移確率は以下のようになる。
$$ \begin{aligned} P(2 \to 1) &= \frac{1}{3} \times \frac{1}{2} + \frac{2}{3} \times \frac{1}{6} = \frac{5}{18} \\ P(2 \to 2) &= \frac{1}{3} \times \frac{1}{2} + \frac{2}{3} \times \frac{2}{3} = \frac{11}{18} \\ P(2 \to 3) &= \frac{2}{3} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{9} \end{aligned} $$
状態 $S_1$ からの推移 $P(1 \to l)$ 箱$A$には黒1・白2、箱$B$には黒2・白0がある。箱$A$から2個の玉を取り出す。
(iii) 箱$A$から黒玉1個・白玉1個を取り出す場合(確率 $\frac{{}_1\text{C}_1 \times {}_2\text{C}_1}{3} = \frac{2}{3}$) 箱$B$は黒3・白1となる。ここから2個取り出して箱$A$(残りは白1)に入れるとき、 黒玉2個を取り出せば箱$A$の黒玉は $0+2=2$ 個(確率 $\frac{1}{2}$)。 黒玉1個・白玉1個を取り出せば箱$A$の黒玉は $0+1=1$ 個(確率 $\frac{1}{2}$)。
(iv) 箱$A$から白玉2個を取り出す場合(確率 $\frac{{}_2\text{C}_2}{3} = \frac{1}{3}$) 箱$B$は黒2・白2となる。ここから2個取り出して箱$A$(残りは黒1)に入れるとき、 黒玉2個を取り出せば箱$A$の黒玉は $1+2=3$ 個(確率 $\frac{1}{6}$)。 黒玉1個・白玉1個を取り出せば箱$A$の黒玉は $1+1=2$ 個(確率 $\frac{2}{3}$)。 白玉2個を取り出せば箱$A$の黒玉は $1+0=1$ 個(確率 $\frac{1}{6}$)。
したがって、状態 $S_1$ からの遷移確率は以下のようになる。
$$ \begin{aligned} P(1 \to 1) &= \frac{2}{3} \times \frac{1}{2} + \frac{1}{3} \times \frac{1}{6} = \frac{7}{18} \\ P(1 \to 2) &= \frac{2}{3} \times \frac{1}{2} + \frac{1}{3} \times \frac{2}{3} = \frac{5}{9} \\ P(1 \to 3) &= \frac{1}{3} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{18} \end{aligned} $$
以上を用いて、2回試行後に各状態になる確率 $q_n$ を求める。
$$ \begin{aligned} q_1 &= P(1 \to 1)p_1 + P(2 \to 1)p_2 + P(3 \to 1)p_3 \\ &= \frac{7}{18} \cdot \frac{1}{6} + \frac{5}{18} \cdot \frac{4}{6} + \frac{3}{18} \cdot \frac{1}{6} \\ &= \frac{7 + 20 + 3}{108} = \frac{30}{108} = \frac{5}{18} \end{aligned} $$
$$ \begin{aligned} q_2 &= P(1 \to 2)p_1 + P(2 \to 2)p_2 + P(3 \to 2)p_3 \\ &= \frac{10}{18} \cdot \frac{1}{6} + \frac{11}{18} \cdot \frac{4}{6} + \frac{12}{18} \cdot \frac{1}{6} \\ &= \frac{10 + 44 + 12}{108} = \frac{66}{108} = \frac{11}{18} \end{aligned} $$
$$ \begin{aligned} q_3 &= P(1 \to 3)p_1 + P(2 \to 3)p_2 + P(3 \to 3)p_3 \\ &= \frac{1}{18} \cdot \frac{1}{6} + \frac{2}{18} \cdot \frac{4}{6} + \frac{3}{18} \cdot \frac{1}{6} \\ &= \frac{1 + 8 + 3}{108} = \frac{12}{108} = \frac{1}{9} \end{aligned} $$
(3)
試行$\text{T}$を3回行ったときに、箱$A$の中がすべて黒玉になっている確率、すなわち状態 $S_3$ になる確率を求める。 これは2回試行後の確率 $q_n$ と推移確率 $P(k \to 3)$ を用いて次のように計算できる。
$$ \begin{aligned} & P(1 \to 3)q_1 + P(2 \to 3)q_2 + P(3 \to 3)q_3 \\ &= \frac{1}{18} \cdot \frac{5}{18} + \frac{1}{9} \cdot \frac{11}{18} + \frac{1}{6} \cdot \frac{1}{9} \\ &= \frac{5}{324} + \frac{22}{324} + \frac{6}{324} \\ &= \frac{33}{324} \\ &= \frac{11}{108} \end{aligned} $$
解説
箱の中の玉の構成が試行ごとにどのように変化するかを追跡する、状態推移(マルコフ連鎖)の典型的な問題である。全体の玉の数が黒玉3個、白玉2個で固定されているため、箱$A$に含まれる黒玉の数($1, 2, 3$ のいずれか)だけで状態を完全に特定できることがポイントとなる。 (2)の段階ですべての状態間の推移確率を網羅的に求めておくことで、(3)の計算も単純な積と和に帰着させることができる。推移確率の計算では、途中の箱$B$の構成の変化を慎重に場合分けして求めることが重要である。
答え
(1) $p_1 = \frac{1}{6}, \quad p_2 = \frac{2}{3}, \quad p_3 = \frac{1}{6}$
(2) $q_1 = \frac{5}{18}, \quad q_2 = \frac{11}{18}, \quad q_3 = \frac{1}{9}$
(3) $\frac{11}{108}$
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