九州大学 2018年 理系 第3問 解説

方針・初手
取り出すカードの数字が持つ「素因数 $2$ の個数」に注目して直接確率を求める方法と、積を $4$ で割った余りの状態推移に注目して確率漸化式を立てる方法が考えられます。 ここでは、事象の意味を読み解いて直接求める解法を「解法1」として示し、状態遷移図から漸化式を立てる汎用的な解法を「解法2」として示します。
解法1
$1$ 回の試行で取り出すカードの数字が $1, 2, 3, 4$ である確率は、それぞれ $\frac{1}{4}$ である。
(i) $q_n, s_n$ について
積 $X_1 X_2 \cdots X_n$ を $4$ で割った余りが $1$ または $3$ になるのは、積が奇数になるとき、すなわち $n$ 回すべてで「$1$」または「$3$」のカードを取り出したときである。
その中で、積を $4$ で割った余りが $3$ になるのは、$n$ 回の試行のうち「$3$」のカードを奇数回取り出したときである。($3 \equiv -1 \pmod 4$ であり、$(-1)^{\text{奇数}} = -1 \equiv 3 \pmod 4$ となるため)
「$3$」を $k$ 回、「$1$」を $n-k$ 回取り出す確率は、反復試行の確率より
$$ {}_n\mathrm{C}_k \left(\frac{1}{4}\right)^k \left(\frac{1}{4}\right)^{n-k} = \frac{{}_n\mathrm{C}_k}{4^n} $$
であるから、$s_n$ は $k$ が奇数となる場合の確率の和となる。
$$ s_n = \sum_{k=1, 3, 5, \dots} \frac{{}_n\mathrm{C}_k}{4^n} = \frac{1}{4^n} \sum_{k=1, 3, 5, \dots} {}_n\mathrm{C}_k $$
ここで二項定理より、
$$ (1+1)^n = {}_n\mathrm{C}_0 + {}_n\mathrm{C}_1 + {}_n\mathrm{C}_2 + \cdots + {}_n\mathrm{C}_n = 2^n $$
$$ (1-1)^n = {}_n\mathrm{C}_0 - {}_n\mathrm{C}_1 + {}_n\mathrm{C}_2 - \cdots + (-1)^n {}_n\mathrm{C}_n = 0 $$
辺々を引いて $2$ で割ると、奇数番目の項の和が得られる。
$$ \sum_{k=1, 3, 5, \dots} {}_n\mathrm{C}_k = \frac{2^n - 0}{2} = 2^{n-1} $$
したがって、$s_n$ は次のように求まる。
$$ s_n = \frac{2^{n-1}}{4^n} = \frac{1}{2} \left( \frac{2}{4} \right)^n = \frac{1}{2^{n+1}} $$
また、積が奇数になる確率全体は $\left(\frac{2}{4}\right)^n = \frac{1}{2^n}$ であるから、余りが $1$ になる確率 $q_n$ は
$$ q_n = \frac{1}{2^n} - s_n = \frac{1}{2^n} - \frac{1}{2^{n+1}} = \frac{1}{2^{n+1}} $$
(ii) $r_n$ について
積 $X_1 X_2 \cdots X_n$ を $4$ で割った余りが $2$ になるのは、積が素因数 $2$ をちょうど $1$ つだけ持つときである。 すなわち、$n$ 回の試行のうち「$2$」のカードをちょうど $1$ 回取り出し、残りの $n-1$ 回で奇数(「$1$」または「$3$」)のカードを取り出したときである。
これを満たす確率は、反復試行の確率より
$$ r_n = {}_n\mathrm{C}_1 \left(\frac{1}{4}\right)^1 \left(\frac{2}{4}\right)^{n-1} = \frac{n}{4} \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1} = \frac{n}{2^{n+1}} $$
(iii) $p_n$ について
余りが $0, 1, 2, 3$ になる事象は互いに排反であり、いずれかが必ず起こるから、
$$ p_n + q_n + r_n + s_n = 1 $$
が成り立つ。よって余事象の確率として $p_n$ を求める。
$$ p_n = 1 - (q_n + r_n + s_n) $$
$$ p_n = 1 - \left( \frac{1}{2^{n+1}} + \frac{n}{2^{n+1}} + \frac{1}{2^{n+1}} \right) = 1 - \frac{n+2}{2^{n+1}} $$
解法2
$n$ 回目までの積 $X_1 X_2 \cdots X_n$ を $Y_n$ とおく。 $Y_{n+1} = Y_n X_{n+1}$ であり、$X_{n+1}$ は $1, 2, 3, 4$ をそれぞれ確率 $\frac{1}{4}$ でとる。 $Y_n$ を $4$ で割った余りによって場合分けし、$Y_{n+1}$ の余りがどうなるかを調べる。
(i) $Y_n \equiv 0 \pmod 4$ のとき(確率 $p_n$) $X_{n+1}$ が何であっても $Y_{n+1} \equiv 0 \pmod 4$ となる。
(ii) $Y_n \equiv 1 \pmod 4$ のとき(確率 $q_n$) $X_{n+1} = 1, 2, 3, 4$ に応じて、$Y_{n+1} \equiv 1, 2, 3, 0 \pmod 4$ となる。
(iii) $Y_n \equiv 2 \pmod 4$ のとき(確率 $r_n$) $X_{n+1} = 1, 2, 3, 4$ に応じて、$Y_{n+1} \equiv 2, 0, 2, 0 \pmod 4$ となる。
(iv) $Y_n \equiv 3 \pmod 4$ のとき(確率 $s_n$) $X_{n+1} = 1, 2, 3, 4$ に応じて、$Y_{n+1} \equiv 3, 2, 1, 0 \pmod 4$ となる。
以上の遷移より、次の連立漸化式が成り立つ。
$$ \begin{cases} p_{n+1} = p_n + \frac{1}{4}q_n + \frac{1}{2}r_n + \frac{1}{4}s_n \\ q_{n+1} = \frac{1}{4}q_n + \frac{1}{4}s_n \\ r_{n+1} = \frac{1}{4}q_n + \frac{1}{2}r_n + \frac{1}{4}s_n \\ s_{n+1} = \frac{1}{4}q_n + \frac{1}{4}s_n \end{cases} $$
また、$1$ 回目の試行を考えると、初期条件は
$$ p_1 = q_1 = r_1 = s_1 = \frac{1}{4} $$
である。第2式と第4式より、すべての自然数 $n$ について $q_{n+1} = s_{n+1}$ が成り立つ。初期条件 $q_1 = s_1$ と合わせると、すべての $n$ で $q_n = s_n$ である。
これを第2式に代入すると、
$$ q_{n+1} = \frac{1}{4}q_n + \frac{1}{4}q_n = \frac{1}{2}q_n $$
数列 $\{q_n\}$ は初項 $\frac{1}{4}$、公比 $\frac{1}{2}$ の等比数列であるから、
$$ q_n = \frac{1}{4} \left( \frac{1}{2} \right)^{n-1} = \frac{1}{2^{n+1}} $$
$s_n = q_n$ より、$s_n = \frac{1}{2^{n+1}}$ となる。
次に、$q_n, s_n$ を第3式に代入して $r_n$ を求める。
$$ r_{n+1} = \frac{1}{2}r_n + \frac{1}{4} \cdot \frac{1}{2^{n+1}} + \frac{1}{4} \cdot \frac{1}{2^{n+1}} = \frac{1}{2}r_n + \frac{1}{2^{n+2}} $$
両辺に $2^{n+1}$ を掛けると、
$$ 2^{n+1} r_{n+1} = 2^n r_n + \frac{1}{2} $$
数列 $\{2^n r_n\}$ は、初項 $2^1 r_1 = 2 \times \frac{1}{4} = \frac{1}{2}$、公差 $\frac{1}{2}$ の等差数列であるから、
$$ 2^n r_n = \frac{1}{2} + (n-1) \cdot \frac{1}{2} = \frac{n}{2} $$
よって、両辺を $2^n$ で割ることで $r_n$ が求まる。
$$ r_n = \frac{n}{2^{n+1}} $$
最後に、$p_n + q_n + r_n + s_n = 1$ を用いて $p_n$ を求める。
$$ p_n = 1 - (q_n + r_n + s_n) = 1 - \frac{n+2}{2^{n+1}} $$
解説
確率の推移を漸化式で捉える方針(解法2)が最も標準的で安全なアプローチですが、本問のように「$4$ で割った余り」という条件を「素因数 $2$ の個数」と「奇数の性質」に翻訳できると、反復試行の確率の公式を用いて直接計算(解法1)することができ、大幅な時間短縮になります。
確率の問題では「余事象」の活用も重要です。本問では $p_n$(余り $0$)を直接求めようとすると場合分けが非常に複雑になりますが、確率の総和が $1$ であることを利用すれば、容易に求めることができます。
答え
$$ \begin{aligned} p_n &= 1 - \frac{n+2}{2^{n+1}} \\ q_n &= \frac{1}{2^{n+1}} \\ r_n &= \frac{n}{2^{n+1}} \\ s_n &= \frac{1}{2^{n+1}} \end{aligned} $$
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