名古屋大学 1967年 文系 第5問 解説

方針・初手
平面上の3つのベクトルが与えられたとき、それらが必ず線形従属(一次従属)になることを示す問題である。 2つのベクトル $\vec{a}$ と $\vec{b}$ が「一次独立であるか、一次従属であるか」で場合分けを行うと、ベクトルの基本性質のみで簡潔に証明することができる。また、成分を用いて連立方程式の解の存在を示す方法もある。
解法1
2つのベクトル $\vec{a}, \vec{b}$ が一次独立であるか、一次従属であるかで場合分けをする。
(i) $\vec{a}$ と $\vec{b}$ が一次独立であるとき $\vec{a} \neq \vec{0}$, $\vec{b} \neq \vec{0}$ かつ $\vec{a} \nparallel \vec{b}$ である。 このとき、平面上の任意のベクトルは $\vec{a}$ と $\vec{b}$ を用いて一意に表すことができる。したがって、実数 $s, t$ を用いて
$$ \vec{c} = s\vec{a} + t\vec{b} $$
と表せる。これを移項すると
$$ s\vec{a} + t\vec{b} - \vec{c} = \vec{0} $$
となる。ここで、$l=s, m=t, n=-1$ とおくと
$$ l\vec{a} + m\vec{b} + n\vec{c} = \vec{0} $$
を満たす。$n = -1 \neq 0$ であるから、$(l, m, n) \neq (0, 0, 0)$ である。
(ii) $\vec{a}$ と $\vec{b}$ が一次従属であるとき ある実数 $p, q$ (ただし $p, q$ の少なくとも一方は $0$ ではない)が存在して
$$ p\vec{a} + q\vec{b} = \vec{0} $$
が成り立つ。この両辺に $0\vec{c}$ を加えると
$$ p\vec{a} + q\vec{b} + 0\vec{c} = \vec{0} $$
となる。ここで、$l=p, m=q, n=0$ とおくと
$$ l\vec{a} + m\vec{b} + n\vec{c} = \vec{0} $$
を満たす。$p, q$ の少なくとも一方は $0$ ではないから、$(l, m, n) \neq (0, 0, 0)$ である。
(i), (ii) のいずれの場合においても、$l\vec{a} + m\vec{b} + n\vec{c} = \vec{0}$ を満たす $l=m=n=0$ 以外の実数 $l, m, n$ が存在することが示された。
解法2
成分を用いて連立方程式として考える。 $l\vec{a} + m\vec{b} + n\vec{c} = \vec{0}$ より
$$ l \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \end{pmatrix} + m \begin{pmatrix} b_1 \\ b_2 \end{pmatrix} + n \begin{pmatrix} c_1 \\ c_2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} $$
すなわち、次の連立方程式を満たす $(l, m, n) \neq (0, 0, 0)$ が存在することを示せばよい。
$$ \begin{cases} a_1 l + b_1 m + c_1 n = 0 \quad \cdots \text{①} \\ a_2 l + b_2 m + c_2 n = 0 \quad \cdots \text{②} \end{cases} $$
$\Delta = a_1 b_2 - a_2 b_1$ とおく。
(i) $\Delta \neq 0$ のとき ① $\times b_2$ - ② $\times b_1$ を計算すると
$$ (a_1 b_2 - a_2 b_1)l + (c_1 b_2 - c_2 b_1)n = 0 $$
$\Delta \neq 0$ より、$l$ は $n$ を用いて次のように表せる。
$$ l = \frac{b_1 c_2 - b_2 c_1}{\Delta} n $$
同様に、② $\times a_1$ - ① $\times a_2$ を計算すると
$$ (a_1 b_2 - a_2 b_1)m + (a_1 c_2 - a_2 c_1)n = 0 $$
$$ m = \frac{a_2 c_1 - a_1 c_2}{\Delta} n $$
ここで、$n = \Delta$ とおくと($\Delta \neq 0$ より $n \neq 0$)
$$ l = b_1 c_2 - b_2 c_1, \quad m = a_2 c_1 - a_1 c_2, \quad n = \Delta $$
となり、これらは題意を満たす $l=m=n=0$ 以外の解である。
(ii) $\Delta = 0$ のとき $a_1 b_2 - a_2 b_1 = 0$ が成り立つ。 (ア) $a_1 = a_2 = 0$ のとき $\vec{a} = \vec{0}$ であるから、$1\vec{a} + 0\vec{b} + 0\vec{c} = \vec{0}$ となり、$l=1, m=0, n=0$ は条件を満たす解である。 (イ) $a_1 \neq 0$ のとき $b_2 = \frac{a_2 b_1}{a_1}$ となるため、$\vec{b}$ は次のように表せる。
$$ \vec{b} = \left( b_1, \frac{a_2 b_1}{a_1} \right) = \frac{b_1}{a_1} (a_1, a_2) = \frac{b_1}{a_1} \vec{a} $$
よって $\frac{b_1}{a_1} \vec{a} - \vec{b} + 0\vec{c} = \vec{0}$ となるから、$l=\frac{b_1}{a_1}, m=-1, n=0$ は条件を満たす解である。($a_2 \neq 0$ のときも同様にして示せる)
以上から、いずれの場合も $l=m=n=0$ 以外の解が存在する。
解説
2次元平面において、3つ以上のベクトルは必ず「一次従属(線形従属)」になるという線形代数学の基本的な定理を証明する問題である。 解法1は、ベクトルの一次独立性の定義をそのまま用いた幾何学的・抽象的なアプローチである。高校数学のベクトル分野の基本を理解していれば、計算をほとんどせずに簡潔に記述できる。 解法2は、未知数が3つで方程式が2つしかない同次連立一次方程式には必ず自明解 $(0, 0, 0)$ 以外の解(非自明解)が存在するという性質を、成分計算で示したものである。
答え
解答の各解法にて証明完了。
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