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名古屋大学 1967年 文系 第4問 解説

数学C/平面ベクトル数学2/図形と式テーマ/不等式の証明テーマ/図形総合
名古屋大学 1967年 文系 第4問 解説

方針・初手

各点の位置ベクトルを $\vec{p}_1 = \vec{OP}_1 = (x_1, y_1)$ などとおき、問題文の条件をベクトルの内積を用いて言い換えることが第一歩です。

点 $P_2(x_2, y_2)$ が直線 $x_1x + y_1y = 1$ 上にあるという条件は、代入して $x_1x_2 + y_1y_2 = 1$ となることから、内積を用いて $\vec{p}_1 \cdot \vec{p}_2 = 1$ と表せます。 同様に、他の点と直線の関係も内積が $1$ であることに帰着されます。

(イ) は、内積とベクトルの大きさの不等式(コーシー・シュワルツの不等式)、または点と直線の距離の公式を用いて直接示すことができます。 (ロ) は、前提条件から等式を作り、結論を否定して背理法に持ち込むことで、巧みに矛盾を導くことができます。

解法1

原点を始点とする各点の位置ベクトルを $\vec{p}_1 = \vec{OP}_1$, $\vec{p}_2 = \vec{OP}_2$, $\vec{p}_3 = \vec{OP}_3$ とおく。 条件より、$P_2, P_3$ は直線 $x_1x + y_1y = 1$ 上にあり、$P_3$ は直線 $x_2x + y_2y = 1$ 上にあるため、内積を用いて以下の等式が成り立つ。

$$ \vec{p}_1 \cdot \vec{p}_2 = 1 $$

$$ \vec{p}_1 \cdot \vec{p}_3 = 1 $$

$$ \vec{p}_2 \cdot \vec{p}_3 = 1 $$

(イ)

原点 $O$ から直線 $l_1 : x_1x + y_1y = 1$ に下ろした垂線の長さを $d$ とすると、点と直線の距離の公式より以下のようになる。

$$ d = \frac{|-1|}{\sqrt{x_1^2 + y_1^2}} = \frac{1}{|\vec{p}_1|} = \frac{1}{OP_1} $$

点 $P_2$ は直線 $l_1$ 上にある。原点から直線 $l_1$ 上の点までの距離の最小値は垂線の長さ $d$ であるため、次が成り立つ。

$$ OP_2 \ge d = \frac{1}{OP_1} $$

仮定より $OP_1 < 1$ であり、また $OP_1 > 0$ である(仮に $OP_1=0$ ならば点 $P_1$ は原点となり、直線 $l_1$ が定義できない)。 したがって、不等式の両辺に正の数 $\frac{1}{OP_1}$ を掛けるなどの評価をすることで、次を得る。

$$ OP_2 \ge \frac{1}{OP_1} > 1 $$

よって、$OP_1 < 1$ ならば $OP_2 > 1$ が示された。

(ロ)

原点 $O$ から直線 $l_1$ に下ろした垂線の足を $H$ とすると、$\vec{OH}$ と $\vec{p}_1$ は平行であり、$\vec{p}_1 \cdot \vec{OH} = 1$ を満たすから、以下のように表せる。

$$ \vec{OH} = \frac{1}{|\vec{p}_1|^2} \vec{p}_1 $$

ここで、$OP_1 = |\vec{p}_1|$ より $|\vec{OH}| = \frac{1}{OP_1}$ である。 点 $P_2, P_3$ は直線 $l_1$ 上にあるため、ベクトル $\vec{HP}_2$ および $\vec{HP}_3$ は法線ベクトル $\vec{p}_1$ (および $\vec{OH}$)と垂直である。 したがって、三平方の定理より次が成り立つ。

$$ |\vec{HP}_2|^2 = |\vec{OP}_2|^2 - |\vec{OH}|^2 = OP_2^2 - \frac{1}{OP_1^2} $$

$$ |\vec{HP}_3|^2 = |\vec{OP}_3|^2 - |\vec{OH}|^2 = OP_3^2 - \frac{1}{OP_1^2} $$

また、$\vec{p}_2 \cdot \vec{p}_3 = 1$ より、これを $\vec{OH}$ を用いて展開する。

$$ (\vec{OH} + \vec{HP}_2) \cdot (\vec{OH} + \vec{HP}_3) = 1 $$

$\vec{OH}$ と $\vec{HP}_2, \vec{HP}_3$ が直交することから内積は $0$ となるため、次のように整理できる。

$$ |\vec{OH}|^2 + \vec{HP}_2 \cdot \vec{HP}_3 = 1 $$

$$ \frac{1}{OP_1^2} + \vec{HP}_2 \cdot \vec{HP}_3 = 1 $$

ゆえに、

$$ \vec{HP}_2 \cdot \vec{HP}_3 = 1 - \frac{1}{OP_1^2} $$

ここで、結論を否定して $OP_1 \ge 1$ と仮定し、背理法を試みる。 仮定より $1 - \frac{1}{OP_1^2} \ge 0$ であるため、$\vec{HP}_2 \cdot \vec{HP}_3 \ge 0$ となる。 点 $H, P_2, P_3$ は同一直線 $l_1$ 上にあるため、$\vec{HP}_2$ と $\vec{HP}_3$ のなす角は $0^\circ$ または $180^\circ$ (またはいずれかが零ベクトル)である。 内積が $0$ 以上であることから、これらは同じ向きであるか、少なくとも一方が零ベクトルである。

もし $OP_1 = 1$ であれば内積は $0$ となり、$\vec{HP}_2 = \vec{0}$ または $\vec{HP}_3 = \vec{0}$ となる。 $\vec{HP}_2 = \vec{0}$ (すなわち $P_2 = H$)のとき、$OP_2^2 = |\vec{OH}|^2 = 1$ となり、問題の条件 $OP_2 > 1$ に矛盾する。$\vec{HP}_3 = \vec{0}$ の場合も同様に矛盾する。 したがって、$OP_1 > 1$ となり、$\vec{HP}_2 \cdot \vec{HP}_3 > 0$ である。このとき2つのベクトルは同じ向きであるため、内積は絶対値の積に等しい。

$$ \vec{HP}_2 \cdot \vec{HP}_3 = |\vec{HP}_2| |\vec{HP}_3| $$

両辺を2乗すると、

$$ \left( 1 - \frac{1}{OP_1^2} \right)^2 = |\vec{HP}_2|^2 |\vec{HP}_3|^2 $$

先ほど求めた三平方の定理の式を代入する。

$$ \left( 1 - \frac{1}{OP_1^2} \right)^2 = \left( OP_2^2 - \frac{1}{OP_1^2} \right) \left( OP_3^2 - \frac{1}{OP_1^2} \right) $$

ここで、仮定より $OP_2 > 1, OP_3 > 1$ であるため、次が成り立つ。

$$ OP_2^2 - \frac{1}{OP_1^2} > 1 - \frac{1}{OP_1^2} > 0 $$

$$ OP_3^2 - \frac{1}{OP_1^2} > 1 - \frac{1}{OP_1^2} > 0 $$

これらの辺々を掛け合わせると、

$$ \left( OP_2^2 - \frac{1}{OP_1^2} \right) \left( OP_3^2 - \frac{1}{OP_1^2} \right) > \left( 1 - \frac{1}{OP_1^2} \right)^2 $$

となり、先ほどの等式と矛盾する。 したがって、$OP_1 \ge 1$ の仮定は誤りであり、$OP_1 < 1$ であることが示された。

解法2

(ロ) について、直線の媒介変数表示を用いた別解を示す。 $OP_1 = r_1, OP_2 = r_2, OP_3 = r_3$ とおく。

直線 $l_1 : x_1x + y_1y = 1$ の法線ベクトルは $\vec{p}_1 = (x_1, y_1)$ である。これに垂直な方向ベクトルの一つを $\vec{u} = (-y_1, x_1)$ とすると、$\vec{p}_1 \cdot \vec{u} = 0$ であり、$|\vec{u}|^2 = x_1^2 + y_1^2 = r_1^2$ である。 解法1と同様に、原点から $l_1$ に下ろした垂線の足 $H$ の位置ベクトルは $\frac{1}{r_1^2} \vec{p}_1$ である。 点 $P_2, P_3$ は $l_1$ 上の相異なる点であるから、実数 $t_2, t_3$ ($t_2 \neq t_3$) を用いて次のように媒介変数表示できる。

$$ \vec{p}_2 = \frac{1}{r_1^2} \vec{p}_1 + t_2 \vec{u} $$

$$ \vec{p}_3 = \frac{1}{r_1^2} \vec{p}_1 + t_3 \vec{u} $$

ここで $\vec{p}_2 \cdot \vec{p}_3 = 1$ の条件より、内積を計算する。

$$ \left( \frac{1}{r_1^2} \vec{p}_1 + t_2 \vec{u} \right) \cdot \left( \frac{1}{r_1^2} \vec{p}_1 + t_3 \vec{u} \right) = 1 $$

$\vec{p}_1 \cdot \vec{u} = 0$ および $|\vec{p}_1|^2 = r_1^2, |\vec{u}|^2 = r_1^2$ であることに注意して展開すると、

$$ \frac{1}{r_1^4} |\vec{p}_1|^2 + t_2 t_3 |\vec{u}|^2 = 1 $$

$$ \frac{1}{r_1^2} + r_1^2 t_2 t_3 = 1 $$

これを整理して次の式を得る。

$$ r_1^2 t_2 t_3 = 1 - \frac{1}{r_1^2} \quad \cdots ① $$

また、各ベクトルの大きさの2乗は以下のようになる。

$$ r_2^2 = |\vec{p}_2|^2 = \frac{1}{r_1^2} + r_1^2 t_2^2 $$

$$ r_3^2 = |\vec{p}_3|^2 = \frac{1}{r_1^2} + r_1^2 t_3^2 $$

仮定より $r_2 > 1$ および $r_3 > 1$ であるから、

$$ r_1^2 t_2^2 = r_2^2 - \frac{1}{r_1^2} > 1 - \frac{1}{r_1^2} \quad \cdots ② $$

$$ r_1^2 t_3^2 = r_3^2 - \frac{1}{r_1^2} > 1 - \frac{1}{r_1^2} \quad \cdots ③ $$

結論を否定して $r_1 \ge 1$ と仮定する。 このとき $1 - \frac{1}{r_1^2} \ge 0$ であるため、②, ③ の両辺はすべて $0$ 以上となる。 ② と ③ の辺々を掛け合わせると、

$$ (r_1^2 t_2^2) (r_1^2 t_3^2) > \left( 1 - \frac{1}{r_1^2} \right)^2 $$

$$ (r_1^2 t_2 t_3)^2 > \left( 1 - \frac{1}{r_1^2} \right)^2 $$

しかし、等式 ① の両辺を2乗すると

$$ (r_1^2 t_2 t_3)^2 = \left( 1 - \frac{1}{r_1^2} \right)^2 $$

となり、上の不等式に矛盾する。 したがって、$r_1 < 1$ すなわち $OP_1 < 1$ でなければならない。

解説

成分表示された直線の方程式 $x_ax + y_ay = 1$ が、ベクトルの内積 $\vec{a} \cdot \vec{p} = 1$ と等価であることを見抜けるかが最大のポイントです。この翻訳ができれば、幾何的なイメージ(法線ベクトルや垂線の足)が湧きやすくなります。 また、(ロ) のように「$P \implies Q$」の証明において直接示すのが難しい場合は、対偶や背理法を検討するのが定石です。本問では「$OP_1 \ge 1$」と仮定することで不等式の各項が非負であることが確定し、積をとる操作が正当化されるため、鮮やかに矛盾を導くことができます。

答え

(イ) 内積の性質(または点と直線の距離の公式)を用いることで、$OP_2 \ge \frac{1}{OP_1}$ が成り立つ。これより、$OP_1 < 1$ のとき $OP_2 > 1$ であることが証明された。

(ロ) 直線上の点をベクトル(または媒介変数)で表現し、条件式から導かれた等式において背理法($OP_1 \ge 1$ と仮定)を用いることで矛盾が示され、$OP_1 < 1$ であることが証明された。

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