名古屋大学 1969年 文系 第3問 解説

方針・初手
前半は、2点を通る直線の方程式を求め、その直線と3次曲線の $y$ 座標の差をとって、指定された区間で差が正になることを示します。 後半は、点と直線の距離の公式を用いて、動点から直線までの距離を動点の $x$ 座標(パラメータ)の関数として表し、微分を用いて最大値を求めます。あるいは、図形的な意味を考えて、直線と平行な接線をもつ接点との距離を求める方法も有効です。
解法1
まず、2点 $A(-1, -1)$, $B(2, 8)$ を結ぶ直線の方程式を求める。 直線の傾きは
$$ \frac{8 - (-1)}{2 - (-1)} = \frac{9}{3} = 3 $$
となるので、直線 $AB$ の方程式は
$$ y - 8 = 3(x - 2) \iff y = 3x + 2 $$
である。 線分 $AB$ は、この直線の $-1 \leqq x \leqq 2$ の部分である。 線分が3次曲線 $y=x^3$ の上側にあることを示すには、$-1 < x < 2$ の範囲において、直線の $y$ 座標が曲線の $y$ 座標より大きいこと、すなわち $3x + 2 > x^3$ であることを示せばよい。 ここで、両者の差を $f(x)$ として、次のように定義する。
$$ f(x) = (3x + 2) - x^3 = -x^3 + 3x + 2 $$
$f(-1) = 1 - 3 + 2 = 0$ であるから、因数定理より $f(x)$ は $x+1$ を因数にもつ。因数分解を進めると、
$$ \begin{aligned} f(x) &= -(x^3 - 3x - 2) \\ &= -(x+1)(x^2 - x - 2) \\ &= -(x+1)^2(x-2) \end{aligned} $$
となる。 $-1 < x < 2$ のとき、$(x+1)^2 > 0$ かつ $x-2 < 0$ であるから、
$$ f(x) > 0 $$
が成り立つ。 よって、$-1 < x < 2$ において $3x + 2 > x^3$ となり、線分 $AB$ は3次曲線の上側にあることが証明された。
次に、この曲線上の動点 $P$ が $A, B$ の間を動くとき、点 $P$ から線分 $AB$ へおろした垂線の長さの最大値を求める。 点 $P$ は曲線 $y=x^3$ 上にあり、$A, B$ の間にあるので、その座標を $P(t, t^3)$ とおくことができる。このとき、 $t$ のとり得る値の範囲は
$$ -1 < t < 2 $$
である。 直線 $AB$ の方程式は $3x - y + 2 = 0$ と表せる。 点 $P(t, t^3)$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の長さ $d$ は、点と直線の距離の公式より
$$ d = \frac{|3t - t^3 + 2|}{\sqrt{3^2 + (-1)^2}} = \frac{|-t^3 + 3t + 2|}{\sqrt{10}} $$
となる。 ここで、$-1 < t < 2$ においては、前半の証明により $-t^3 + 3t + 2 > 0$ であることがわかっているため、絶対値記号はそのまま外すことができる。
$$ d = \frac{-t^3 + 3t + 2}{\sqrt{10}} $$
$g(t) = -t^3 + 3t + 2$ とおき、この関数の最大値を求める。 $g(t)$ を微分すると
$$ \begin{aligned} g'(t) &= -3t^2 + 3 \\ &= -3(t^2 - 1) \\ &= -3(t+1)(t-1) \end{aligned} $$
となる。$g'(t) = 0$ となるのは $t = \pm 1$ のときである。 $-1 < t < 2$ における $g(t)$ の増減表は以下のようになる。
$$ \begin{array}{c|ccccc} t & -1 & \cdots & 1 & \cdots & 2 \\ \hline g'(t) & & + & 0 & - & \\ \hline g(t) & & \nearrow & 4 & \searrow & \end{array} $$
増減表より、$g(t)$ は $t = 1$ のとき最大となる。 その最大値は
$$ g(1) = -1^3 + 3 \cdot 1 + 2 = 4 $$
である。 したがって、垂線の長さ $d$ の最大値は
$$ \frac{4}{\sqrt{10}} = \frac{2\sqrt{10}}{5} $$
となる。
解法2
線分 $AB$ が曲線の上側にあることの証明は、解法1と同様に直線の式 $y = 3x+2$ を求め、関数 $f(x) = (3x+2) - x^3 = -(x+1)^2(x-2)$ が $-1 < x < 2$ において正となることを示すことで完了する。
後半の垂線の長さの最大値については、図形的な性質を利用する。 点 $P$ から直線 $AB$ に下ろした垂線の長さが最大となるのは、点 $P$ における曲線 $y=x^3$ の接線が、直線 $AB$ と平行になるときである。 直線 $AB$ の傾きは $3$ であるから、接線の傾きが $3$ となるような点 $P$ の座標を求める。 $y = x^3$ を微分すると
$$ y' = 3x^2 $$
となる。接線の傾きが $3$ であるから
$$ 3x^2 = 3 \iff x^2 = 1 \iff x = \pm 1 $$
点 $P$ は $A, B$ の間にあり、その $x$ 座標は $-1 < x < 2$ を満たす必要があるため、該当する $x$ 座標は $x = 1$ のみである。 このとき、点 $P$ の $y$ 座標は $y = 1^3 = 1$ となるので、垂線の長さが最大となる点 $P$ の座標は $(1, 1)$ である。
求める最大値は、この点 $P(1, 1)$ と直線 $AB$ (方程式 $3x - y + 2 = 0$)との距離に等しい。 点と直線の距離の公式より
$$ d = \frac{|3 \cdot 1 - 1 + 2|}{\sqrt{3^2 + (-1)^2}} = \frac{|4|}{\sqrt{10}} = \frac{2\sqrt{10}}{5} $$
となる。
解説
2つのグラフの上下関係を調べる際は、その $y$ 座標の差をとって符号を調べるのが基本です。本問では、差の関数が因数分解できるため、微分して増減表を書かなくても符号の判定が可能です。 後半の最大値を求める問題については、点と直線の距離の公式を利用して関数の最大値を求める代数的な解法(解法1)と、平行な接線をもつ点をみつける図形的な解法(解法2)の2通りが考えられます。特に解法2のアプローチは、計算量が少なく済むうえに見通しも良いため、入試本番でも非常に有効な視点となります。
答え
【証明】 略(解答内の通り)
【最大値】 $$ \frac{2\sqrt{10}}{5} $$
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