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名古屋大学 1972年 文系 第2問 解説

数学C/複素数平面数学2/式と証明テーマ/整式の証明
名古屋大学 1972年 文系 第2問 解説

方針・初手

$f(z)$ は複素数を係数とする $z$ の $1$ 次式であるから、$f(z) = az + b$ ($a, b$ は複素数、$a \neq 0$)とおくことができる。 これを $f(f(f(z))) = z$ に代入して計算し、$z$ についての恒等式として係数を比較する方針が最も確実である。

解法1

$f(z)$ は $z$ の $1$ 次式であるから、$f(z) = az + b$ ($a, b$ は複素数、$a \neq 0$)とおく。

$f(f(z))$ を計算すると、

$$f(f(z)) = a(az+b) + b = a^2 z + ab + b$$

となる。さらに $f(f(f(z)))$ を計算すると、

$$f(f(f(z))) = a(a^2 z + ab + b) + b = a^3 z + a^2 b + ab + b$$

となる。条件より、すべての複素数 $z$ に対して $f(f(f(z))) = z$ が成り立つため、

$$a^3 z + b(a^2 + a + 1) = z$$

が $z$ についての恒等式となる。係数を比較すると、次の $2$ つの条件が得られる。

$$\begin{cases} a^3 = 1 & \cdots (1) \\ b(a^2 + a + 1) = 0 & \cdots (2) \end{cases}$$

(1) より $a^3 - 1 = 0$ だから、因数分解して

$$(a-1)(a^2 + a + 1) = 0$$

よって、$a = 1$ または $a = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}$ となる。

(i) $a = 1$ のとき

(2) に代入すると $b(1^2 + 1 + 1) = 0$ となり、$3b = 0$ より $b = 0$ である。 このとき、$f(z) = z$ となり、これは $a \neq 0$ を満たす。

(ii) $a = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}$ のとき

$a$ は $a^2 + a + 1 = 0$ を満たすため、(2) は $b \cdot 0 = 0$ となり、任意の複素数 $b$ に対して成り立つ。 また、この $a$ は $a \neq 0$ を満たす。 したがって、$f(z) = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} z + b$ ($b$ は任意の複素数)となる。

(i), (ii) より、求める $f(z)$ は

$$f(z) = z \quad \text{または} \quad f(z) = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} z + b \quad \text{(} b \text{ は任意の複素数)}$$

解法2

$f(z) = az + b$ ($a, b$ は複素数、$a \neq 0$)とおく。

(i) $a = 1$ のとき

$f(z) = z + b$ であるから、

$$f(f(z)) = (z+b)+b = z+2b$$

$$f(f(f(z))) = (z+2b)+b = z+3b$$

条件より $z+3b = z$ が恒等的に成り立つので、$3b = 0$ より $b = 0$ となる。 よって、$f(z) = z$ である。

(ii) $a \neq 1$ のとき

方程式 $z = az + b$ の解を $\alpha$ とすると、$a \neq 1$ より $\alpha = \frac{b}{1-a}$ と一意に定まる。 これを用いると、$f(z) = az + b$ は

$$f(z) - \alpha = a(z - \alpha)$$

と変形できる。この関係式を繰り返し用いると、

$$f(f(z)) - \alpha = a(f(z) - \alpha) = a^2(z - \alpha)$$

$$f(f(f(z))) - \alpha = a(f(f(z)) - \alpha) = a^3(z - \alpha)$$

すなわち、$f(f(f(z))) = a^3(z - \alpha) + \alpha$ となる。 これがつねに $z$ と等しくなる条件は、

$$a^3 z - a^3 \alpha + \alpha = z$$

が $z$ についての恒等式となることである。係数を比較して、

$$\begin{cases} a^3 = 1 \\ -a^3 \alpha + \alpha = 0 \end{cases}$$

$a^3 = 1$ であれば、第 $2$ 式は $-\alpha + \alpha = 0$ となり常に成り立つ。 $a^3 = 1$ かつ $a \neq 1$ を満たす $a$ は、$a^3 - 1 = (a-1)(a^2+a+1) = 0$ より $a^2+a+1 = 0$ の解であるから、

$$a = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2}$$

となる。このとき、$\alpha = \frac{b}{1-a}$ を満たす $\alpha$ は任意の複素数 $b$ に対して存在し得るため、$b$ は任意の複素数でよい。 よって、$f(z) = \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} z + b$ ($b$ は任意の複素数)となる。

(i), (ii) より、結果は解法1に一致する。

解説

関数を複数回合成する問題の典型的な解法を問うている。 解法1のように素直に合成して係数比較を行うのが最も汎用性が高く、安全な方針である。 解法2のように、漸化式 $z_{n+1} = az_n + b$ の一般項を求める要領で特性方程式 $z = az + b$ の解(不動点)を利用して式を変形すると、見通しよく計算を進めることができる。 いずれの解法においても、「$b$ が任意の複素数を取り得る」という点に漏れなく言及できるかが鍵となる。

答え

$$f(z) = z, \quad \frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} z + b \quad \text{(} b \text{ は任意の複素数)}$$

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