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名古屋大学 2008年 文系 第2問 解説

数学2/図形と式数学2/微分法数学2/積分法テーマ/軌跡・領域テーマ/最大・最小
名古屋大学 2008年 文系 第2問 解説

方針・初手

与えられた不等式に絶対値が含まれているため、まずは絶対値の中身の正負によって場合分けを行い、領域 $D$ の境界となる曲線を特定します。境界線が放物線になることが分かるため、それらの交点を求めて領域を図示し、定積分を用いて面積を計算します。 また、$x + y$ の最大値と最小値を求める問題では、$x + y = k$ とおいて直線の方程式とみなし、この直線が領域 $D$ と共有点をもつような $y$ 切片 $k$ のとり得る値の範囲を調べます。境界が曲線なので、接線の傾きに注目して最大・最小となる候補の点を探します。

解法1

(1) 与えられた不等式 $$(x - 2)^2 + |2x + 3y - 1| \leqq 4$$ について、絶対値の中の式の正負により場合分けを行う。

(i) $2x + 3y - 1 \geqq 0$ すなわち $y \geqq -\frac{2}{3}x + \frac{1}{3}$ のとき 絶対値をそのまま外し、不等式を整理する。

$$(x - 2)^2 + 2x + 3y - 1 \leqq 4$$

$$3y \leqq -(x^2 - 4x + 4) - 2x + 5$$

$$3y \leqq -x^2 + 2x + 1$$

$$y \leqq -\frac{1}{3}x^2 + \frac{2}{3}x + \frac{1}{3}$$

平方完成すると $y \leqq -\frac{1}{3}(x - 1)^2 + \frac{2}{3}$ となる。

(ii) $2x + 3y - 1 < 0$ すなわち $y < -\frac{2}{3}x + \frac{1}{3}$ のとき 絶対値の中にマイナスをつけて外し、不等式を整理する。

$$(x - 2)^2 - (2x + 3y - 1) \leqq 4$$

$$3y \geqq (x^2 - 4x + 4) - 2x - 3$$

$$3y \geqq x^2 - 6x + 1$$

$$y \geqq \frac{1}{3}x^2 - 2x + \frac{1}{3}$$

平方完成すると $y \geqq \frac{1}{3}(x - 3)^2 - \frac{8}{3}$ となる。

境界線となる2つの放物線 $y = -\frac{1}{3}x^2 + \frac{2}{3}x + \frac{1}{3}$ と $y = \frac{1}{3}x^2 - 2x + \frac{1}{3}$ の交点は、どちらの曲線も直線 $2x + 3y - 1 = 0$ 上にあることから容易に求まる。 $3y = -x^2 + 2x + 1$ と $3y = -2x + 1$ を連立して解く。

$$-x^2 + 2x + 1 = -2x + 1$$

$$x^2 - 4x = 0$$

$$x(x - 4) = 0$$

よって、$x = 0, 4$ となる。 それぞれの $x$ に対して $y$ 座標を求めると、交点は $\left(0, \frac{1}{3}\right)$ と $\left(4, -\frac{7}{3}\right)$ である。

以上より、領域 $D$ は、上に凸の放物線 $y = -\frac{1}{3}x^2 + \frac{2}{3}x + \frac{1}{3}$ と、下に凸の放物線 $y = \frac{1}{3}x^2 - 2x + \frac{1}{3}$ によって囲まれた閉領域である。(概形はこれらの交点を結ぶ2つの放物線に囲まれた図形となる)

領域 $D$ の面積を $S$ とすると、$0 \leqq x \leqq 4$ の範囲で積分して求められる。

$$S = \int_{0}^{4} \left\{ \left(-\frac{1}{3}x^2 + \frac{2}{3}x + \frac{1}{3}\right) - \left(\frac{1}{3}x^2 - 2x + \frac{1}{3}\right) \right\} dx$$

$$S = \int_{0}^{4} \left(-\frac{2}{3}x^2 + \frac{8}{3}x\right) dx$$

$$S = -\frac{2}{3} \int_{0}^{4} (x^2 - 4x) dx$$

$$S = -\frac{2}{3} \int_{0}^{4} x(x - 4) dx$$

ここで $\int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx = -\frac{1}{6}(\beta - \alpha)^3$ の公式を用いると、

$$S = -\frac{2}{3} \cdot \left(-\frac{1}{6}\right) (4 - 0)^3$$

$$S = \frac{1}{9} \cdot 64 = \frac{64}{9}$$

(2) $x + y = k$ とおくと、$y = -x + k$ となり、これは傾きが $-1$、 $y$ 切片が $k$ の直線を表す。 この直線が領域 $D$ と共有点をもつときの $k$ の最大値と最小値を調べる。直線の上下動を考えると、最大値は上側の境界線に接するとき、最小値は下側の境界線に接するときにとる可能性がある。

上側の境界線である放物線 $y = -\frac{1}{3}x^2 + \frac{2}{3}x + \frac{1}{3}$ を $f(x)$ とおく。接線の傾きが $-1$ となる $x$ を求める。

$$f'(x) = -\frac{2}{3}x + \frac{2}{3}$$

$$-\frac{2}{3}x + \frac{2}{3} = -1$$

$$-\frac{2}{3}x = -\frac{5}{3}$$

$$x = \frac{5}{2}$$

この $x$ の値は $0 \leqq x \leqq 4$ を満たす。このときの $y$ 座標は、

$$f\left(\frac{5}{2}\right) = -\frac{1}{3}\left(\frac{5}{2}\right)^2 + \frac{2}{3}\left(\frac{5}{2}\right) + \frac{1}{3} = -\frac{25}{12} + \frac{20}{12} + \frac{4}{12} = -\frac{1}{12}$$

したがって、直線 $y = -x + k$ は点 $\left(\frac{5}{2}, -\frac{1}{12}\right)$ で上側の放物線に接し、このとき $k$ は最大となる。 最大値は $k = \frac{5}{2} - \frac{1}{12} = \frac{29}{12}$ である。

下側の境界線である放物線 $y = \frac{1}{3}x^2 - 2x + \frac{1}{3}$ を $g(x)$ とおく。接線の傾きが $-1$ となる $x$ を求める。

$$g'(x) = \frac{2}{3}x - 2$$

$$\frac{2}{3}x - 2 = -1$$

$$\frac{2}{3}x = 1$$

$$x = \frac{3}{2}$$

この $x$ の値は $0 \leqq x \leqq 4$ を満たす。このときの $y$ 座標は、

$$g\left(\frac{3}{2}\right) = \frac{1}{3}\left(\frac{3}{2}\right)^2 - 2\left(\frac{3}{2}\right) + \frac{1}{3} = \frac{3}{4} - 3 + \frac{1}{3} = \frac{9 - 36 + 4}{12} = -\frac{23}{12}$$

したがって、直線 $y = -x + k$ は点 $\left(\frac{3}{2}, -\frac{23}{12}\right)$ で下側の放物線に接し、このとき $k$ は最小となる。 最小値は $k = \frac{3}{2} - \frac{23}{12} = -\frac{5}{12}$ である。

念のため、領域の端点における $k$ の値を確認する。 点 $\left(0, \frac{1}{3}\right)$ のとき $k = 0 + \frac{1}{3} = \frac{1}{3} = \frac{4}{12}$ 点 $\left(4, -\frac{7}{3}\right)$ のとき $k = 4 - \frac{7}{3} = \frac{5}{3} = \frac{20}{12}$ これらは求めた最大値より小さく、最小値より大きい。

よって、$x + y$ の最大値と最小値、およびそのときの座標は求まった。

解説

絶対値を含む不等式が表す領域の図示から始まり、面積計算、そして線形計画法へと繋がる総合的な問題です。 面積計算においては、被積分関数が $(x - \alpha)(x - \beta)$ の定数倍の形になり、積分区間が $\alpha$ から $\beta$ までとなるため、いわゆる「1/6公式」を用いることで計算を簡略化し、ミスを防ぐことができます。 (2) は $x+y = k$ とおいて図形的に考える標準的な手法ですが、領域の境界が曲線であるため、直線を平行移動させて最初に触れる点(接点)を見つけるために微分を利用します。接点の $x$ 座標が領域の定義域内に収まっているかの確認と、端点での値との比較を怠らないようにしましょう。

答え

(1) 概形:放物線 $y = -\frac{1}{3}x^2 + \frac{2}{3}x + \frac{1}{3}$ と放物線 $y = \frac{1}{3}x^2 - 2x + \frac{1}{3}$ で囲まれた閉領域。 面積:$\frac{64}{9}$

(2) 最大値 $\frac{29}{12}$ (点 $\left(\frac{5}{2}, -\frac{1}{12}\right)$ のとき) 最小値 $-\frac{5}{12}$ (点 $\left(\frac{3}{2}, -\frac{23}{12}\right)$ のとき)

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