名古屋大学 1994年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) まず、「その球を含めて $p$ 個の赤球を箱に入れる」という操作の意味を正確に捉えます。これは、取り出した赤球1個を箱に戻し、さらに追加で $(p-1)$ 個の赤球を箱に入れる操作と同義です。その結果、箱の中の赤球の数は取り出す前より $(p-1)$ 個増えることになります。白球が出た場合も同様です。この変化を追って、$1$ 回目と $2$ 回目に赤球が出る確率を立式します。
(2) $p=q=1$ のとき、取り出した球を含めて $1$ 個の球を箱に入れることになります。これは「取り出した球をそのまま箱に戻す(復元抽出)」操作に他なりません。箱の中身が常に変わらないことを利用し、無限等比級数、あるいは推移確率の対称性を用いて求めます。
解法1
(1)
初期状態において、箱の中には赤球が $5$ 個、白球が $10$ 個、合計 $15$ 個の球が入っている。 $1$ 回目に赤球が出る確率を $P_1(R)$ とすると、
$$ P_1(R) = \frac{5}{15} = \frac{1}{3} $$
である。同様に、$1$ 回目に白球が出る確率は $\frac{10}{15} = \frac{2}{3}$ である。
次に、$2$ 回目に赤球が出る確率 $P_2(R)$ を考える。これには、$1$ 回目に取り出した球の色によって $2$ つの排反な事象がある。
(i) $1$ 回目に赤球を取り出し、$2$ 回目も赤球を取り出す場合 $1$ 回目に赤球を取り出したとき、その球を含めて $p$ 個の赤球を箱に入れる。これは、もともとあった赤球 $5$ 個から $1$ 個取り出し、代わりに $p$ 個入れる操作なので、操作後の箱の中の赤球は $5 - 1 + p = p + 4$ 個になる。白球は $10$ 個のままであるから、球の総計は $p + 14$ 個となる。 したがって、この場合において $2$ 回目に赤球を取り出す確率は $\frac{p+4}{p+14}$ である。 よって、この事象が起こる確率は、
$$ \frac{1}{3} \times \frac{p+4}{p+14} $$
(ii) $1$ 回目に白球を取り出し、$2$ 回目に赤球を取り出す場合 $1$ 回目に白球を取り出したとき、その球を含めて $q$ 個の白球を箱に入れる。操作後の箱の中の白球は $10 - 1 + q = q + 9$ 個になる。赤球は $5$ 個のままであるから、球の総計は $q + 14$ 個となる。 したがって、この場合において $2$ 回目に赤球を取り出す確率は $\frac{5}{q+14}$ である。 よって、この事象が起こる確率は、
$$ \frac{2}{3} \times \frac{5}{q+14} $$
(i)、**(ii)**より、$2$ 回目に赤球が出る確率 $P_2(R)$ は、
$$ P_2(R) = \frac{1}{3} \cdot \frac{p+4}{p+14} + \frac{2}{3} \cdot \frac{5}{q+14} $$
条件より $P_1(R) = P_2(R)$ であるから、
$$ \frac{1}{3} = \frac{1}{3} \cdot \frac{p+4}{p+14} + \frac{2}{3} \cdot \frac{5}{q+14} $$
両辺を $3$ 倍して整理する。
$$ \begin{aligned} 1 &= \frac{p+4}{p+14} + \frac{10}{q+14} \\ 1 - \frac{p+4}{p+14} &= \frac{10}{q+14} \\ \frac{(p+14) - (p+4)}{p+14} &= \frac{10}{q+14} \\ \frac{10}{p+14} &= \frac{10}{q+14} \end{aligned} $$
両辺の分子が等しいので、分母も等しくなる。
$$ p + 14 = q + 14 $$
したがって、$p = q$ を得る。これは条件 $p \geqq 1, \ q \geqq 1$ を満たす。
(2)
$p=q=1$ のとき、操作は「取り出した球を箱に戻す」ことと同じであり、箱の中は常に赤球 $5$ 個、白球 $10$ 個に保たれる。 したがって、どの回においても、赤球を取り出す確率は $\frac{1}{3}$、白球を取り出す確率は $\frac{2}{3}$ で一定である。
$A, B$ が交互に球を取り出し、$A$ が初めて赤球を取り出して勝つのは、奇数回目($1, 3, 5, \cdots$ 回目)に赤球が出る場合である。 $A$ が $k$ 回目の自分の番(全体の $2k-1$ 回目)で勝つためには、それまでの $2k-2$ 回連続で白球が出続け、その次に赤球が出ればよい。この確率は、
$$ \left( \frac{2}{3} \right)^{2k-2} \times \frac{1}{3} = \frac{1}{3} \left( \frac{4}{9} \right)^{k-1} $$
これらは互いに排反であるから、$A$ が勝つ確率 $P(A)$ は、初項 $\frac{1}{3}$、公比 $\frac{4}{9}$ の無限等比級数の和となる。 公比の絶対値は $1$ より小さいため、この無限等比級数は収束し、
$$ \begin{aligned} P(A) &= \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{3} \left( \frac{4}{9} \right)^{k-1} \\ &= \frac{\frac{1}{3}}{1 - \frac{4}{9}} \\ &= \frac{\frac{1}{3}}{\frac{5}{9}} \\ &= \frac{1}{3} \times \frac{9}{5} \\ &= \frac{3}{5} \end{aligned} $$
解法2
(2) の別解
$A$ が勝つ確率を $x$、$B$ が勝つ確率を $y$ とする。 白球が無限に出続ける確率は $\lim_{n \to \infty} \left( \frac{2}{3} \right)^n = 0$ であり、必ずどちらかが勝つため、
$$ x + y = 1 \quad \cdots \text{①} $$
$1$ 回目の試行に注目して、$A$ が勝つ場合を $2$ つに分ける。 (ア) $1$ 回目に $A$ が赤球を取り出す場合 この確率は $\frac{1}{3}$ であり、ただちに $A$ の勝ちとなる。 (イ) $1$ 回目に $A$ が白球を取り出す場合 この確率は $\frac{2}{3}$ である。このとき、次の順番は $B$ になる。箱の中身は元に戻っているため、$2$ 回目以降の状況は「$B$ が先手としてゲームを始める」ことと全く同じになる。 つまり、この状況から先で $A$ が勝つ確率は、後手である $A$ が勝つ確率となるため、最初から始めた場合の $B$ が勝つ確率 $y$ に等しい。 よって、この事象から $A$ が最終的に勝つ確率は $\frac{2}{3} y$ となる。
(ア)、(イ) より、$x$ についての方程式が立つ。
$$ x = \frac{1}{3} + \frac{2}{3} y \quad \cdots \text{②} $$
①より $y = 1 - x$ であるから、これを②に代入する。
$$ \begin{aligned} x &= \frac{1}{3} + \frac{2}{3} (1 - x) \\ x &= \frac{1}{3} + \frac{2}{3} - \frac{2}{3} x \\ \frac{5}{3} x &= 1 \\ x &= \frac{3}{5} \end{aligned} $$
したがって、$A$ が勝つ確率は $\frac{3}{5}$ である。
解説
ポリアの壺モデルに似た確率の推移を問う典型的な問題です。 (1)では、問題文の「その球を含めて」という表現の解釈でミスをしないことが唯一にして最大のポイントです。箱の中身の総数がどう変わるかを丁寧に追えば、立式自体は難しくありません。確率の計算において「対称性から $p=q$」と直感的に予想できた場合でも、計算で厳密に示す必要があります。 (2)の復元抽出によるゲームの勝敗確率は、無限等比級数を用いる解法1が王道ですが、解法2のように「状態の推移と自己相似性」に注目して連立方程式を立てる手法も非常に強力で、計算ミスを減らすことができます。特にゲームが複雑になった場合は、解法2の考え方が威力を発揮します。
答え
(1) $p = q$
(2) $\frac{3}{5}$
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