名古屋大学 1994年 理系 第5問 解説

方針・初手
与えられた長方形の中に三角形が配置されているとき、その三角形をすっぽりと覆う最小の長方形(各辺がもとの長方形に平行なもの)を考える。この「包含長方形」の面積と三角形の面積を比較することで、面積の最大値を評価する。 また、座標平面上で各頂点の座標を変数として扱い、1つの頂点だけを動かしたときに面積がどのように変化するかを考える解析的なアプローチも有効である。
解法1
もとの長方形を $R$、その面積を $S$ とする。 長方形 $R$ の内部または周上に置かれた三角形を $T$ とする。 $T$ を内部に含み、各辺が $R$ の各辺に平行となるような長方形のうち、最小のものを $R'$ とする。 $R'$ は $R$ に含まれるため、$R'$ の面積 $S'$ は $S' \le S$ を満たす。
$R'$ の選び方から、$R'$ の4つの辺のそれぞれには、$T$ の3つの頂点の少なくとも1つが存在する。(もし頂点が存在しない辺があれば、その辺を内側にずらすことで、さらに小さな包含長方形を作れるためである。)
$T$ の頂点は3つであり、$R'$ の辺は4つある。したがって、鳩の巣原理により、$T$ の少なくとも1つの頂点は $R'$ の2つの辺に同時に属している。 もしその2辺が平行な対辺であるならば、長方形 $R'$ の幅または高さが $0$ となり、三角形 $T$ の面積は $0$ となるため、題意は自明に成り立つ。 したがって、その2辺は隣り合う辺であり、その交点すなわち $R'$ の頂点に $T$ の頂点が一致しているとしてよい。
この $R'$ の頂点を座標平面の原点 $(0, 0)$ にとり、$R'$ を $0 \le x \le w, 0 \le y \le h$ で表される長方形とする。このとき $S' = wh$ である。 $T$ の1つの頂点は $(0, 0)$ にある。残りの2頂点は、$R'$ の残りの辺 $x = w$ および $y = h$ の上にそれぞれ存在するので、それらの座標を $(w, y_1)$ および $(x_1, h)$ とおくことができる。 ただし、これらの点は $R'$ の境界上にあるため、$0 \le x_1 \le w$ および $0 \le y_1 \le h$ を満たす。
このとき、三角形 $T$ の面積 $S_T$ は公式より次のように表される。
$$ S_T = \frac{1}{2} |w \cdot h - x_1 \cdot y_1| $$
$0 \le x_1 \le w$ かつ $0 \le y_1 \le h$ より $0 \le x_1 y_1 \le wh$ であるから、絶対値の中身は正または $0$ である。
$$ S_T = \frac{1}{2} (wh - x_1 y_1) $$
$x_1 y_1 \ge 0$ であるから、次が成り立つ。
$$ S_T \le \frac{1}{2} wh = \frac{1}{2} S' $$
さらに $S' \le S$ であるから、
$$ S_T \le \frac{1}{2} S $$
以上より、三角形の面積はもとの長方形の面積の $\frac{1}{2}$ を越えない。
解法2
座標平面上でもとの長方形を $0 \le x \le a, 0 \le y \le b$ と設定する。長方形の面積は $S = ab$ である。 三角形の3頂点を $\mathrm{A}(x_1, y_1), \mathrm{B}(x_2, y_2), \mathrm{C}(x_3, y_3)$ とする。各変数は $0 \le x_i \le a, 0 \le y_i \le b \ (i=1, 2, 3)$ を満たす。
三角形 $\mathrm{ABC}$ の面積 $S_T$ は次のように表される。
$$ S_T = \frac{1}{2} |(x_2 - x_1)(y_3 - y_1) - (x_3 - x_1)(y_2 - y_1)| $$
ここで、$x_1$ 以外の5つの変数を固定し、$S_T$ を $x_1$ の関数とみなすと、$p, q$ を定数として次のように書ける。
$$ S_T(x_1) = |p x_1 + q| $$
一次関数 $p x_1 + q$ は区間 $0 \le x_1 \le a$ において単調に変化する($p=0$ のときは定数)ため、その最大値および最小値は端点 $x_1 = 0$ または $x_1 = a$ でとる。 したがって、絶対値 $|p x_1 + q|$ の最大値も、区間の端点 $x_1 = 0$ または $x_1 = a$ のいずれかでとる。
この論法は他のすべての変数 $y_1, x_2, y_2, x_3, y_3$ についても同様に成り立つ。 よって、面積 $S_T$ を最大にするような頂点の配置を考える場合、すべての変数が定義域の端点にある、すなわち $x_i \in \{0, a\}$ かつ $y_i \in \{0, b\}$ であるとしてよい。
これは、面積が最大となる三角形の3頂点が、もとの長方形の4つの頂点の中から選ばれることを意味する。 長方形の4頂点から重複を許して3頂点を選ぶとき、3点が一直線上にあるか同じ点を含めば面積は $0$ となる。 異なる3つの頂点を選んだ場合、それらは長方形を対角線で2等分した直角三角形をなすため、その面積は $\frac{1}{2} ab$ となる。
したがって、任意の頂点の配置において三角形の面積 $S_T$ は最大でも $\frac{1}{2} ab$ であり、もとの長方形の面積の $\frac{1}{2}$ を越えない。
解説
この問題は、図形の包含関係と面積の最大値を論理的に証明する問題である。 解法1は、幾何的な極端化(最小の包含長方形を考える)と鳩の巣原理を用いたスマートな手法である。「包含長方形の頂点と三角形の頂点が一致する」という強い条件を引き出せるかが鍵となる。 解法2は、「1変数を動かす」という多変数関数の最大・最小問題における定石を用いた解析的なアプローチである。一次関数の絶対値の最大値が端点で生じることを利用して、頂点が長方形の角にある場合のみを調べれば十分であるという結論に持ち込む論理は、大学入試において非常に強力な武器となる。
答え
(証明は解答の通り)もとの長方形の辺に平行な包含長方形を考えるか、各座標軸における1次関数の最大値が端点でとられることを利用することで、題意が示された。
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