名古屋大学 1997年 理系 第1問 解説

方針・初手
図形上の動点の位置をベクトルを用いて表現し、重心の位置ベクトルを時刻 $t$ の関数として立式する。平面上の2つのベクトルが1次独立であることを利用し、「重心の位置が $t$ に依存しない」という条件を係数比較によって数式化する。また、「3点が同時に次の頂点に到達する」という条件も数式化し、両者が同値であることを示す。
解法1
$\triangle ABC$ の辺の長さを $BC=a, CA=b, AB=c$ とする。
点 $A$ を始点とし、1次独立な2つのベクトル $\vec{AB}, \vec{AC}$ を用いて各点の位置ベクトルを表す。各点が次の頂点に到達するまでの時間範囲において考える。
点 $P(t)$ は辺 $AB$ 上を $A$ から $B$ へ速さ $u$ で進むため、$A$ からの移動距離は $ut$ である。したがって、
$$ \vec{AP}(t) = \frac{ut}{c} \vec{AB} $$
と表される。
点 $Q(t)$ は辺 $BC$ 上を $B$ から $C$ へ速さ $v$ で進むため、$B$ からの移動距離は $vt$ である。したがって、
$$ \vec{BQ}(t) = \frac{vt}{a} \vec{BC} = \frac{vt}{a} (\vec{AC} - \vec{AB}) $$
であり、これを始点 $A$ の位置ベクトルに直すと、
$$ \vec{AQ}(t) = \vec{AB} + \vec{BQ}(t) = \left( 1 - \frac{vt}{a} \right) \vec{AB} + \frac{vt}{a} \vec{AC} $$
となる。
点 $R(t)$ は辺 $CA$ 上を $C$ から $A$ へ速さ $w$ で進むため、$C$ からの移動距離は $wt$ である。したがって、
$$ \vec{CR}(t) = \frac{wt}{b} \vec{CA} = - \frac{wt}{b} \vec{AC} $$
であり、これを始点 $A$ の位置ベクトルに直すと、
$$ \vec{AR}(t) = \vec{AC} + \vec{CR}(t) = \left( 1 - \frac{wt}{b} \right) \vec{AC} $$
となる。
ここで、$\triangle P(t)Q(t)R(t)$ の重心を $G(t)$ とすると、その位置ベクトル $\vec{AG}(t)$ は、
$$ \vec{AG}(t) = \frac{\vec{AP}(t) + \vec{AQ}(t) + \vec{AR}(t)}{3} $$
で与えられる。
これまでに求めた各ベクトルの式を代入して整理すると、
$$ \vec{AG}(t) = \frac{1}{3} \left\{ \frac{ut}{c} + \left( 1 - \frac{vt}{a} \right) \right\} \vec{AB} + \frac{1}{3} \left\{ \frac{vt}{a} + \left( 1 - \frac{wt}{b} \right) \right\} \vec{AC} $$
$$ = \frac{1}{3} \left\{ 1 + \left( \frac{u}{c} - \frac{v}{a} \right) t \right\} \vec{AB} + \frac{1}{3} \left\{ 1 + \left( \frac{v}{a} - \frac{w}{b} \right) t \right\} \vec{AC} $$
となる。
重心 $G(t)$ の位置が $t$ によらず一定であるための必要十分条件は、この $\vec{AG}(t)$ が $t$ に依存しないことである。$\vec{AB}$ と $\vec{AC}$ は1次独立であるため、$t$ の係数がともに $0$ となることが必要十分条件となる。
したがって、
$$ \frac{u}{c} - \frac{v}{a} = 0 \quad \text{かつ} \quad \frac{v}{a} - \frac{w}{b} = 0 $$
すなわち、
$$ \frac{u}{c} = \frac{v}{a} = \frac{w}{b} \quad \cdots \text{①} $$
が成り立つことである。
一方、3点が同時に次の頂点に到達するための必要十分条件を考える。点 $P, Q, R$ がそれぞれ $B, C, A$ に到達するのに要する時間は、それぞれ $\frac{c}{u}, \frac{a}{v}, \frac{b}{w}$ である。
これらがすべて等しいことが「同時に到達する」条件であるため、
$$ \frac{c}{u} = \frac{a}{v} = \frac{b}{w} $$
各辺の逆数をとると、
$$ \frac{u}{c} = \frac{v}{a} = \frac{w}{b} $$
となり、これは条件①と完全に一致する。
以上より、3点が同時に次の頂点に到達するための必要十分条件は、$\triangle P(t)Q(t)R(t)$ の重心の位置が $t$ によらず一定なことであると示された。
解説
動点問題における定石通り、時間 $t$ を用いて位置ベクトルを立式し、代数的な条件に帰着させる問題である。平面上のベクトルが1次独立な2つのベクトルの1次結合として一意に表される性質(係数比較)を用いることで、図形的な直感に頼らず論理的に処理できる。
計算結果からもわかるように、$t=0$ を代入すると $\vec{AG}(0) = \frac{1}{3} \vec{AB} + \frac{1}{3} \vec{AC}$ となり、これは元の $\triangle ABC$ の重心と一致する。すなわち、「重心の位置が一定である」ということは、「常に $\triangle ABC$ の重心と一致し続ける」ということを意味している。
答え
本文の通り示された。
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