名古屋大学 1999年 理系 第1問 解説

方針・初手
「任意のベクトル $\vec{p}$ に対して成り立つ」という条件の扱い方がポイントになる。 このような場合、主に2つのアプローチが考えられる。 1つは、$\vec{p} = (x, y)$ と成分表示し、すべての $x, y$ について成り立つ恒等式として係数比較を行う方法。 もう1つは、$\vec{p}$ として扱いやすい具体的なベクトル(例えば基本ベクトル)を代入し、必要条件を求めてから十分性を確認する方法である。 どちらの方針を取るにせよ、得られた関係式から実数 $b_1, b_2$ が存在するような $(a_1, a_2)$ の条件(存在条件)へ帰着させる。
解法1
$\vec{p} = (x, y)$ とおく。 条件の等式 $(*)$ に各ベクトルの成分を代入すると、
$$(a_1 x + a_2 y)^2 + (b_1 x + b_2 y)^2 = x^2 + y^2$$
となる。この左辺を展開して $x, y$ について整理すると、
$$(a_1^2 + b_1^2)x^2 + 2(a_1 a_2 + b_1 b_2)xy + (a_2^2 + b_2^2)y^2 = x^2 + y^2$$
これが任意の $x, y$ に対して成り立つための必要十分条件は、両辺の各項の係数が等しいことである。
$$a_1^2 + b_1^2 = 1 \quad \cdots \text{①}$$
$$a_1 a_2 + b_1 b_2 = 0 \quad \cdots \text{②}$$
$$a_2^2 + b_2^2 = 1 \quad \cdots \text{③}$$
(1) 与えられた条件は、「①、②、③をすべて満たすような実数 $b_1, b_2$ が存在する」ことと同値である。 そのような $(a_1, a_2)$ の条件を求める。 ①、③より、
$$b_1^2 = 1 - a_1^2$$
$$b_2^2 = 1 - a_2^2$$
$b_1, b_2$ は実数であるから、$1 - a_1^2 \geqq 0$ かつ $1 - a_2^2 \geqq 0$ が必要である。 さらに、②より $b_1 b_2 = -a_1 a_2$ である。この両辺を2乗すると、
$$b_1^2 b_2^2 = a_1^2 a_2^2$$
これに $b_1^2 = 1 - a_1^2$、$b_2^2 = 1 - a_2^2$ を代入して、
$$(1 - a_1^2)(1 - a_2^2) = a_1^2 a_2^2$$
$$1 - a_1^2 - a_2^2 + a_1^2 a_2^2 = a_1^2 a_2^2$$
$$a_1^2 + a_2^2 = 1$$
これは点 $(a_1, a_2)$ が原点を中心とする半径 $1$ の円周上にあることを示す。 逆に、$a_1^2 + a_2^2 = 1$ が成り立つとき、$1 - a_1^2 = a_2^2 \geqq 0$、$1 - a_2^2 = a_1^2 \geqq 0$ を満たす。 このとき、たとえば $b_1 = -a_2, b_2 = a_1$ と定めると、
$$b_1^2 = (-a_2)^2 = a_2^2 = 1 - a_1^2$$
$$b_2^2 = a_1^2 = 1 - a_2^2$$
$$a_1 a_2 + b_1 b_2 = a_1 a_2 + (-a_2)a_1 = 0$$
となり、①、②、③をすべて満たす実数 $b_1, b_2$ (すなわちベクトル $\vec{b}$)が確かに存在する。 したがって、点 $(a_1, a_2)$ の存在範囲は座標平面上の円 $x^2 + y^2 = 1$ であり、図示すると原点を中心とする半径 $1$ の円となる。
(2) (1)より $a_1^2 + a_2^2 = 1$ が成り立っている。 求めるベクトル $\vec{b}$ の成分 $(b_1, b_2)$ は①、②、③を満たす。 ①より $b_1^2 = 1 - a_1^2 = a_2^2$ であるから、$b_1 = \pm a_2$。 ③より $b_2^2 = 1 - a_2^2 = a_1^2$ であるから、$b_2 = \pm a_1$。 これらを② $a_1 a_2 + b_1 b_2 = 0$ に代入して成立する組み合わせを考える。
(i) $b_1 = a_2$ のとき ②より $a_1 a_2 + a_2 b_2 = 0$ すなわち $a_2 (a_1 + b_2) = 0$ となる。 $a_2 \neq 0$ ならば $b_2 = -a_1$ である。 $a_2 = 0$ のとき、(1)の条件より $a_1 = \pm 1$ となる。このとき $b_1 = 0$ であり、$b_2 = \pm a_1 = \pm 1$ となるが、いずれの場合も $b_2 = -a_1$ とすれば $(b_1, b_2) = (0, -a_1)$ となり、条件を満たす。 よって、$\vec{b} = (a_2, -a_1)$ は常に条件を満たす。
(ii) $b_1 = -a_2$ のとき ②より $a_1 a_2 - a_2 b_2 = 0$ すなわち $a_2 (a_1 - b_2) = 0$ となる。 (i)と同様の議論により、$b_2 = a_1$ のとき常に条件を満たし、$\vec{b} = (-a_2, a_1)$ となる。
以上より、求めるベクトル $\vec{b}$ は $(-a_2, a_1)$ または $(a_2, -a_1)$ である。
解法2
(1) 条件 $(*)$ は任意のベクトル $\vec{p}$ に対して成り立つので、特定の扱いやすいベクトルを代入して必要条件を絞り込む。 $\vec{p} = (1, 0)$ を代入すると、$\vec{a} \cdot \vec{p} = a_1$, $\vec{b} \cdot \vec{p} = b_1$, $|\vec{p}|^2 = 1$ より、
$$a_1^2 + b_1^2 = 1 \quad \cdots \text{①}$$
$\vec{p} = (0, 1)$ を代入すると、$\vec{a} \cdot \vec{p} = a_2$, $\vec{b} \cdot \vec{p} = b_2$, $|\vec{p}|^2 = 1$ より、
$$a_2^2 + b_2^2 = 1 \quad \cdots \text{②}$$
$\vec{p} = (1, 1)$ を代入すると、$\vec{a} \cdot \vec{p} = a_1+a_2$, $\vec{b} \cdot \vec{p} = b_1+b_2$, $|\vec{p}|^2 = 2$ より、
$$(a_1 + a_2)^2 + (b_1 + b_2)^2 = 2$$
展開して整理すると、
$$(a_1^2 + b_1^2) + (a_2^2 + b_2^2) + 2(a_1 a_2 + b_1 b_2) = 2$$
①、②を用いて、
$$1 + 1 + 2(a_1 a_2 + b_1 b_2) = 2$$
$$a_1 a_2 + b_1 b_2 = 0 \quad \cdots \text{③}$$
これら①〜③を満たすことが必要である。逆に①〜③を満たせば、任意の $\vec{p} = x(1, 0) + y(0, 1) = (x, y)$ に対して条件 $(*)$ が成り立つため、①〜③は必要十分条件となる。 これ以降の存在条件の確認および(2)の導出は、解法1と全く同様である。
解説
「任意の~」に対する処理がテーマの標準的な問題である。恒等式と見なすか、具体的な値を代入して必要条件から攻めるかが典型的な手法となる。 また、本問が持つ幾何学的な意味を理解しておくと見通しが良い。解法中で得られた3つの条件式は、$|\vec{a}|^2 = 1$, $|\vec{b}|^2 = 1$, $\vec{a} \cdot \vec{b} = 0$ と言い換えることができる。つまり、ベクトル $\vec{a}$ と $\vec{b}$ は大きさが $1$ で互いに直交している(正規直交基底をなす)ことを意味する。(2)で求めた $\vec{b} = (-a_2, a_1), (a_2, -a_1)$ が、ベクトル $\vec{a} = (a_1, a_2)$ を原点中心にそれぞれ $90^\circ$、$-90^\circ$ 回転させたベクトルになっていることからも、その関係性が裏付けられる。
答え
(1) 座標平面上の原点 $(0,0)$ を中心とする半径 $1$ の円周上。(図は省略) (2) $\vec{b} = (-a_2, a_1), \ (a_2, -a_1)$
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