名古屋大学 2002年 理系 第3問 解説

方針・初手
- (1) は、すべての自然数 $m \geqq 2$ についての命題なので、数学的帰納法を用いて証明する。定積分の被積分関数が正であることや、上限を持つことを利用して不等式を評価する。
- (2) は、背理法を用いることが指定されている。すべての $m$ で $a_m \geqq \frac{1}{2002}$ であると仮定し、$a_m - a_{m+1}$ の減少幅を下から評価することで、数列が等差数列以上のペースで減少していくことを示し、矛盾を導く。
解法1
(1)
数学的帰納法により証明する。自然数 $m \geqq 2$ について、条件「$a_m > 0$ であり、かつ $a_1 > a_2 > \cdots > a_{m-1} > a_m$」を $P(m)$ とする。
(i) $m=2$ のとき
$a_1 = 1$ であり、数列の定義より
$$ a_2 = \int_0^1 f(x) dx $$
問題の条件より、$x > 0$ において $0 < f(x) < 1$ であるから、積分区間 $0 < x \leqq 1$ においても $0 < f(x) < 1$ が成り立つ。定積分の性質より、
$$ \int_0^1 0 dx < \int_0^1 f(x) dx < \int_0^1 1 dx $$
すなわち $0 < a_2 < 1$ となる。 $a_1 = 1$ であるから $a_1 > a_2 > 0$ が成り立ち、$m=2$ のとき $P(m)$ は真である。
(ii) $m=k$ ($k \geqq 2$)のとき
$P(k)$ が真である、すなわち $a_k > 0$ であり、かつ $a_1 > a_2 > \cdots > a_{k-1} > a_k$ が成り立つと仮定する。 $m=k+1$ のとき、
$$ a_{k+1} = \int_0^{a_k} f(x) dx $$
仮定より $a_k > 0$ であるから、積分区間 $0 < x \leqq a_k$ において $0 < f(x) < 1$ が成り立つ。定積分の性質より、
$$ \int_0^{a_k} 0 dx < \int_0^{a_k} f(x) dx < \int_0^{a_k} 1 dx $$
すなわち $0 < a_{k+1} < a_k$ となる。 これを仮定と合わせると、$a_1 > a_2 > \cdots > a_{k} > a_{k+1}$ かつ $a_{k+1} > 0$ となり、$m=k+1$ のときも $P(m)$ は真である。
(i)、(ii) より、すべての $m \geqq 2$ に対し、$a_m > 0$ であり、かつ $a_1 > a_2 > \cdots > a_{m-1} > a_m > \cdots$ となることが示された。
(2)
背理法を用いて証明する。 すべての自然数 $m$ に対して、$a_m \geqq \frac{1}{2002}$ が成り立つと仮定する。
$\alpha = \frac{1}{2002}$ とおく。仮定より、すべての $m$ に対して $a_m \geqq \alpha$ である。 数列 $\{a_m\}$ の隣り合う項の差をとると、
$$ \begin{aligned} a_m - a_{m+1} &= a_m - \int_0^{a_m} f(x) dx \\ &= \int_0^{a_m} 1 dx - \int_0^{a_m} f(x) dx \\ &= \int_0^{a_m} \{1 - f(x)\} dx \end{aligned} $$
$a_m \geqq \alpha > 0$ であるから、定積分の積分区間を $[0, \alpha]$ と $[\alpha, a_m]$ に分割して、
$$ a_m - a_{m+1} = \int_0^\alpha \{1 - f(x)\} dx + \int_\alpha^{a_m} \{1 - f(x)\} dx $$
と表せる。ここで、$x > 0$ において $f(x) < 1$ より $1 - f(x) > 0$ である。積分区間 $x \geqq \alpha$ においても $1 - f(x) > 0$ であるから、
$$ \int_\alpha^{a_m} \{1 - f(x)\} dx \geqq 0 $$
が成り立つ。したがって、
$$ a_m - a_{m+1} \geqq \int_0^\alpha \{1 - f(x)\} dx $$
となる。ここで、右辺の定積分を $C$ とおく。
$$ C = \int_0^\alpha \{1 - f(x)\} dx $$
$f(x)$ は連続関数であり、積分区間 $0 < x \leqq \alpha$ において $1 - f(x) > 0$ であるから、$C > 0$ である。また、$C$ は $m$ に依存しない正の定数である。 よって、すべての自然数 $m$ に対して
$$ a_m - a_{m+1} \geqq C $$
が成り立つ。この不等式において、$m=1, 2, \dots, n-1$ としたものを辺々加えると、
$$ \sum_{m=1}^{n-1} (a_m - a_{m+1}) \geqq \sum_{m=1}^{n-1} C $$
$$ a_1 - a_n \geqq (n-1)C $$
ゆえに、
$$ a_n \leqq 1 - (n-1)C $$
ここで $C > 0$ であるから、$n$ を限りなく大きくすると右辺は $-\infty$ に発散する。 したがって、十分に大きな $n$ に対して $a_n < 0$ となるが、これは (1) で示した「すべての $m$ に対して $a_m > 0$」に矛盾する。 よって、仮定は誤りであり、$a_m < \frac{1}{2002}$ となる $m$ が存在することが示された。
解説
積分で定義された数列に関する証明問題である。 (1) では、被積分関数が $0 < f(x) < 1$ であることを用いて、積分値の上下の評価を丁寧に行うことが求められる。 (2) は、差分 $a_m - a_{m+1}$ を下から正の定数で評価し、等差数列と比較して発散させる手法が有効である。積分区間を $a_m \geqq \alpha$ の仮定を用いて定数区間と変動区間に分ける処理が最大のポイントであり、微積分と極限を組み合わせた典型的な論法としてマスターしておきたい。
答え
(1) 題意の通り証明された。(略証:数学的帰納法と定積分の不等式評価を利用) (2) 題意の通り証明された。(略証:すべての $m$ で $a_m \geqq \frac{1}{2002}$ と仮定し、$a_m - a_{m+1}$ が正の定数以上になることから、十分に大きな $m$ で $a_m < 0$ となる矛盾を導いた)
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